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王濛6  王羲之が語る

支遁しとん王濛おうもうについて評した。


「かれに立派でない言動はないが、

 人に厳しく当たれないのが残念だ」


すると王羲之おうぎし、返答する。


「元々厳しく当たろう、

 と言う気がないのだろうよ」



では、実際にはどうだったのだろう。

こんなエピソードがある。



王胡之おうこし王濛おうもうに迫ってきた。


「王濛殿、王濛殿!

 我が一門の羲之は、

 其方の一門の王述おうじゅつ殿と較べて

 どうなのであろうな!」


「王羲之殿とか、ふむ……」


王濛が答えよう、とすると、

王胡之、更に畳みかけてきた。


「いや、すごいぞあいつは!

 あの気品は半端ない!」


何だこの圧。


うふふ、と王濛も返答した。


「まあ、王述も貴くない、

 とは言えぬかな」




林公謂王右軍云:「長史作數百語,無非德音,如恨不苦。」王曰:「長史自不欲苦物。」

林公は王右軍に謂いて云えらく:「長史の數百語を作せるに、德音に非ざる無し。恨むらくは苦しめざる如きなり」と。王は曰く:「長史は自ら物を苦しむるを欲さず」と。

(賞譽92)


王脩齡問王長史:「我家臨川,何如卿家宛陵?」長史未答,脩齡曰:「臨川譽貴。」長史曰:「宛陵未為不貴。」

王脩齡は王長史に問うらく:「我が家の臨川は、卿が家の宛陵とでは何如?」と。長史の未だ答えざるに、脩齡は曰く:「臨川は貴なるを譽となす」と。長史は曰く:「宛陵も未だ貴からざるを為さず」と。

(品藻47)




王胡之さんは謝安さまに「アイツ詰める所は詰めてくるよな」って評されてたのを思い出すが、それにしたってこのせっかちさと来たら。ついでに言えば王述もせっかちで有名な人物であって、せっかちな人間にせっかちな人間のこときかれてしまえば王濛さんももう苦笑するしかなかったんじゃなかろうか。


ついでに言えばこんなひとに「あの痴が!」って言わせた簡文さまってばうふふ。

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