ショーン達は、マルルン達を救出して、即座に撤退しようと考えた。
そんな彼等の前に、新たな感染者である女性型ゾンビが、立ちはだかった。
「グオオオオオオオオオオッ!!」
「うわあああああ~~?」
「いやあああああーー!」
女性型ゾンビの咆哮は、皆が動けなくなるほど凄まじく、ショーンは倒れたまま立ち上がれない。
脳ミソが激しく揺さぶられるような感覚に、フリンカも、苦しみながら地面を転げ回る。
「死ねっ! 死ぬんだよ、この野郎がっ!」
「グエッ!!」
「グオオオオオーー」
「ギュアアアアア」
「あんたら、はやく下がりなっ!」
「ああ、俺も爆弾を投げないとな…………」
オートマグナムを撃ちまくる、緑色アリ人間ギドロの援護射撃により、女性型ゾンビは射殺された。
何発も、弾丸を撃たれた彼女は、後ろに倒れたが、彼女が引き寄せた群れは立ち止まらない。
爆竹を投げた、白髪黒人であるサーラは鉄筋を左手に持ち、スバスの手を引いて、立ち上がらせる。
その間に、ゾンビ達は路上で弾け続ける、火薬に引き寄せられていき、段々と集まっていく。
「今だっ! 行くしかないっ!」
「マルルン、こっちに来てっ! 援護するわ」
「今、そっちに向かう」
「私も援護しませんとね」
ショーンは後ろを向いて、直ぐに逃走し始め、リズは火炎魔法を扇状に放つ。
これにより、多数のゾンビが燃やされるが、後ろから続々と、連中は現れる。
マルルンは、梯子を降りてきて、途中から地上へと飛び降りた。
同じく、着地したばかりのジャーラは、マジックワンドから氷結魔法を放った。
「グアッ!」
「よし、撤退するぞっ! ん? お前ら、逃げるぞっ!」
「やっぱり、来たか? どうやら間に合ったようだな」
「危うく、置いてかれるかと思ったわよ…………」
「遅れてしまう、早く行かないと成らんっ!」
「はぁ~~逃げ遅れてしまうところでしたわ」
ジャーラの一撃を、ゾンビが喰らうと、右足が凍りついて地面から足を剥がせなくなる。
それを見ながら走る、ショーンは他の仲間たちも、ホテルから出てくる姿を見た。
テアンとカーニャ達は、右側の道路にあった、崩れかけた、コンクリート壁を飛び越えてきた。
一階の窓から、ゴードンとサヤ達は飛び出てきて、路上を走り出す。
彼等は、群れから逃れようとしたが、背後から次々と現れる敵に、足を止める暇はなかった。
「ゾンビが来るわっ! ファイアウォールッ!」
「アイスウォールッ! 皆さん、今のうちに逃げて下さいっ!」
「リズ、俺達が逃げた後、ゾンビ達が、あそこの地雷まで来たら射ってくれっ!」
「私も、拳銃で射撃するっ! 先に行けっ!」
マジックロッドをリズは振って、オレンジ玉を光らせ、火炎魔法により、炎の壁を構築する。
真っ直ぐ構えた、マジックワンドから、ジャーラは氷壁を作って、ゾンビごと凍らせる。
炎のカーテンを越えようとした、ゾンビは体に火が着いてしまい、膝を地面に屈してしまう。
凍らされて、壁に取り込まれた者は、手足をジタバタと動かす事しか出来ない。
左右で、敵が押さえられると、スバスは走りながら用意していた、手製地雷に目を向ける。
両手でピストルを握り、ゴードンは正面の魔法がない場所を、続々と通過する敵を狙い撃つ。
「よし、このまま撤退だっ!」
「クロスボウで、援護するっ! 先に行ってくれっ!」
「フガアアアアーーーー」
「これでも、喰らいなっ!」
「グワアアッ!!」
「ギャアッ!?」
「スバス、地雷ね? 今、射つわよっ!!」
「グゥワアアアアーーーーー!?」
誰よりも先頭を走っていた、ショーンは後ろを振り返って、仲間たちの様子を確認した。
テアンは立ち止まり、クロスボウで走ってきた、フレッシャーの胸を射ち抜く。
カーニャは、両手から小型ダークボールや紫色のビームを放ちまくり、ゾンビ達を吹き飛ばす。
マジックロッドから火球を連射した、リズの攻撃で、向かってくる群れが、次々と爆炎に包まれる。
「お前たち、はやく下がるんだっ! 撤退の時間だぞっ!」
「ゴルバ達も、持たないわ」
「分かってるぜ、だから走ってんだろ」
「よっ! これは、不味いねっ!」
オートマグナムを握る右手を振りながら、ギドロは避難経路へと、ショーン達を叫ぶ。
鉄筋を掲げて、サーラは暗雲を作って、ゾンビ達の頭上から雨と雷を降らせて、感電させる。
ショーンも、ひたすら走りながら、二人の場所まで行こうとする。
その時、殿を務めていた、フリンカに対して、敵が包丁を投げてきた。
だが、彼女はロングソードを振るって、それを見事に弾き返した。
「お前ら、急げ、はやくしろっ!」
「ガオオオオオーー」
「うわっ! ゴーレムが破壊されたっ!」
「逃げるわよっ! もうダメだわっ!」
「ガアガアッ!」
ゴルバ達は、既に後退を初めており、ドスドスと歩く、数体のマッスラーが見える。
その内、一体が後ずさるクレイ・ゴーレムを思いっきり殴って破壊した。
砕け散る瞬間、ショットガンを抱えたまま、頃がって、黒いミイラ男アフマドは、攻撃を避ける。
銀色アリ人間のゴーベワは、ハーフパイクで、上から襲ってきた、ジャンピンガーを突き刺した。
こうして、戦いながら彼等は左側へと後退していき、右側からはゾンビ軍団が攻めてくる。
「ファットゲローだっ! 下がれっ!」
「ゴルアッ!! ゲロロロロ~~!?」
「うわっ! あと、もう少しで、ゴルバ達に合流できると思ったのにっ!」
「よし、ここまで来れば、後は弓を使って、援護に集中できるっ!! は?」
「ダメですわっ! これでは…………」
「ブルアッ! ゲロロッ!」
「ゲロロッ! ゲロロッ!」
ゴルバは、大きな声で、部下達に指示を出しつつ、後ろに下がっていった。
いきなり、ファットゲローが、口から吐き出す酸性の唾液が、地面を溶かしながら進行を妨げた。
ショーンは思わず後ろに振り返り、仲間たちが無事であるかどうかを確認した。
ここまで逃げてきて、安心しきった、ワシントンだったが、大量の強酸を前に立ち止まる他ない。
同様に、仲間の殿を務めようとした、サヤは薙刀を抱えたまま、呆然とするしかなかった。
しかも、そこには、二体のスピットゲローが現れて、口から強酸を飛ばしてきた。
こうして、ゾンビ軍団に退路を遮断された彼等は、前と後ろを挟まれる形となってしまった。
「うわわ、ヤバイッ! 逃げろっ!」
「逃げろと言っても、向こうはゾンビだらけだぞっ!」
「任せろっ! ここは俺の煙玉でっ!」
「後ろのは任せるにゃーーよっ!!」
ショーンは、焦りながらも逃げ道を探して、
ワシントンは、スピットゲローの強酸を、頭を下げつつ避けて、狩猟弓から矢を放つ。
煙玉を、何個か投げつけて、スバスは辺りに灰煙を舞い上げていく。
ナイフが飛んでくると、ミーは両手で握った、棍で防御しながら敵を睨む。
「グアッ! グアッ!」
「ガアアアアーー?」
「ウオオオオーーーー」
「こっちも、ヤバイわね」
「白兵戦も、できるわっ!」
「殴り合いなら負けないぞ」
「近づかないでっ!」
灰煙とは、反対側のゾンビ軍団も勢いよく迫ってくると、ロングソードをフリンカは構える。
衣服に隠していた、マチェットを抜き取り、カーニャは二刀流で、敵に立ち向かう。
ゴードンは、フレッシャー達が襲いかかってくると、自らのパンチを連続で放ちまくる。
リズは、いきなり、ジャンピンガーが目の前に現れると、マジックロッドで頬をブン殴った。
「魔法を放つ暇すらないですね」
「かなり、不味い状況ですわ」
「不味いにゃっ! にゃっ! にゃっ!」
「グア、グアア…………」
「やるしかないっ! 立ち向かうんだっ!」
ジャーラは、背中のバールを抜き取り、ゾンビが間合いに入ると、頭を思いっきり叩きつける。
ジャンピンガーが飛んでくると、サヤは薙刀を奴の胸に突き刺す。
ミーは、棍の打突で、フレッシャーを怯ませると、次は釘を投げまくる。
群れの中に、マルルンは女性型ゾンビを見つけて、奴が怒鳴る前に走り出していった。
「くたばれっ!」
「グア…………グァ」
「諦めるしかないか? いや、マルルンの言う通り、やるしかないな?」
マルルンは、スパタを振り回し、女性型ゾンビの胸元を袈裟斬りにして、一撃で倒した。
それを見て、ショーンはバックラーを構えながら、ゾンビの群れに突撃を仕掛けた。