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第38話 救出作戦実行


 店の外に出た、ショーン達は、これから籠城するマルルン達を助けに行こうとする。



「あそこか、車に塞がれているな」


「バリケードの代わりのようだわ」


 ショーンとリズ達は、敷地を囲んでいる黄土色の建物と、茶色い壁などに目を向ける。


 そこには、ワゴン車や大型トラック、幌馬車などが置かれてある。



 これ等は、通りへと続く道路から、ゾンビが侵入することを防いでいた。


 また、店の右側で、マルルン達が避難しているホテルがある方にも、業務用バンが停められていた。



「準備できたか、こっちは、いつでも狙撃支援の準備ができてるぞ」


「邪魔な奴は、釘と棍で近寄らせないにゃっ!」


「手製地雷よし、小型爆弾よし、煙玉よしだっ!」


「邪魔な奴は、私が斬って上げるよ」


 店から、ワシントンが矢筒から、一本の矢を取り出しながら出てきた。


 同じく、ミーも棍を前に突き出し、やる気満々な様子で、勢いよくジャンプする。



 スバスは、手製の小型爆弾を片手に持ち、ゾンビを倒さんと意気込む。


 ロングソードを背中の鞘から抜いて、真っ直ぐ構えた、フリンカは殺気を放っている。



「全員、揃ったな」


「行けるわね」


 士気が高い仲間たちの様子を見て、ショーンとリズ達も、顔つきを険しくさせる。



「お前たち、こっちの準備は出来てるぞ」


「だったら、行くとしようかっ! はやく、マルルン達を助けたいし、ガキに飯を喰わせたいからな」


 ゴルバが、部下たちを引き連れて、店内から出てくると、ショーンは先に歩きだす。



「まあ、待て…………マルルン達の様子はどうだ?」


「向こうも、遠くのホテルから手を振っていますっ!」


 ゴルバは、屋上のスコープ付きクロスボウを構えた、黒アリ人間に話しかけた。


 そこには、他にも、スナイパーライフルや弓矢を構える、アリ人間や冒険者たちが存在した。



「はやく、行くとしようっ! マルルン達を救出しないと成らないからなっ!」


「よし、じゃあ作戦通り、俺達はゾンビを倒しながら、避難経路を確保する…………マルルン達のホテルは向こうに見える八階のだからな」


 ショーンとゴルバを含む救出部隊は、店から離れていき、ホテルへと続く通りに向かう。



「待ってろよ、マルルン」


 ショーン達は、救出に向かう前に、ゾンビやチンピラとの戦いにそなえて、気を引き締める。



「ガバル、コドシャ、ゴーベワ、ギドロ、エミリー、ロイク、サーラ、アフマド…………彼等の援護に回ってくれっ! 後はゴーレムとドローンを貸してやる」


「みんな、後ろを頼むぜっ! 先陣は俺が切り開くっ!!」


 ゴルバは、自分の部下や冒険者たちを呼ぶと、自らも、指揮を取りながら前線に立とうとした。


 ショーンも、彼に負けまいと勢いを着けて、今にも突撃しそうな気迫を出す。



 こうして、ホテルに籠城する、マルルン達の救出作戦が始まった。


 彼等が来ると、茶アリ人間が、業務用バンを移動させて、皆が通れるようにする。



「屋上を確保するっ! 行くぞっ!」


「移動開始するわっ!」


「狙撃支援しに、上に行くとしますか」


「上からの攻撃で、ゾンビを減らすっ!!」


 赤アリ人間のガバルが、クロスボウを構えながら走ってゆく。


 バッグと棍棒を抱えながら、紫アリ人間である、コドシャは、彼の後を追う。



 リザードマンである、エミリーは、アサルトライフルを持ちながら、素早く駆けだす。


 冒険者である、白髪のロイクも、大きなリュックを背負い、ナイフを握りしめつつ走る。



「俺達は先陣を着るっ!」


「行くわよっ!!」


「ウェアアアア」


「グゥゥ~~~~!」


 左右に、別れて行った救出部隊は、赤茶色いビルの壁面を登っていく。


 窓を掴みながら、よじ登っていった彼等は、あっという間に屋上へと、たどり着いた。



 その間に、ショーンは鞘から、ショートソードを引き抜きながら突撃していく。


 マジックロッドを素早く構えた、リズも大火球を発射しまくる。



「グアアッ!?」


「グエエッ!!」


 ショーンの振るった剣先は、ゾンビの首を一撃で跳ねとばした。


 その後ろから、小走りし始めた奴は、リズが放った火炎魔法により、体が燃え盛る。



「グオオオオオッ! グェッ!」


「ガアアアアーーヒグッ!?」


「こっちは、ダメだねっ! バリケードが設置されているよっ!」


「右がダメなら、左から攻めるだけだってんだっ!!」


 軍隊が用意した物か分からないが、コンクリート壁が、T字路の右側にある。


 それを見て、フリンカは急いで、左側へと方向転換しながら走る。



 ショーンは、ゾンビの足止めを喰らう暇がないため、連中を無視しながら駆けてゆく。


 それから、ゾンビ達は真上から、クロスボウの矢や銃弾に殺られていった。



 建物屋上に、パルクールしながら移動していた、チームが援護してくれたのだ。



「援護する、先に進め…………」


「グゥエッ!!」


「はやく行くにゃっ!! 私達は止まれないんだにゃっ!」


「ゴハァッ!」


 ワシントンが、狩猟弓から放った矢は、ゾンビの頭を見事に貫いた。


 棍を勢いよく振り回す、ミーは敵を三体も纏めて、地面に押し倒した。



「グオオオオ~~!」


「グオオオオオッ!!」


「爆弾、いや鉄球か?」


「私も斬るよっ!!」


「ここは、俺達に任せろっ! お前達は、先に行くんだっ!」


「コイツらの相手は、我々が引き受けるっ!」


「やってやるわよっ! かかって来なさいっ!」


 前方からは、大量に恐ろしいゾンビ達が走り、連中の低い唸り声が、周囲に恐怖感を与える。


 それに負けじと、白兵戦を挑まんと、スバスとフリンカ達は、真っ直ぐ進んでいく。



 しかし、バトルアックスを握る、ゴルバ達が全面に出てきた。


 彼等は、四体の灰色ゴーレムとともに、群れに対して、戦い始めた。



 銀色アリ人間のゴーベワは、ハーフパイクを構えたまま突撃していく。


 黒い布を体中に巻いた、ミイラ男のアフマドは、ショットガンを構えて、散弾を放った。



「ゴルバ、頼んだぞっ!!」


 ショーンは仲間達とともに、マルルンたちが避難している、ホテルへと必死に走っていく。


 ゾンビの群れは、ゴルバ達に任せて、彼等は右側へと、ひたすら進んでいった。



「グルアアアアアッ!」


「ウアアーーーー」


「うわっ!?」


「邪魔だねぇ? 退きなっ!」


 高所から落下してきた、フレッシャーの鋭い爪が、ショーンに迫る。


 しかし、彼は直ぐさま、左腕のバックラーで、それを受け止める。



 ドスドスと歩いてきた、マッスラーの巨体が道を塞ぐように両腕を広げる。


 だが、フリンカは奴の右腕から距離を取り、相手をせずに駆けていく。



「退けっ!? 邪魔だっ!!」


「相手している暇は無いのよっ!」


「ウガアッ! ウゲッ!」


「ギャッ! ガギャッ?」


 ワシントンは、自らに迫るゾンビに、ボウイナイフを振り上げ、下から切り上げる。


 それから、奴が怯んだ隙を見逃さず、すばやく横を通りすぎていく。



 フリンカも、フレッシャーの右腕を掴みながら、地面に引っ張り倒す。


 そうして、後方から飛んでくるドローンのマシンガンに、連中は射殺されていく。



「行くぞ、急げっ!」


「分かってるにゃ」


「そうだ、いや…………」


「援護が、必要みたいね?」


 ショーンは、心臓が高鳴るのを感じながらも、仲間たちに目を向けた。


 彼等は、後方から支援を受けつつ、目標のホテルへと向かっていく。



 その中で、ワシントンは立ち止まると、狩猟弓を射ち始めた。


 火炎魔法により、リズは炎の壁を作って、前方から迫るゾンビ達を足止めしようとする。



「襲撃かっ! チンピラ達が裏手から来たのか?」


「不味いわ、どうしましょう…………」


「マルルンッ!! 助けに来たぞっ!!」


 十字路から、聞こえる声に、マルルンとジャーラ達は、窓に近づきつつ身を隠す。


 敵の攻撃を警戒する彼等だったが、ショーンが叫んだことで、救助隊が到着したと分かった。



「助かったっ! あっ!! ショーン、気をつけろっ!」


「ここのゾンビは、叫んだり&爆発するわよっ!!」


「何だって? そんなのがっ! いや、今はとにかく降りてこいっ!」


「早くするんだっ! ゾンビの大軍が迫っているっ! 地雷も設置しているうちに、降りるんだっ!」


 十字路、左側にあるホテル三階の窓から、マルルンとジャーラ達は叫ぶ。


 それを聞いても、ショーンは動じる事なく、剣と盾を構えて、敵を迎撃せんとした。



 一方、スバスは十字路の正面に、幾つか地雷を投げて、罠を仕掛けていた。


 それから、ドローン達もマシンガンで、ゾンビの群れを撃ちまくっている。



「分かった、だが気をつけろよっ! 今、梯子を用意するっ! うわああっ!」


「な、何だっ! 耳の鼓膜が~~~~!?」


「きゃああああっ!?」


「にゃあーーーーー! な、何だにゃっ!?」


「ウオオオオオオオッ!!」


 マルルンが、折り畳み式の梯子を下げた時、いきなり怒鳴り声が木霊した。


 この声は、周囲に反響するほど音が大きく、ショーンは耳を塞ぐ暇なく倒れてしまった。



 ゾンビに、釘を投げつけた後、ミーも頭を押さえながら地面に頃がってしまう。


 怒鳴る女性型ゾンビは、ドローン部隊の内部パーツも破壊して、落下させてしまう。



「ウオオーーーーーー!!」


「アアアア~~」


「ウオオオオッ!」


 女性型ゾンビは、叫び声を上げ続け、周囲に群れを集めてくる。


 しかも、彼女の声を聞いた、ゾンビ達は勢いを増し、小走りを始めた。

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