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第37話 武器屋に到達した


 ショーン達は、アリ人間が警備している店内を、みんなで歩いていた。



「ん? 見ない顔だな? あ、そのターバンは無線で呼んだ援軍か?」


「そうだ、店長と話をさせてくれな」


 店の一番奥にある休憩室にまで来ると、青アリ人間が、ショーン達を見るなり、ドアを叩いた。



「ゴルバ店長、客人です」


「通せ…………」


 青アリ人間は、内部で待機するゴルバを呼ぶと、彼の低い声が聞こえた。



「お前らが、救世主か? で、武器を援助する変わりに、食糧を持ってくるはずだったが?」


「それは、無理だな? ここにくるまで、大量のゾンビに出くわしたからな」


 ゴルバは、カブトムシ型の昆虫族らしく、椅子に座りながら、ドッシリと構えている。


 まるで、マフィアの親分みたいだと、ショーンは彼を見ながら思う。



「何ぃっ!! と、キレたいところだが、あの数では仕方がないな」


「いったい、何で、あんなにゾンビが道を埋め尽くしているんだ?」


「ゾンビ達さえ居なければ、トラックで食糧を持って来れたのに…………」


 突然、ゴルバは怒鳴るかと思ったが、すぐに冷静さを取り戻して、ため息を吐いた。


 ショーンとリズ達は、道を埋め尽くしていた、ゾンビの群れに関して、彼に質問した。



「ゾンビか? この辺りは、外を見れば分かると思うが、市街に通じる道は全て、封鎖してしまった」


「ゾンビ・パニックでの戦闘でか? それで、ここは平和なんだな」


「しかし、封鎖しているにも関わらず、外側では連中が寄って来ているようだけど」


 ゴルバは、二人の質問に答えながら、ゆっくりと天井に頭を傾けた。


 彼の答えを聞いて、ショーンとリズ達は、ゾンビに関して、更なる質問をする。



「ふむ、チンピラやギャング達が、この店の武器を狙ってきた…………幸い、ここは当の武器屋だからなっ! 連中は厳重な警備により、近づく事すら出来なかった」


 自信満々に、ゴルバは答えながら、缶ジュースの蓋を開けた。



「しかし、奴らは、そこら中に拠点を作ったんだっ! それからは拳銃や魔法を射つ音が、時おり木霊しやがる…………」


「それに吊られて、ゾンビ達も寄ってきてるって、ワケなのね」


「マルルン達は、何でゾンビの群れに包囲されているんだ」


「そうだにゃ、それが気になるにゃ?」


 ゴルバの話を聞いて、リズは街中で見かけた、ゾンビ達が、集まる理由が分かって納得した。


 しかし、なぜ武器屋から、マルルン達が分断されたのかと、マルルンとミー達は聞いてみた。



「昨日、彼等が救援に来たんだが、運悪くチンピラ部隊と出会い頭に交戦してしまったんだっ! 結果、彼等はゾンビを集めてしまい、逃走しながら最後には建物に籠るしかなかった」


「マルルン達は、今どこに…………」


「彼等を助けようとは、したのかにゃ?」


「連中を助けられなかった理由は何だい?」


 ゴルバの説明を聞いて、直ぐにでも、マルルン達を救助しに行こうと、ショーンは考えた。


 そして、ミーとフリンカ達は、なぜ彼等を助けに行かないのかと理由を聞いた。



「ああ、助けようとはしたっ! だが、何度ゾンビを倒しても、後から続々と沸いて来てな? 火炎瓶や手製爆弾を投げても、無駄なんだ」


 ゴルバは、そう言うと、無念そうに答えながらうつむいてしまった。



「それに、こっちにまで、フレッシャー達が襲って来てな? まあ、奴等は銃や魔法で撃退はできたが…………」


「なんで、ゾンビの数は減らないし、増えるんだ?」


「それが変な話なのよねーー」


 戦闘が激しかったと語るゴルバと、未だに減らないゾンビが気になる、ショーンとリズ達。



「ふむ…………どうやら、マルルン達の攻撃もそうだが? その向こう側に幾つかある、チンピラ達の拠点から鳴る射撃音によって、ゾンビが集まっているようだ」


「マルルン達の拠点は何処にあるの?」


「私達は、早く助けに行きたいんだけどねぇ」


 ゾンビが溢れる原因が音であると、両腕を組ながら、ゴルバは語る。


 そして、リズとフリンカ達は、救出作戦を実行するべく、マルルン達の居場所を聞いた。



「彼等は、店の北側から遠く離れた、小さなホテルに立て籠っているっ! 軍が撤退するまで、使っていたから周囲は有刺鉄線に囲まれている」


 重そうな体のゴルバは、椅子から立ち上がりながら、説明を続ける。



「そこに行く前に、門を超えないと成らないがな? あと、当然だが、その向こうはゾンビに囲まれているからな」


「だとしても、助けに行くぞっ! 仲間は見捨てられないからな」


「矢を何本か、分けてくれないか? そうしたら、今すぐ救出に出向くっ!」


「爆弾の準備は、できているっ! 煙幕弾も地雷もあるから、準備は万端だっ!」


 ゴルバから危険だと諭されても、ショーンが冒険者として、仲間を見捨てるワケがない。


 スバスとワシントン達も、眼を険しくさせて、これから戦闘に挑もうと殺気を放つ。



「マルルン達は、チンピラやゾンビを、かなり倒したようだけど、彼等を一刻も早く救助しないと成らないにゃ…………」


「連中を救出できれば、食糧を取りに戻るのも、楽に成るわっ!」


 ミーとフリンカ達も、救出に行こうと意気込み、顔つきを険しくさせる。



「分かった、では食糧のために、援護に何人か人員を回してやる? 幸い、店には警備システムや客の冒険者たちが居るからな」


「じゃあ、取り敢えず作戦を考えよう」


 こうして、ショーンとゴルバ達は、マルルン等を救出する作戦会議を続けた。


 それから、少し時間が立ち、作戦決行まで、各自入念な準備をする事となった。



「食糧は、まだかいっ! 腹を空かせた、子供が待ってるんだけどさ~~」


「この子の娘は、まだ幼くてねぇ? ここには無い、離乳食が必要なんだよ」


「済まない、離乳食は持ってきてないんだ」


「事が済んだら、必ず持ってくるわ」


 黒ギャル風のサキュバスは、老婆とともに、話しかけてきた。


 それに対して、ショーンとリズ達は、今は無いと困った表情で答えるしかなかった。



「ふぅ~~? まさか、子供が居るとはね…………後で、ミルクやら何やら追加して、持ってきて貰わないと」


「だが、アジア街に有るだろうか? 無ければ、他の地域から持ってくるしかない」


 ため息を吐きながら、リズは色々と物資を運ぶ事を考えて、顔を渋くさせる。


 ショーンも、両腕を組んで、どこに離乳食が有るだろうかと悩む。



「もしくは、あのパソコンショップの場所に戻るしか無いだろう」


「面倒だけど、子供のためなら仕方ないわね、ショーンなら見捨て無いでしょ?」


 子供のために、ショーンは再びゾンビが群れを成す地域へと、物資補充に戻る積もりでいた。


 前回、行った時には、駐車場に大量の動く屍たちが歩いていた。



 それを承知で、正義感で動こうとする彼を、リズは心強く思う。


 また、冒険者として、例え大量の魔物が進路を塞ごうと、彼女も戦いを放棄する気は無かった。



「また、ドンパチだ」


「たく、チンピラめっ!」


「そうだな、ガキが腹を透かしているのに、黙ってられるほど、薄情じゃね~~なっ!」


「やっぱり、そうよねっ! だから、私も貴方に着いてくわよっ!」


 黄アリ人間が、スナイパーライフルを両手で持ちながら、不機嫌そうに呟きつつ、店内を歩いてた。


 顔に、黒い布を巻いて、ゆったりとした黒衣を観に着けた、アラブ人冒険者も後に着いていく。



 様々な人間たちが困る中、血気盛んで、お人好しのショーンは人助けしようと思っている。


 彼の言葉を聞いて、リズは笑みを浮かべながら後を着いていく。



「襲撃してきた、ゾンビ連中を撃退したわ」


「こっちは、チンピラだっ! ピストル、マジックバトン程度の武器で、よく突撃して来やがる」


「この様子じゃ、ここも敵やゾンビ達に狙われているらしいな」


「どこも、完璧に安全な場所なんて無いのかしら?」


 今度は、赤髪ショートヘアの女冒険者が仲間を連れて、右肩にメイスを担いで、歩いてきた。


 反対側からも、アサルトライフルを持った、緑色のバッタ人間が、ゆっくりと向かってくる。



 チンピラ達の襲撃頻度が高いことに、ショーンは顔を険しくさせる。


 今まで、沿岸地域を混沌とさせる敵と戦ってきた、リズも気の休まる暇がないと思った。



「ショーン、私は子供が大好き…………だから、困っている子供や老人のためにも、必死で頑張りたいわ」


 リズは、いきなり暗い顔を浮かべて、しゅんと汐らしくなる。



「でも、何だか怖いわ? ゾンビ、チンピラ…………今までの魔物は、海から来る弱い魔物ばかりだった」


「しかし、今じゃあ~~本物のアンデッド、マジの殺し合いを挑んでくる人間が相手だもんな」


 冒険者=警備員として、リズとショーン達の任務は、沿岸部に上がる海洋生物と戦うことだ。


 もちろん、二人が泥棒やチンピラ達を追っ払った事もあったが、流石に殺しはしていない。



 だが、それが今では、街中が混乱に包まれる中、戦闘が続いている。


 それ故、彼女は重いストレスと恐怖で疲れ始めているのだった。



「まあ、リズ? 心配すんなっ! 今まで見たいに、何とかなるさっ!」


「そ、そうよね? それなら、安心だわっ?」


 ショーンは呑気な顔を見せて、不安がるリズを安心させようとした。



 こうして、マルルン達の救出作戦が始まる中、二人は時間を潰していた。

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