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第49話 朝になると


 ショーン達は、食糧配達を成功させて、ゴルバの武器屋で、一夜を過ごした。



「ふああ、朝か? リズ、いや…………まだ、寝かせておいてやるか」


 装甲トラック内で、目を覚ました、ショーンは隣で、座席に座ったまま眠るリズを起こそうとした。



「まあ、まだ出発の時間じゃないだろう? もし、そうなら、他の連中が来るはずだしな」


 そう一人言を呟きながら、ショーンは後部ドアを開けて、武器屋の前に出た。


 すると、店内から仲間たちが出てきて、面倒そうな顔をしながら状況を説明する。



「おい、ショーン、無線機で連絡したが? 沿岸警備隊からは武器を運べと言われたぞ? だから、迎えの装甲トラックを寄越すから、それと乗り換えたまま、建築現場に行けだと」


「それから、そのトラックだけれど、別チームが見つけたらしいにゃ? そして、増援部隊はチンピラの拠点の先にある十字路に来るらしいにゃ」


「今度は建築現場ね? 行けと言われたら、行くだけだが? はあ、じゃあ~~十字路に、もう一つの拠点を作るのか?」


 スバスとミー達から話を聞いて、ショーンは昨日の戦いで通って来た道を思い出す。



「おそらく、そうかも知れないな? 冒険者は、俺たち以外にも動いているしな? 他の連中も救助や食糧を集めに奔走中なんだ」


「んん~~じゃあ、行くしかないか? まあ、朝飯を食ったら移動だな? マルルン達にも会ったら伝えておこうな」


 両腕を組ながら話す、スバスに対して、ショーンは首を傾げながら呟く。


 その後、彼等は朝食を済ませて、全員で装甲トラックに乗り込み、すぐに出発しようとした。



「よし、行くとしますかっ!」


 ショーンは、後部から車内に乗り込み、両ドアを閉めようとした。



「まちな? お前たち、昨日の礼に武器を強化してやろう」


「昨日は、慌ただしかったから、出来なかったからね」


「なんだ? そりゃあ~~有りがたいんだが?」


 昨日、オートマグナムを連射していた、緑色アリ人間ギドロが、急に話しかけてきた。


 同じく、爆竹を投げていた、白髪の黒人であるサーラは、工具運を右手に歩いてきた。



 いきなり、後ろから声を掛けられて、ショーンは少し驚いてしまった。



「そう言えば、お互いに助けあったな? で、どんな風に武器を改造してくれるんだ?」


「まあ、それぞれの使う武器にもよるな? 注文が有れば、設計図の通りに作ってやるぜ」


「他にも、余っている武器やアクセサリーが有るからね? 少し見せて貰えたら、装備を強化できるわ」


 ショーンは、二人と共闘して、マルルンチームを助けた事を思い出す。


 彼の脳裏には、自爆ゾンビと戦った時に、二人が活躍した姿が浮かんだ。



 ギドロは、設計図のカタログを手渡しながら、左手で、店内を親指で指差す。


 手招きしながら、サーラは早速武器を強化するため、二人を作業場所まで誘う。



「分かった…………設計図を見せて貰おうか? まあ、実物は出来てから確かめなきゃ、分からんが?」


「私のも、お願いするわね? あと、みんな? そう言う訳だから、来てちょうだい」


「武器の改造かにゃ?」


「どんな物があるんだ? どうやって、改造するんだ?」


 ショーンとリズ達は、装甲トラックに乗っている仲間たちを呼ぶ。


 すると、ミーとゴードン達が後部から飛び降りながら出てきた。



「こっちに来てくれ、店の奥だ」


「さあ、早くきてね」


 こうして、ギドロとサーラ達による武器改造が、店内の作業所で、行われる事となった。



「出来たわ、これで、ゾンビも簡単に倒せるわよ」


「よし、射撃武器の強化は終わったぞ」


「これは…………何か、ヤバそうな匂いがするぞ? 色から判断するに薬物なのか?」


「私のも、かなり危険に仕上がっているねぇ~~触ったら、すぐに死んじゃいそうだよっ!」


「銃本体ではなく、弾丸の方を用意して貰ったが、本当に眠るのか?」


「この瓶の中身が、ゾンビの血液なのか? 矢とナイフに塗る時に気をつけよう…………迂闊に触れられないからな?」


 ギドロとサーラ達による武器改造は終わったが、それを見た、二人は異様な雰囲気を感じた。



 ショーンは、紫色をした自身のショートソードから発せられる香りを嗅ぎながら呟く。


 フリンカも、ロングソードの緑色に染まった、刀身を眺めながら、強烈な臭気を感じた。



 ピストルの弾倉に込められた弾丸を見ながら、ゴードンは怪訝な顔を見せる。


 赤黒い血液が入った、小瓶を幾つか受け取った、ワシントンは興味深そうに眺める。



「その通りよっ! ショートソードには、襲撃してきたチンピラやゾンビ達が持っていた悪い薬を塗ってやったわっ! 効果はカタログ通りに、気分をハイにさせつつ、混乱を与えて、味方同士で戦わせられるっ! これは、トリップソードって名前ね? あと、予備の薬を瓶に入れてるけど、吸うのは止めなよ?」


「それは、弾頭後部に超強力な睡眠薬を、蝋燭ろうそくで固めて、栓をした物を仕込んであるわけだっ! 薬莢から飛び出たあと、相手の体内で溶けて、暫くしたら眠ってしまうぜっ! コイツは、スリープ弾って言おうっ!」


「成るほどな~~薬で、混乱させるのか? てか、吸わね~~よっ!」


「睡眠薬を、そんな方法で仕込むとはな?」


 サーラの話を聞いて、ショーンは、武器に付与された効果に納得する。


 ギドロから説明された弾薬の効能に、ゴードンはスパイ映画に出てくる秘密道具みたいだと思った。



「こっちのロングソードは、ポイズンソードに改造したわ? ゾンビすら殺してしまうほど、強力な猛毒を塗ってあるわ…………これも、前に店を襲撃してきた、チンピラが持っていた物なの? もちろん、人間も触れただけで死んじゃうわよ? 念のため、解毒剤の作り方をメモした紙と、薬その物を渡しておくわね? あと、剣に塗る予備の毒瓶もっ!」


「ほえ~~? じゃ、扱いは慎重にしなくちゃね」


「その小瓶の血液は、ゾンビから採取する時に固まっていたから、お湯で薄めてある? だから、効果は直ぐには出ないだろう…………しかし、確かに慎重に使わねば、自分がゾンビ化してしまうからな? これを矢に塗っている時は気をつけるんだぞ」


「やはり、そうか? 危険な代物だが、対人戦では優位に戦えるな、チンピラ達に撃てば、混乱させられるだろう」


 サーラから聞かされた、ポイズンソードの威力を聞いて、フリンカは驚きながらも両手で握る。


 ギドロから手渡された、苺ジャム用の小瓶を眺めながら、ワシントンは粒やいた。



「この首飾りの勾玉は? 綺麗だけれどにゃあ? 棍にも、グルグル模様の緑色の線があるにゃ?」


「黒い奇妙な指輪だね? 私のマチェットも、赤と青にしてあるし?」


「クロスボウには、モーターを取り付けたのか? これで、電撃でも放てるのか?」


「これは、青白い瓶だな? 中身は氷結魔法で、精製した、科学ガスか?」


 ミーとカーニャ達は、それぞれ装身具と白兵専用武器を受け取り、じっと見つめる。


 モーターを見て、テアンは重そうだと思い、三個ある瓶を手に持って、スバスは重量を確かめる。



「そのネックレスの勾玉&棍には、風の魔法効果が付与されているわ…………これで、スピードやジャンプ力が上がるし、打撃の威力も同じく上がってるし、相手を衝撃で怯ませられるっ! これは、風打棍と呼びましょう」


「風打棍…………うわっ! 確かに、これは凄いにゃっ!?」


「少し重く成っただろうが、その代わり、下部に装着した、モーターから矢に電力を付与できる? つまり、サンダー・ボルトが発射できる訳だ」


「電撃か? かなり矢の威力が上がった訳だな」


 サーラの話を聞きながら、ミーは風打棍を突き出すと、ブワッと風圧の音が鳴った。


 ギドロに手渡された、クロスボウを構えて、テアンは天井を狙ってみた。



「魔道具の黒い指輪に関しては、魔法の威力と発射速度アップッ! 赤と青は、それぞれ武器の効果を表しているのさっ? ファイア・マチェット、アイス・マチェットって、具合にねっ!」


「フフッ! これなら、派手に暴れられるわねっ! 私に、ピッタリな武器だわっ!」


「そうだ? 投擲武器を頼まれたから、現時点で作れるのは、これだけだったからな? デモ隊がストライキ中に、よく使っているだろう? これで、敵を凍結させられるのは知ってるな」


「もちろん知ってる、三個しかないが、いざと言う時に使うなら、充分な数だな」


 自信満々に語る、サーラの前で、カーニャは子供みたいに喜ぶ。


 ギドロが手渡しながら、使い方を教えると、スバスは直ぐに、ターバンの中に入れてしまった。



「私のは、薙刀の刃元に赤い紅玉の数珠じゅずが巻き付けられていますね?」


「バトルフックが水色に塗装されているし、この氷型のピアスは?」


「この黄色い刃は、電撃の効果があるのか?」


「ルビーのブローチ? これは、火炎魔法の効果を増幅させるのね?」


 サヤは、薙刀を両手で抱えながら、新たに取り付けられた装飾を見つめる。


 新しくなった、バトルフックを眺めつつ、ジャーラは氷型ピアスを、両耳に装着する。



「火炎薙刀よっ! 魔法道具により、炎を付与して、刀身から炎を吹き出せるようにしたわ、さっきのマチェットより、噴出する勢いは凄いわよ」


「つまり、炎と斬撃を組み合わせて、戦えるのですね」


「バトルフックから、アイスフックに改造してあるっ! そのピアスは、マジックワンドから発せられる氷結魔法の威力を増大させられるんだ」


「氷結魔法を付与した上に、両方の武器を威力増大させたと…………」


 笑顔で話す、サーラに対して、サヤは真剣な表情で腕を組みながら、火炎薙刀を手に取る。


 ピアスを両耳に装着しながら、アイスフックを握りしめる、ジャーラ。



「黄色い刃は、ボタンを押せば、サンダーブレードとして使えるわっ! これは、スパタだから、サンダースパタねっ!」


「サンダースパタ、雷の効果で、スタンガンみたいに、敵を痺れさせる訳かっ!」


「そのブローチは、火炎魔法の威力アップ&魔力量を増やせる高い効果があるっ! つまり、より強力な技が繰り出せるんだっ!」


「流石に、ここでは試し射ちできないから、後で外に出てからにしようかしら? いや、ゾンビを呼ぶからダメね…………」


 サンダースパタのボタンを押して、電流を発生させるサーラに、マルルンは驚いた。


 ルビーブローチの効果を、ギドロが話すと、リズは早速魔法を射ちに行きたくなった。


 こうして、ショーン達の使う武器は強化されて、より戦闘では、派手に活躍できるように成った。

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