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第39話 作戦は成功した…………だが?


 ショーン達は、マルルン達を救出して、即座に撤退しようと考えた。


 そんな彼等の前に、新たな感染者である女性型ゾンビが、立ちはだかった。



「グオオオオオオオオオオッ!!」


「うわあああああ~~?」


「いやあああああーー!」


 女性型ゾンビの咆哮は、皆が動けなくなるほど凄まじく、ショーンは倒れたまま立ち上がれない。


 脳ミソが激しく揺さぶられるような感覚に、フリンカも、苦しみながら地面を転げ回る。



「死ねっ! 死ぬんだよ、この野郎がっ!」


「グエッ!!」


「グオオオオオーー」


「ギュアアアアア」


「あんたら、はやく下がりなっ!」


「ああ、俺も爆弾を投げないとな…………」


 オートマグナムを撃ちまくる、緑色アリ人間ギドロの援護射撃により、女性型ゾンビは射殺された。


 何発も、弾丸を撃たれた彼女は、後ろに倒れたが、彼女が引き寄せた群れは立ち止まらない。



 爆竹を投げた、白髪黒人であるサーラは鉄筋を左手に持ち、スバスの手を引いて、立ち上がらせる。


 その間に、ゾンビ達は路上で弾け続ける、火薬に引き寄せられていき、段々と集まっていく。



「今だっ! 行くしかないっ!」


「マルルン、こっちに来てっ! 援護するわ」


「今、そっちに向かう」


「私も援護しませんとね」


 ショーンは後ろを向いて、直ぐに逃走し始め、リズは火炎魔法を扇状に放つ。


 これにより、多数のゾンビが燃やされるが、後ろから続々と、連中は現れる。



 マルルンは、梯子を降りてきて、途中から地上へと飛び降りた。


 同じく、着地したばかりのジャーラは、マジックワンドから氷結魔法を放った。



「グアッ!」


「よし、撤退するぞっ! ん? お前ら、逃げるぞっ!」


「やっぱり、来たか? どうやら間に合ったようだな」


「危うく、置いてかれるかと思ったわよ…………」


「遅れてしまう、早く行かないと成らんっ!」


「はぁ~~逃げ遅れてしまうところでしたわ」


 ジャーラの一撃を、ゾンビが喰らうと、右足が凍りついて地面から足を剥がせなくなる。


 それを見ながら走る、ショーンは他の仲間たちも、ホテルから出てくる姿を見た。



 テアンとカーニャ達は、右側の道路にあった、崩れかけた、コンクリート壁を飛び越えてきた。


 一階の窓から、ゴードンとサヤ達は飛び出てきて、路上を走り出す。



 彼等は、群れから逃れようとしたが、背後から次々と現れる敵に、足を止める暇はなかった。



「ゾンビが来るわっ! ファイアウォールッ!」


「アイスウォールッ! 皆さん、今のうちに逃げて下さいっ!」


「リズ、俺達が逃げた後、ゾンビ達が、あそこの地雷まで来たら射ってくれっ!」


「私も、拳銃で射撃するっ! 先に行けっ!」


 マジックロッドをリズは振って、オレンジ玉を光らせ、火炎魔法により、炎の壁を構築する。


 真っ直ぐ構えた、マジックワンドから、ジャーラは氷壁を作って、ゾンビごと凍らせる。



 炎のカーテンを越えようとした、ゾンビは体に火が着いてしまい、膝を地面に屈してしまう。


 凍らされて、壁に取り込まれた者は、手足をジタバタと動かす事しか出来ない。



 左右で、敵が押さえられると、スバスは走りながら用意していた、手製地雷に目を向ける。


 両手でピストルを握り、ゴードンは正面の魔法がない場所を、続々と通過する敵を狙い撃つ。



「よし、このまま撤退だっ!」


「クロスボウで、援護するっ! 先に行ってくれっ!」


「フガアアアアーーーー」


「これでも、喰らいなっ!」


「グワアアッ!!」


「ギャアッ!?」


「スバス、地雷ね? 今、射つわよっ!!」


「グゥワアアアアーーーーー!?」


 誰よりも先頭を走っていた、ショーンは後ろを振り返って、仲間たちの様子を確認した。


 テアンは立ち止まり、クロスボウで走ってきた、フレッシャーの胸を射ち抜く。



 カーニャは、両手から小型ダークボールや紫色のビームを放ちまくり、ゾンビ達を吹き飛ばす。


 マジックロッドから火球を連射した、リズの攻撃で、向かってくる群れが、次々と爆炎に包まれる。



「お前たち、はやく下がるんだっ! 撤退の時間だぞっ!」


「ゴルバ達も、持たないわ」


「分かってるぜ、だから走ってんだろ」


「よっ! これは、不味いねっ!」


 オートマグナムを握る右手を振りながら、ギドロは避難経路へと、ショーン達を叫ぶ。


 鉄筋を掲げて、サーラは暗雲を作って、ゾンビ達の頭上から雨と雷を降らせて、感電させる。



 ショーンも、ひたすら走りながら、二人の場所まで行こうとする。



 その時、殿を務めていた、フリンカに対して、敵が包丁を投げてきた。


 だが、彼女はロングソードを振るって、それを見事に弾き返した。



「お前ら、急げ、はやくしろっ!」


「ガオオオオオーー」


「うわっ! ゴーレムが破壊されたっ!」


「逃げるわよっ! もうダメだわっ!」


「ガアガアッ!」


 ゴルバ達は、既に後退を初めており、ドスドスと歩く、数体のマッスラーが見える。


 その内、一体が後ずさるクレイ・ゴーレムを思いっきり殴って破壊した。



 砕け散る瞬間、ショットガンを抱えたまま、頃がって、黒いミイラ男アフマドは、攻撃を避ける。


 銀色アリ人間のゴーベワは、ハーフパイクで、上から襲ってきた、ジャンピンガーを突き刺した。



 こうして、戦いながら彼等は左側へと後退していき、右側からはゾンビ軍団が攻めてくる。



「ファットゲローだっ! 下がれっ!」


「ゴルアッ!! ゲロロロロ~~!?」


「うわっ! あと、もう少しで、ゴルバ達に合流できると思ったのにっ!」


「よし、ここまで来れば、後は弓を使って、援護に集中できるっ!! は?」


「ダメですわっ! これでは…………」


「ブルアッ! ゲロロッ!」


「ゲロロッ! ゲロロッ!」


 ゴルバは、大きな声で、部下達に指示を出しつつ、後ろに下がっていった。


 いきなり、ファットゲローが、口から吐き出す酸性の唾液が、地面を溶かしながら進行を妨げた。


 ショーンは思わず後ろに振り返り、仲間たちが無事であるかどうかを確認した。



 ここまで逃げてきて、安心しきった、ワシントンだったが、大量の強酸を前に立ち止まる他ない。


 同様に、仲間の殿を務めようとした、サヤは薙刀を抱えたまま、呆然とするしかなかった。



 しかも、そこには、二体のスピットゲローが現れて、口から強酸を飛ばしてきた。


 こうして、ゾンビ軍団に退路を遮断された彼等は、前と後ろを挟まれる形となってしまった。



「うわわ、ヤバイッ! 逃げろっ!」


「逃げろと言っても、向こうはゾンビだらけだぞっ!」


「任せろっ! ここは俺の煙玉でっ!」


「後ろのは任せるにゃーーよっ!!」


 ショーンは、焦りながらも逃げ道を探して、彼方此方あちらこちらに目を向ける。


 ワシントンは、スピットゲローの強酸を、頭を下げつつ避けて、狩猟弓から矢を放つ。



 煙玉を、何個か投げつけて、スバスは辺りに灰煙を舞い上げていく。


 ナイフが飛んでくると、ミーは両手で握った、棍で防御しながら敵を睨む。



「グアッ! グアッ!」


「ガアアアアーー?」


「ウオオオオーーーー」


「こっちも、ヤバイわね」


「白兵戦も、できるわっ!」


「殴り合いなら負けないぞ」


「近づかないでっ!」


 灰煙とは、反対側のゾンビ軍団も勢いよく迫ってくると、ロングソードをフリンカは構える。


 衣服に隠していた、マチェットを抜き取り、カーニャは二刀流で、敵に立ち向かう。



 ゴードンは、フレッシャー達が襲いかかってくると、自らのパンチを連続で放ちまくる。


 リズは、いきなり、ジャンピンガーが目の前に現れると、マジックロッドで頬をブン殴った。



「魔法を放つ暇すらないですね」


「かなり、不味い状況ですわ」


「不味いにゃっ! にゃっ! にゃっ!」


「グア、グアア…………」


「やるしかないっ! 立ち向かうんだっ!」


 ジャーラは、背中のバールを抜き取り、ゾンビが間合いに入ると、頭を思いっきり叩きつける。


 ジャンピンガーが飛んでくると、サヤは薙刀を奴の胸に突き刺す。



 ミーは、棍の打突で、フレッシャーを怯ませると、次は釘を投げまくる。


 群れの中に、マルルンは女性型ゾンビを見つけて、奴が怒鳴る前に走り出していった。



「くたばれっ!」


「グア…………グァ」


「諦めるしかないか? いや、マルルンの言う通り、やるしかないな?」


 マルルンは、スパタを振り回し、女性型ゾンビの胸元を袈裟斬りにして、一撃で倒した。


 それを見て、ショーンはバックラーを構えながら、ゾンビの群れに突撃を仕掛けた。

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