目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第63話 いよいよ、アジア人街へ


 ショーン達を乗せた、装甲トラックは悠々と、道路を走っていく。


 こうして、彼等は何の苦もなく、目的地へと無事に進む事ができていた。



「あ、あらら? これは、通れないな?」


「瓦礫の山が…………これは、なんだにゃあ?」


「いったい、どうしたんだいっ?」


「急に停めて? 敵でも居たのか? 弓の出番か?」


 ショーンは、いきなり目の前に現れた、障害物を見て、装甲トラックを停車させた。


 瓦礫の山と、ミーは口にするが、それだけではなく、道路には穴もある。



「いや、ここ先は車じゃあ、移動できなくてな」


 ショーンは左右を見渡して、右側にある中世風の建物を目にする。


 それは、三階建てであり、一階は車庫になっており、車は停車してなかった。



「ふぅ~~? 仕方ないな? あの建物に装甲トラックは隠しておく、チンピラ達に盗まれるかも知れないからな」


「そうしようにゃ? ここから先は、徒歩で移動するしかないにゃあ?」


「みんな、徒歩だって、荷物は~~無いわよね?」


「荷物は、背中の予備ボルトだけしか、無いぜ?」


 ショーンは、装甲トラックをバックで慎重に、車庫に入れていく。


 そして、停車すると、ミーはドアを開いて、外に出ながら辺りを警戒する。



 仲間たちに、ここから歩いていくと伝えながら、リズは後部ドアを開いて、すぐに降車する。


 さらに、テアンも右手で、クロスボウを抱えながら路上に出てきた。



「ここから先は、歩くしかない? 警戒しながら行くぞ」


「みんな、俺達が先に行くっ! 着いてきてくれよ」


「行くしか無いわよね、足元を気を付けないとっ!」


「敵の狙撃や奇襲にも、気をつけて行かないと、成りませんね」


 徒歩で歩く、ショーンとマルルン達は、瓦礫の山や穴ボコを超えて、向こう側へと進む。


 二人の後に続き、リズとジャーラ達も壊れた路上を通って、周辺を警戒しながら着いていく。



「たくっ! こっちはゾンビが居ないんじゃ無かったのか?」


「恐らくだが、ゾンビ達が居ない代わりに、チンピラ達が多いのかも知れない? 薬莢や魔法を放った後が見える」


「魔法だけでなく、これは爆弾やダイナマイトを使った後に見える? やはり、チンピラ達が戦っていたんだな」


「勘弁して欲しいもんだねぇ~~? ゾンビが居ない代わりに、チンピラだなんて? 戦いは面倒だから、できれば避けたいのに」


「そうだにゃあ? と言うか、ここは戦争でも有ったのかにゃ? いくら何でも凄い光景だにゃ…………」


 ショーンは愚痴りながらも、道路を進んでいくと、交差点を目にする。


 そこから先は、建物が中世風から中華風になっており、街並みには、赤い色合いが目立つ。



 路上に散らばる金色の薬莢に、ワシントンは目を向けて、地面に生えた氷柱つららも発見する。


 スバスも、えぐられた道路を眺めながら、爆発物が投げられたのだろうと、しゃがみながら推測する。



 両手を振りながら、フリンカは自信満々な態度と余裕の笑みを浮かべて歩く。


 対する、ミーは周辺に多数存在する爆発跡を凝視ぎょうししながら、昨日の戦闘を考察する。



「アジア人街は、安全なんだろうが? だからこそ、チンピラ達は街の物資を狙っているのかも知れないっ! スパタを抜いておこう」


「だとしたら、厄介な話だね? どの道、邪魔をするなら私のマチェットに斬られるだけなんだけどさ」


「ああ、戦闘に備えて、マガジンの中身を確認しなければな」


「私も薙刀を振るう準備をして、何時なんどきでも戦えるようにっ!!」


 マルルンは、仲間を率いながら、先頭に立って、腰から剣を抜くと、ドンドン歩いていく。


 赤と青のマチェットを懐から、取り出しながら、カーニャは獲物が出現しないかと、微笑む。



 ピストルを手に取り、ゴードンは安全装置を切り替えたり、弾が装填されているかと確認をする。


 薙刀を思いっきり振るい、サヤは敵が出てきたら、即座に叩き斬る積もりでいた。



「ん? 不味い、撃ち合いだっ! 隠れろ」


「ヤバいわっ! これなら、マチェットじゃなくて、魔法を射つ準備をしなくちゃっ!」


「不味い、ここは拳銃の射程距離じゃない」


「海トカゲ団と、チンピラ達が戦っているな? こりゃ、流れ弾が来るかも知れない」


「火炎魔法なら、何時でも射てるわよ」


「俺の狙撃技術でなら、あそこまで…………」


 ショーンは、遠くから聞こえた銃声に、いち早く反応して、交差点の向こう側に走る。


 そこで、何人かの仲間たちとともに、右側にある赤い壁へと身を隠す。



 マチェットを、二刀流で構えていた、カーニャは懐にしまうと、曲がり角から敵の様子を探る。


 ゴードンは、拳銃を両手で握りしめ、隙を見て射撃しようと身構える。



 マルルンは、右側にある緑色の建物に隠れて、地面に伏せて、望遠鏡を覗く。



 マジックロッドを、両腕に抱き締めながら、リズは応戦しようと、険しい顔になる。


 背中の矢筒から、矢を取り出しながら狩猟弓を、ワシントンは構える。



「うわっ! トラックが、こっちに向かってくるっ!」


「みんな、アレから速く離れるんだよっ!」


「不味い、退散だっ!」


「もう、間に合いません、地面に伏せて下さいっ!!」


 燃えるトラックが、真っ直ぐ向かってくるのを、ショーンは目撃する。


 フリンカは、咄嗟に走りだし、急いで交差点から離れていく。



 即座に立ち上がった、マルルンは直ぐさま、道路から逃げ出した。


 建物の裏で、ジャーラは地面に身を伏せて、両手で頭を覆って、目をつむった。



 そして、炎上する巨大な撤回が、道路で倒れながら突っ込んできた。



「うわあああああーー」


「きゃああ~~~~」


「にゃあーーーーーー!?」


「ぐああああああああ」


 ショーンとリズ達は、横転するトラックの轟音に悲鳴を上げまくる。


 マルルンとミー達も、絶叫しながら、地面に伏せたまま恐怖で身動きが取れない。



「止まったか?」


「いや、まだだよっ!」


「な、なんだっ! クロス…………ぐわっ!」


「まだ、狙ってきますわ」


 ショーンは、燃え盛るトラックを見て、助かったと思って、胸を撫で下ろした。


 だが、遠くから花火を打ち上げたような音を聞いて、フリンカは叫ぶ。



 すぐさま、クロスボウを構えて立ち上がるテアンだったが、背後の爆発で、吹き飛ばされてしまう。


 ジャーラは、遠くから巨大な火球が迫っているのを目にすると、再び逃げ出した。



「ぐふっ! 危うく死ぬ所だったぜ、みんな、大丈夫か?」


「私は無事ですっ! 今のは、魔ロケットランチャーと火炎魔法で、トラックを破壊したんですね」


「参ったな? 向こう側と遮断されちまったぜ、この炎じゃあなーー」


「火傷を負ってる者は? 全員、体は大丈夫なんだな?」


「アタタ…………無事だけど、今のは死ぬかも知れなかったわ」


「こちらも、体はピンピンしてますっ! ただ、恐ろしかったです」


 ショーンは燃え盛るトラックを見ながら、後ろに振り向いて、仲間たちに声をかけた。


 だが、そこに居たのは、何時も自分が率いる仲間たちでは無かった。



 一部始終を、ジャーラは目にしていたので、それを驚きを隠しながら冷静に話す。


 テアンは、立ち上がると同時に呟き、クロスボウを拾うために背中を丸める。



 ピストルを右手に握りながら、ゴードンは医者として、仲間たちの様子を気にした。


 カーニャとサヤ達も、火の粉を散らす車体を眺めながら立ち上がった。



「マルルンのチームか? マルルン、そっちは無事かっ!? こっちは全員が無事だぞっ!!」


「マルルン、生きていますかっ!」


「ショーン、こっちも全員無事だっ!! ジャーラ、生きてるぜっ!!」


「心配は要らないわ、みんな軽症よっ!」


 ショーンとリズ達は、向こう側で同じように立ち上がったばかりの仲間たちに声をかけた。


 マルルンとリズ達も、どうやら無事だったらしく、元気な声で答えた。



「合流は? …………今は無理だな? この先で、戦闘が続いているっ! 互いに迂回しながら、向こうに回って、合流しよう」


「それは分かったぜっ! それじゃあ、合流するまで、そっちも死なないように気をつけてくれなっ!」


 ショーンは銃撃戦で、弾丸や魔法が飛び交う音を聞いて、さらに燃えるトラックを見た。


 マルルンも、炎に遮断された交差点を眺めたり、戦闘音を聞いて、別な道を探そうと考えた。



 こうして、二人のリーダー達は、仕方なく戦闘地域から離れながら、アジア人街を目指す事にした。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?