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第64話 アジア人街の端にまで来たらしい?


 ショーンとマルルン達は、道路で燃え盛るトラックにより、合流出来なくなった。


 これにより、それぞれ左右から別の道を通って、アジア人街を目指す事にした。



「しまったな? みんな、取り敢えず、俺が先導するから、着いてきてくれるか? 文句はあるなら、今言ってくれて構わない」


「いや、文句はないな? リーダー役は、マルルンに任せていたから、お前でも別に構わないぞっ! それより、拳銃で援護射撃してやる」


「私たちは、魔法で貴方をサポートしますっ! ショーン、リーダーは任せましたよ」


 何時もと違うメンバーに対して、ショーンは自分が指揮を取ると言って、前へと歩きだす。


 そんな彼の左側に回り、ゴードンはピストルを構えながら、警戒しつつ着いていく。



 アイスバールを手に取り、敵の奇襲に備えながら、ジャーラは右側を進んた。


 こうして、彼等は交差点を左に曲がり、アジア人街へと向かっていった。



「ここは、アジア人街の端の方だな? こっちは余り来た事がないが…………」


「ここは住宅街だな? 海辺に面した商店街は、安全だと言うなら、まだ活気は有るはずだ」


「そうだと嬉しいです、私もアジア人街に知り合いが避難しているかも知れませんから」


「まあ、行ってみたら分かるさっ! とにかく、歩こうじゃないかっ!」


 ショーン達は、アジア人街に存在すると言う、安全区域への雑踏を慎重に進んでいる。


 色とりどりの看板が目を引く中、スパイスや唐辛子など、異国を思わせる香りが漂ってくる。



 アジア人である、テアンは、クロスボウを構えて、背後を見張りながら歩く。


 その左右を固める、サヤとカーニャ達は、互いに背中を預けて、建物に注意を向けている。



「さっきまでは、戦闘音が五月蝿うるさかったが、妙に静かだな?」


「気のせいです…………と言いたいんですけど、殺気を感じますっ! どうやら、薙刀を振るわねば成らんようですね」


「私も魔法を、射ってやるさっ!!」


 ショーンは先頭を歩きながら、誰かに見張られているような雰囲気を感じ取る。


 赤い建物の窓や屋上に、まるで何者かが隠れているような気がして成らない。



 それは、サヤも何となくだが、肌で察知しており、薙刀を握る両掌に力が籠る。


 カーニャは周囲を囲む建物の窓に、両手を向けて、瞬時に魔法を放てるように身構える。



「不味い、囲まれているな…………」


「バレてたか」


「へへっ!」


 ショーン達には、そこら中から、静かに不穏な影が忍び寄っていた。


 チンピラ達が、路地の奥や建物から、密かに彼等を見つめていたからだ。



 連中は、既に包囲を完了しており、ぞろぞろと複数人で道路に登場した。


 屋根や屋上から、飛び降りたり、窓や玄関等を開けて、飛び出てくる。




「おい、そこの連中、女を差し出せっ!」


 一人の黒人マッチョが叫び、鋭いナイフを片手に突っ込んできた。


 ショーンは、瞬時に状況を把握して、仲間たちに目配せすると、即座に動いた。



「殺られるかよっ! こっちだって、もう何年も冒険者をやってるんだからなっ!」


「ぐわっ! ぐぶっ!」


「このっ! ごばああああっ!」


 心臓が高鳴る中、ショーンは迫る、黒人マッチョの腹を蹴り上げる。


 そして、体勢を崩した所を狙って、ショートソードで胸を突き刺す。


 もう一人、シロアリ人間が、スモールソードを振るったが、それを彼は後ろに飛んで回避する。


 と同時に、一気に前へとジャンプして、反撃に袈裟斬りを喰らわせる。



「この野郎っ! 大人しくしなっ!? ぐばあ?」


「やっちまえ、遠距離から攻撃だっ! げば…………」


「させるかよ、間抜け」


「私の魔法の方が、速いってのっ!!」


 白人のチンピラは、窓に身を隠しながら、弓を構えていたが、テアンによって射たれてしまう。


 散弾銃を抱えた、アジア人のチンピラは、屋根に上がったが、カーニャにより紫ビームで殺られる。



「こうなりゃ、接近戦だっ!」


「来れでも喰らえっ!」


「やっちまえ、奴らは数人だっ!」


「魔法を喰らえっ!」


 ゴルフクラブを片手に、青肌インキュバスのチンピラは襲いかかってきた。


 それに合わせて、蜘蛛人間のチンピラは、スローイングナイフを幾つも投げてきた。



 痩せこけた、黒人のチンピラは、鉄パイプを片手に、一直線に突撃してくる。


 太った、白人のチンピラは、ウォーハンマーを振り回しながら走ってきた。



「ヤバい、周りから一斉に来やがったっ! ぐっ! このっ! 止めだっ!」


「喰らえ、ぐぅっ! うおっ!」


 ショーンは、アラブ人チンピラの突き出した、レイピアをバックラーで受け止める。


 その反撃で、トリップソードを振るうが、敵も刃で斬撃を受け流す。



 しかし、最後は再び、素早く動いて、敵の頭を袈裟斬りにした。



「心配しないで下さい」


「うわっ! 来るなっ! 来るなっ! ぐえっ!」


「俺達だって、強いんだからなっ!」


「頭を叩き割ってやるぜ」


 スローイングナイフを、薙刀の刃で弾きながら、サヤは蜘蛛人間へと、一気にジャンプした。


 次いで、距離を詰めたあと、頭上から一撃を振り下ろして、敵の体を真っ二つに切り裂く。



 テアンは、クロスボウを手放し、腰からサイを取り出しながら、ゴルフクラブの殴打を避ける。


 そして、青肌インキュバスの腹を刺し、両手で押さえた所で、頭を何度も叩きまくった。



「これで終わりだっ!」


「いや、俺トロール族だし…………」


「行くぜっ!」


「これくらい、簡単に避けられますよっ?」


 痩せこけた、黒人チンピラは、鉄パイプを、ゴードンの顔面に叩きつけた。


 それを喰らった当人は、平気な顔で、相手の胸ぐらを掴んで投げ飛ばすと、壁に衝突した。



 太った、白人のチンピラは、ウォーハンマーを横凪に振るったが、ジャーラは頭を下げて回避する。


 そして、奴がバランスを崩した所を狙って、アイスバールの尖った部分を、喉に突き刺した。



「に、逃げろっ!!」


「退け、退かないなら、斬るぞ」


「邪魔だああああっ!」


「死ねえっ!」


 茶アリ人間のチンピラは、一目散に逃げ出し、戦場から離れようとする。


 それに続いて、グールのチンピラは滅茶苦茶に、ロングナイフを振るいながら逃走する。



 ツルハシを両手で握る、白人のチンピラは、頭上に掲げながら疾走していく。


 赤いリザードマンのチンピラは、手裏剣を何枚か適当に投げながら、踵を返して走った。



「逃がしはしない、もし仲間が存在して、お前たちが増援に連れてきたら厄介だからな」


「く、くるなら殺るまでだっ!! ぐああ…………」


「死ねえ~~!? ぎゃああああっ!?」


「やってられるかっ!」


「助けてーーーー!!」


 ショーンは逃げる敵を追って、正面に回り込むと、トリップソードを振るった。



 グールのチンピラは、邪魔な彼を目掛けて、ロングナイフで斬りかかるが、逆に首を跳ねられた。


 ツルハシを握る、白人のチンピラは、突進しながら両手を頭上に掲げたが、胸を一突きされる。



 茶アリ人間のチンピラは、攻撃はせずに逃げ切ろうと走り続ける。


 赤いリザードマンのチンピラは、手裏剣を落としながら、とにかく道路を駆けてゆく。



「あっ! 待ちやがれっ!」


 ショーンから距離を取り、左右から抜けていった連中は、そのまま逃走していく。



「逃がさないわよ」


「後ろは狙いやすいんだっ!」


「ぎゃああーーーー!!」


「ぐ、うう…………」


 カーニャは、右手から暗黒球を放ち、茶アリ人間のチンピラは、胸部に円い穴を開けられた。


 テアンは、クロスボウから、サンダーボルトを発射して、赤いリザードマンのチンピラは倒れる。



「勝ったな? しかし、まさか、チンピラが出るとは」


「やはり、ゾンビが一掃された分、安全圏や食糧を求めて、チンピラ達が移動してきているのでしょう」


 ショーンは、倒れている赤いリザードマンの死体を見下ろしながら蹴る。


 ジャーラも、周囲を警戒して、残敵が残ってないか、険しい表情を浮かべながら呟く。



 こうして、彼等は全員無事に、チンピラ達に勝利する事ができた。


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