ショーン達は、ファットゲローの強酸に退路を断たれてしまった。
しかも、背後からは、ゾンビ軍団が次々に現れて、彼等を追い詰めようとしてくる。
「うおおおおっ! 喰らえっ!」
「ブワッ!」
「グェッ!?」
「ギャッ!?」
ショーンは、バックラーで、ゾンビの顔を弾き、フレッシャーを蹴っ飛ばす。
そして、ショートソードを斜めに振り下ろして、ジャンピンガーの両足を斬る。
「クソッ! 全然、敵の数が減らないっ! これじゃ、矢が尽きてしまう」
「不味い状況だわっ! 何とか、しないと…………」
テアンは、クロスボウに矢を装填すると、直ぐに一体のゾンビを射ち殺す。
極大火球を空に放ちながら、リズは群れに火の雨を降らせて、燃やそうとしていく。
しかし、窮地に陥った彼等は、背後から爆発音や瓶が割れる音が、近づいてくるのを耳にする。
何かと思った、ショーンは後ろの灰煙に包まれた道路を見てみた。
「お前ら、上から援護してやるっ!」
「さっさと、逃げるんだよっ!」
「行けっ!! 撤退するのよっ!!」
「炎を降らせてやるぜ」
赤アリ人間のガバルが、クロスボウを構えて、矢を真上から、ゾンビ達に放ちまくる。
紫アリ人間である、コドシャは、バッグから取り出した、ダイナマイトを次々と投げおとしていく。
正面にある建物屋上に立つ、二人の攻撃は、かなり強烈だった。
灰煙に包まれていた道路が、動く死者達ごと吹き飛ばされていったからだ。
リザードマンである、エミリーは、アサルトライフルを連射して、群れに弾丸の雨を降らせる。
白髪のロイクも、大きなリュックを置いて、中から出した、火炎瓶に火を着けて何回も放り投げる。
左側の建物から、二人が地上に向けて、猛烈な攻撃を加えていった。
割れた瓶から一気に、火炎が広がり、何体もの敵を炎上させる。
「助かったぜっ! 道路も割れてるっ! これで、強酸も大丈夫だっ!」
「後ろのゾンビも、燃えているにゃあっ!? これなら、安全に逃げられるにゃっ!!」
「アアアアッ!?」
「グエッ! グアーー!」
「ウア…………ウアアアアッ!?」
ショーンは、瓦礫に包まれた路上を走り、周囲に転がるゾンビの死体を目にする。
後ろに振り返って、ミーは燃え上がる敵を見ると、すぐに前を向いて、ふたたび駆け出した。
屋上からの援護射撃により、動く死体たちが居なくなった道路を、彼等は悠々と進んでいく。
だが、左側から新たな敵が現れたかと思うと、いきなり突撃してきて、急に爆発した。
「うわあっ!? いったい、何が起きたんだっ? てか、マルルン…………無事かっ!」
「ぐぅ! ショーン、急に何かが爆発したようだぞっ!」
運よく、爆発が遠くで起きた事で、ショーンとマルルン達は、体は無傷だった。
「まだまだ、来るわよっ! アレが爆発の原因だわっ!」
「速いっ! ですが、フレッシャーよりは襲いようですね」
「お前たち、まだ逃げてなかったのかっ! 援護するから、早くしろっ!」
「急がないと、殺られちゃうわよっ! 」
体中が、凸凹に膨らんだ醜い無数のゾンビ達が、ぎこちない動きで走ってくる。
衣服すら破れており、もはや原型を留めてない、この敵は、脈打つ黄色い
それを見て、リズは不気味に蠢く青筋に、顔を顰めつつも、奴等に火炎魔法を何度も射ち込む。
ジャーラも、氷結魔法で幾つもの
右側からは、オートマグナムを両手で握る緑色アリ人間のギドロが撃ちまくっている。
白髪黒人であるサーラは、鉄筋から雷撃魔法を放ち、雷の壁を構築する。
「グアアッ! グアアアアアアッ!」
「グアアーーーーーー!!」
「ギャアッ! ガギギ、ガギャーーーー!?」
「不味い…………こっちに来やがる」
「射ちまくるしかない」
「ああ、頭を狙うしかっ!」
マグナム弾を何発も撃たれた後、銃撃に耐えられなかったのか、自爆ゾンビは爆発した。
同じく、柵状の雷に突撃してきた奴も、高圧電流を浴びて、もがき苦しみながら弾けとんでしまう。
だが、残る一体だけは、ショーン達の方へと、真っ直ぐ突進してきた。
ワシントンとテアン達が、それぞれの射撃武器で、攻撃を加えた。
「不味いわっ! このままじゃっ!」
「任せて下さい」
「グオオッ! グオオッ! モ、モウ、ゲンカ…………イ、イヤ、マダ」
リズは、大火球により強烈な一撃を自爆ゾンビに叩き込んだ。
それでも、奴は燃えながら走るので、今度はジャーラが氷結魔法により、足元に冷凍ビームを射つ。
「グオオ~~~~!?」
「にゃあっ! ちかづくにゃっ!」
「後は、私が止めを刺すよっ!」
氷結魔法が決め手となり、自爆ゾンビは、足を地面から引き剥がせなくなった。
そこを狙って、ミーはギザギザ円盤を投げまくり、カーニャは紫ビームを放ち続けた。
「ガア~~~~!? ヤッパリ、ダ…………」
「ようやく、爆発したか? 危なかったな?」
「皆さん、撤退を続けましょうっ! さあ、私達は武器屋まで行かねば成りません」
「拳銃でも、アレは倒すのが難しいな」
ショーンは、爆散した自爆ゾンビの肉片を見ながら、直ぐに
サヤとゴードン達は、素早く撤退するために、一気に駆け出した。
その時、いきなり背後から周辺に、何回も乾いた銃声が轟いた。
「アッハッハ、邪魔なゾンビをやってくれるとはなっ!」
「これで、武器屋まで楽に行けるぜっ!」
「ぎゃあっ!」
「ああっ!?」
チンピラ達が、ショーン達を狙って、ピストルを発砲してきたのだ。
奴等は、何人かで現れて、中には短杖まで持って、魔法を射ってくる者も存在する。
連中の射撃により、緑色アリ人間ギドロは、右肩を負傷してしまう。
白髪黒人女性のサーラも、左足を射たれて、地面に転んでしまった。
「不味い、負傷者を助けるんだっ!」
「俺が援護するっ! 先に行けっ!」
「煙幕を使う、これで、何とかなるはずだ」
「負傷者は、私に任せな」
「助かるわ」
ショーンは、冷静さを保ちながら、仲間に叫び、ゴードンはピストルを乱射する。
スバスは、ターバンから煙幕弾を取り出して、周辺に転がしまくる。
負傷している白髪黒人女性サーラを、フリンカは担ぎ上げながら、悠々と走っていく。
だが、灰煙が充満する中、チンピラ達の拳銃弾や魔法が、無差別に発砲されまくる。
「隠れろっ! あの壁の後ろにまで行くんだっ!」
「肩を貸せ、武器屋まで連れてってやる」
「悪いな、兄弟…………」
ショーン達は、近くの道を右側に回り、弾丸が飛び交う中から抜け出した。
そこに、緑色アリ人間ギドロを連れた、ゴードンが、ピストルを乱射しながら現れた。
「どうする、ショーン? 私達は、無事に逃げられるかしら?」
「できるさっ! てか、やるしかないだろう?」
「ぎゃああっ!」
「ゾンビがっ! うわ~~!」
「アレだけ、派手な音を出してたら、そりゃ殺られるだろうなっ!!」
リズが不安そうに尋ねるが、ショーンは険しい顔をしながらも、彼女を落ち着かせようとした。
一方、灰煙の向こう側からは、チンピラ達が横から襲撃してきた、ゾンビ達に殺られているらしい。
その悲鳴と、低い唸り声が木霊する中、マルルンは自業自得だと思って呟いた。
また、爆発音や銃撃音が木霊しており、どうやら動く死者たちは、向こうに集まっているようだ。
「武器屋まで、何があっても戻るんだっ! チンピラもゾンビも、俺たちの撤退を阻むことはできないぜっ!」
とにかく、武器屋まで強行突破しようと、ショーンは、仲間たちを引き連れて走り出した。
ゾンビの叫び声と銃声が鳴り止まぬ中、彼等は前へと突き進んだ。