かつて支遁と議論を交わしていた
その時はかなり、
やり込められていたようなのである。
なので入念にリベンジの準備を整え、
改めて支遁のもとに出向く。
が、上手くやっつけられない。
王濛は、自分の繰り出す数百の言葉が
みごとな論理展開、
鮮やかな語彙だと信じていたが、
それを聞いていた支遁が、
おもむろにいうのだ。
「あなたとこうして
語らい合うのは久しぶりだが、
あなたの清談は、
何の進展も見せなかったのだな」
ぐげっ!
このコメントを前に王濛、
すごすごと退散した。
とはいえ支遁、王濛さんを
認めてはいたようである。
王濛と言えば、自分の姿を見て
「あぁ、我が父は何と言う存在を
生み出してしまったのだろう!」
とかうっとりするような人。
そんな王濛について、
こうコメントしている。
「身なりを整え姿を現してみれば、
天に駆け上るかのような、
その麗しさよ!」
支道林初從東出,住東安寺中。王長史宿構精理,並撰其才藻,往與支語,不大當對。王敘致作數百語,自謂是名理奇藻。支徐徐謂曰:「身與君別多年,君義言了不長進。」王大慚而退。
支道林の初めて東より出づるに、東安寺が中に住む。王長史の精理を構宿し、並べて其の才藻を撰ざば、往きて支と語れど、大いには當對せず。王が敘致し數百語を作さば、自ら是れ名理奇藻なりと謂う。支は徐徐にて謂うて曰く:「身と君に多年なる別あれど、君が義言、了にも長進せず」と。王は大いに慚じ退る。
(文學42)
林公道王長史:「斂衿作一來,何其軒軒韶舉!」
林公は王長史を道えらく:「衿を斂め一に來たるを作さば、何ぞ其れ軒軒と韶舉せんか!」と。
(容止29)
よくペアになりがちな劉惔は文辞でバリバリにやり合うタイプのポケモンだけど、王濛さんはどちらかというとその柔和なふいんきでのし上がった感があります。確かにここまでも「清談の腕前がすごい」って感じではなかったよね。