店の外に出た、ショーン達は、これから籠城するマルルン達を助けに行こうとする。
「あそこか、車に塞がれているな」
「バリケードの代わりのようだわ」
ショーンとリズ達は、敷地を囲んでいる黄土色の建物と、茶色い壁などに目を向ける。
そこには、ワゴン車や大型トラック、幌馬車などが置かれてある。
これ等は、通りへと続く道路から、ゾンビが侵入することを防いでいた。
また、店の右側で、マルルン達が避難しているホテルがある方にも、業務用バンが停められていた。
「準備できたか、こっちは、いつでも狙撃支援の準備ができてるぞ」
「邪魔な奴は、釘と棍で近寄らせないにゃっ!」
「手製地雷よし、小型爆弾よし、煙玉よしだっ!」
「邪魔な奴は、私が斬って上げるよ」
店から、ワシントンが矢筒から、一本の矢を取り出しながら出てきた。
同じく、ミーも棍を前に突き出し、やる気満々な様子で、勢いよくジャンプする。
スバスは、手製の小型爆弾を片手に持ち、ゾンビを倒さんと意気込む。
ロングソードを背中の鞘から抜いて、真っ直ぐ構えた、フリンカは殺気を放っている。
「全員、揃ったな」
「行けるわね」
士気が高い仲間たちの様子を見て、ショーンとリズ達も、顔つきを険しくさせる。
「お前たち、こっちの準備は出来てるぞ」
「だったら、行くとしようかっ! はやく、マルルン達を助けたいし、ガキに飯を喰わせたいからな」
ゴルバが、部下たちを引き連れて、店内から出てくると、ショーンは先に歩きだす。
「まあ、待て…………マルルン達の様子はどうだ?」
「向こうも、遠くのホテルから手を振っていますっ!」
ゴルバは、屋上のスコープ付きクロスボウを構えた、黒アリ人間に話しかけた。
そこには、他にも、スナイパーライフルや弓矢を構える、アリ人間や冒険者たちが存在した。
「はやく、行くとしようっ! マルルン達を救出しないと成らないからなっ!」
「よし、じゃあ作戦通り、俺達はゾンビを倒しながら、避難経路を確保する…………マルルン達のホテルは向こうに見える八階のだからな」
ショーンとゴルバを含む救出部隊は、店から離れていき、ホテルへと続く通りに向かう。
「待ってろよ、マルルン」
ショーン達は、救出に向かう前に、ゾンビやチンピラとの戦いにそなえて、気を引き締める。
「ガバル、コドシャ、ゴーベワ、ギドロ、エミリー、ロイク、サーラ、アフマド…………彼等の援護に回ってくれっ! 後はゴーレムとドローンを貸してやる」
「みんな、後ろを頼むぜっ! 先陣は俺が切り開くっ!!」
ゴルバは、自分の部下や冒険者たちを呼ぶと、自らも、指揮を取りながら前線に立とうとした。
ショーンも、彼に負けまいと勢いを着けて、今にも突撃しそうな気迫を出す。
こうして、ホテルに籠城する、マルルン達の救出作戦が始まった。
彼等が来ると、茶アリ人間が、業務用バンを移動させて、皆が通れるようにする。
「屋上を確保するっ! 行くぞっ!」
「移動開始するわっ!」
「狙撃支援しに、上に行くとしますか」
「上からの攻撃で、ゾンビを減らすっ!!」
赤アリ人間のガバルが、クロスボウを構えながら走ってゆく。
バッグと棍棒を抱えながら、紫アリ人間である、コドシャは、彼の後を追う。
リザードマンである、エミリーは、アサルトライフルを持ちながら、素早く駆けだす。
冒険者である、白髪のロイクも、大きなリュックを背負い、ナイフを握りしめつつ走る。
「俺達は先陣を着るっ!」
「行くわよっ!!」
「ウェアアアア」
「グゥゥ~~~~!」
左右に、別れて行った救出部隊は、赤茶色いビルの壁面を登っていく。
窓を掴みながら、よじ登っていった彼等は、あっという間に屋上へと、たどり着いた。
その間に、ショーンは鞘から、ショートソードを引き抜きながら突撃していく。
マジックロッドを素早く構えた、リズも大火球を発射しまくる。
「グアアッ!?」
「グエエッ!!」
ショーンの振るった剣先は、ゾンビの首を一撃で跳ねとばした。
その後ろから、小走りし始めた奴は、リズが放った火炎魔法により、体が燃え盛る。
「グオオオオオッ! グェッ!」
「ガアアアアーーヒグッ!?」
「こっちは、ダメだねっ! バリケードが設置されているよっ!」
「右がダメなら、左から攻めるだけだってんだっ!!」
軍隊が用意した物か分からないが、コンクリート壁が、T字路の右側にある。
それを見て、フリンカは急いで、左側へと方向転換しながら走る。
ショーンは、ゾンビの足止めを喰らう暇がないため、連中を無視しながら駆けてゆく。
それから、ゾンビ達は真上から、クロスボウの矢や銃弾に殺られていった。
建物屋上に、パルクールしながら移動していた、チームが援護してくれたのだ。
「援護する、先に進め…………」
「グゥエッ!!」
「はやく行くにゃっ!! 私達は止まれないんだにゃっ!」
「ゴハァッ!」
ワシントンが、狩猟弓から放った矢は、ゾンビの頭を見事に貫いた。
棍を勢いよく振り回す、ミーは敵を三体も纏めて、地面に押し倒した。
「グオオオオ~~!」
「グオオオオオッ!!」
「爆弾、いや鉄球か?」
「私も斬るよっ!!」
「ここは、俺達に任せろっ! お前達は、先に行くんだっ!」
「コイツらの相手は、我々が引き受けるっ!」
「やってやるわよっ! かかって来なさいっ!」
前方からは、大量に恐ろしいゾンビ達が走り、連中の低い唸り声が、周囲に恐怖感を与える。
それに負けじと、白兵戦を挑まんと、スバスとフリンカ達は、真っ直ぐ進んでいく。
しかし、バトルアックスを握る、ゴルバ達が全面に出てきた。
彼等は、四体の灰色ゴーレムとともに、群れに対して、戦い始めた。
銀色アリ人間のゴーベワは、ハーフパイクを構えたまま突撃していく。
黒い布を体中に巻いた、ミイラ男のアフマドは、ショットガンを構えて、散弾を放った。
「ゴルバ、頼んだぞっ!!」
ショーンは仲間達とともに、マルルンたちが避難している、ホテルへと必死に走っていく。
ゾンビの群れは、ゴルバ達に任せて、彼等は右側へと、ひたすら進んでいった。
「グルアアアアアッ!」
「ウアアーーーー」
「うわっ!?」
「邪魔だねぇ? 退きなっ!」
高所から落下してきた、フレッシャーの鋭い爪が、ショーンに迫る。
しかし、彼は直ぐさま、左腕のバックラーで、それを受け止める。
ドスドスと歩いてきた、マッスラーの巨体が道を塞ぐように両腕を広げる。
だが、フリンカは奴の右腕から距離を取り、相手をせずに駆けていく。
「退けっ!? 邪魔だっ!!」
「相手している暇は無いのよっ!」
「ウガアッ! ウゲッ!」
「ギャッ! ガギャッ?」
ワシントンは、自らに迫るゾンビに、ボウイナイフを振り上げ、下から切り上げる。
それから、奴が怯んだ隙を見逃さず、すばやく横を通りすぎていく。
フリンカも、フレッシャーの右腕を掴みながら、地面に引っ張り倒す。
そうして、後方から飛んでくるドローンのマシンガンに、連中は射殺されていく。
「行くぞ、急げっ!」
「分かってるにゃ」
「そうだ、いや…………」
「援護が、必要みたいね?」
ショーンは、心臓が高鳴るのを感じながらも、仲間たちに目を向けた。
彼等は、後方から支援を受けつつ、目標のホテルへと向かっていく。
その中で、ワシントンは立ち止まると、狩猟弓を射ち始めた。
火炎魔法により、リズは炎の壁を作って、前方から迫るゾンビ達を足止めしようとする。
「襲撃かっ! チンピラ達が裏手から来たのか?」
「不味いわ、どうしましょう…………」
「マルルンッ!! 助けに来たぞっ!!」
十字路から、聞こえる声に、マルルンとジャーラ達は、窓に近づきつつ身を隠す。
敵の攻撃を警戒する彼等だったが、ショーンが叫んだことで、救助隊が到着したと分かった。
「助かったっ! あっ!! ショーン、気をつけろっ!」
「ここのゾンビは、叫んだり&爆発するわよっ!!」
「何だって? そんなのがっ! いや、今はとにかく降りてこいっ!」
「早くするんだっ! ゾンビの大軍が迫っているっ! 地雷も設置しているうちに、降りるんだっ!」
十字路、左側にあるホテル三階の窓から、マルルンとジャーラ達は叫ぶ。
それを聞いても、ショーンは動じる事なく、剣と盾を構えて、敵を迎撃せんとした。
一方、スバスは十字路の正面に、幾つか地雷を投げて、罠を仕掛けていた。
それから、ドローン達もマシンガンで、ゾンビの群れを撃ちまくっている。
「分かった、だが気をつけろよっ! 今、梯子を用意するっ! うわああっ!」
「な、何だっ! 耳の鼓膜が~~~~!?」
「きゃああああっ!?」
「にゃあーーーーー! な、何だにゃっ!?」
「ウオオオオオオオッ!!」
マルルンが、折り畳み式の梯子を下げた時、いきなり怒鳴り声が木霊した。
この声は、周囲に反響するほど音が大きく、ショーンは耳を塞ぐ暇なく倒れてしまった。
ゾンビに、釘を投げつけた後、ミーも頭を押さえながら地面に頃がってしまう。
怒鳴る女性型ゾンビは、ドローン部隊の内部パーツも破壊して、落下させてしまう。
「ウオオーーーーーー!!」
「アアアア~~」
「ウオオオオッ!」
女性型ゾンビは、叫び声を上げ続け、周囲に群れを集めてくる。
しかも、彼女の声を聞いた、ゾンビ達は勢いを増し、小走りを始めた。