ある人が僧侶が馬を飼うのは
あまり風雅ではありませんな、
と指摘。
すると支遁は答える。
「拙僧はその気高く
俊敏なるところを好むのです」
また支遁、
鶴が好きだった。
ある人が支遁に、
二羽の鶴の雛を送る。
雛たちはすくすくと成長し、
やがて飛べるようにもなる。
このままでは飛び去ってしまう。
そのことを惜しんだ支遁、
鶴たちの風切羽を刈り取り、
飛べないようにした。
翼をはためかせてみても、
飛ぶことができない。
鶴たちはがっくりと来ており、
ときおり恨めしそうに
翼のほうを見たりもする。
あぁ、と支遁は言う。
「大空を羽ばたく姿をもつ者が、
どうしていつまでも
ひとの耳目の慰み者に
甘んじておれるものだろうか!」
そこで翼が治るのを待ち、
飛び立つがままにさせるのだった。
支道林常養數匹馬。或言道人畜馬不韻,支曰:「貧道重其神駿。」
支道林は常に數匹の馬を養う。或るもの道人に畜馬の韻ならざるを言わば、支は曰く:「貧道は其の神駿なるを重んず」と。
(言語63)
支公好鶴,住剡東(山印)山。有人遺其雙鶴,少時翅長欲飛。支意惜之,乃鎩其翮。鶴軒翥不復能飛,乃反顧翅,垂頭視之,如有懊喪意。林曰:「既有凌霄之姿,何肯為人作耳目近玩?」養令翮成置,使飛去。
支公は鶴を好み、剡の東の卯山に住む。人に其の雙鶴を遺りたる有り。少時に翅を長じ飛ばんと欲す。支は之に惜しきを意え、乃ち其の翮を鎩く。鶴は軒翥せど復た飛ぶ能わず、乃ち翅を反顧し、頭を垂れ之を視たるに、懊喪の意有したるが如し。林は曰く:「既にして凌霄の姿有り、何ぞ人が為に耳目の近玩を作されたるを肯んぜんか?」と。養い翮をして成さしめ、置きて飛び去らしむ。
(言語76)
と言うわけで支遁なんですけど、何気に王濛劉惔よりもエピソード数が多くなります。この辺、名士と絡みまくってる人とピンでエピソード構築しちゃってる人との差って感じですね。