目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第65話 アジア人街の奥に


 ショーン達は、全員無事に、怪我を負うことなく、チンピラ達に勝利した。



「この様子だと、武器屋の方から、チンピラ達が移動してきていると思われます」


「参ったな? それじゃあ~~まだ、他にも潜伏しているかも知れないな」


 ジャーラは、武器屋のある南方に険しい顔を向けて、冷静な口調で呟く。


 散乱する死体を見ながら、ショーンは呟き、アジア人街の奥を眺めた。



「まあ、とにかく、前に進もうや? このまま、ここに居ても仕方ないしな」


「そうですね、先を急ぎましょう」


 ショーンは、仲間達を率いて、アジア人街の安全区域を目指すべく、歩きだした。


 ジャーラも、同様に敵が戦闘音を聞き付けて、集まってくる前に、早々に移動を開始した。



 他の仲間たちも、本来ならば、武器や道具を回収してから動くが、それよりも歩く事を優先した。


 こうして、彼等は赤やオレンジ色のエキゾチックな歓楽街を進んでいく。



「はあ、安全区域までは、まだ掛かりそうだな? この辺りは来た事があるから、だいたい分かるんだが、人気は無いし?」


「きっと、さらに奥に安全区域があるのでしょう? そこに行けば、また、マルルン達とは合流できますよ」


「だと良いけど~~? しかし、腹が減ったわね~~? 私は、カレーが食べたいわ」


「カーニャ、呑気だな? 俺もグリーンカレーが食いたいが、その前に…………」


 観光地として、かつては大勢の人間で、賑わいを見せていた街中を歩きながら、ショーンは呟く。


 静まり返った町並みに、ジャーラは尖った褐色の耳を澄ましながら異変を感じ取ろうと集中する。



 カーニャは、お腹を擦りながら、少し背中を丸めつつ、のろりと進んでいく。


 そんな中、小さな教会がT字路の先に見えて来ると、テアンはクロスボウを構えた。



「う…………」


「仕留めたっ! あそこに、ライフルを持っていた奴が隠れていた」


「凄いな、俺の目には見えなかったぞ」


「私も、視力は良いんですけどね?」


 教会の鐘楼塔にある窓には、ヒラヒラとカーテンが揺れていたが、テアンは未だに睨んでいる。


 サンダーボルトが、放たれる様を見ていた、ショーンは驚いたまま呟く。



 目をぱちくりさせて、ジャーラは突っ立っていたが、やがて彼女は前に進みだした。


 一行は、敵の存在を確認してから、一気に緊張感を高めて、T字路に向かっていく。



「おい? さっき、妙な音が聞こえなかったか?」


「さあ、気のせいだろ」


「誰か来たかっ?」


「いやいや、誰か来ると思うか? 海が近いから潮風が吹いただけだと思うぜ」


 薄暗い路地裏では、チンピラたちが集まる場所があり、そこから連中の会話が聞こえてくる。


 二人の手には、ピストルや散弾銃などが握られており、鈍く光って、威圧感を放っている。



 店内でも、魔法武器を持つ、何人ものチンピラ達が、ちらほら見える。


 魔力を宿した錫杖錫杖指揮棒タクトが、連中の存在を一層際立たせる。



「不味いな、この先はチンピラ達が待ち構えている」


「不用意に進めば、左右から挟撃されてしまいますね」


 教会に行くまでは、左右の路地や小さなレストランに配置された見張りに気をつけねば成らない。


 もちろん、格闘武器も忘れては成らず、それらにも、ショーンとジャーラ達は警戒する。



 ロングナイフや釘バット、さらには自作の即製武器などが、連中の手に確りと握られている。


 二人は、離れた位置から日陰や壁裏に隠れて、敵を観察しながら待機する。



「これでは、音は出せないな? 静かに殺るぞ」


「なら、狙撃支援は任せろ」


「医者だからな、首の骨なら簡単に折れる」


「私の薙刀は、背後からなら敵を、一突きでたおせますっ!」


 ショーンは、右側にあるレストラン内の白人チンピラを背後から頭を掴んで、喉を切り裂く。


 その背後に控えて、テアンは敵に対して、クロスボウを射てるように待機する。



 筋骨粒々なゴードンの両腕は、黒人チンピラへと伸ばされ、細首を音も成らさずに、へし折る。


 サヤが突き出した、火炎薙刀により、背中から白人チンピラの腹を真っ赤な刃が突き破る。



「左側の路地は? どうなっている?」


「気がついてませんね? 私は、氷結魔法を射てるように待機しますよ」


「俺も、ここから敵を警戒する」


 レストランの奥に向かい、カウンターに飛び込んだ、ショーンは直ぐ様、チンピラ達を探す。


 ジャーラとテアン達は、反対側の路地を見張り、物陰から武器を構えていた。



「カーニャは何処いった?」


「彼女なら、あそこです…………」


「ぐわっ!」


「な、ぎゃっ!」


「ぐえっ!?の」


 ショーンが、目をキョロキョロと動かしていると、ジャーラが向かい側の路地を指差した。


 そこでは、カーニャが椅子に座っていた、三人のチンピラ達を、一気に切り殺す姿が見えた。



「いっちょ、上がり~~」


「ヤバいな? 一人で、一気に殺しちまうとは」


 カウンターの影から、頭だけを出して、路地でマチェットを振るうカーニャを、ショーンは眺める。


 一人目は、頭を真っ二つにされて、テーブルに突っ伏してしまった。



 二人目と三人目のチンピラ達は、叫ぼうとするが、首を跳ねられてしまった。


 こうして、一人勝手に行動しながらも、敵を殲滅した彼女を見て、他の仲間たちは安堵した。



「おいっ? お前らああ? 飯の時間だぞおおっ? おっ!?」


「しまった…………見つかったかっ!?」


 その時、レストランでは、ドアを開いて、厨房から黄色いスケルトンが出てきた。


 次いで、奴は直ぐさま、リボルバーを射とうとして、右手を上げる。



「死ねっ!」


「ふっ!」


 リボルバーの引き金を引く前に、黄色いスケルトンは銃口を、素早くショーンに向ける。


 それを見て、まだ敵が残っていたのかと思った彼は、すぐに奴を狙って斬りかかる。



「喰らえ」


「ぐ、このっ! ぐあああっ!?」


「なんだ、今の声はっ!?」


「銃声も聞こえたぞっ!」


 ショーンが放った一撃は、黄色いスケルトンのチンピラに、見事な袈裟斬りを喰らわせた。


 しかし、その瞬間に奴は、リボルバーを発砲してしまい、しかも大きな悲鳴を上げてしまった。



 それにより、周囲に散らばるチンピラ達は、侵入者たちに気がついた。


 こうして、教会や路地を通って、敵がワラワラと蟻のように飛び出してくる。



「居たぞっ! アイツ等だっ!」


「撃ち殺せっ!」


「このやろうっ! 殴り殺してやるっ!」


「切り刻みまくるぜぇ~~!!」


 アサルトライフルを持った、金髪リーゼントの黒人チンピラは、ショーン達に銃弾を連射する。


 黒髪アフロヘアの白人チンピラは、ピストルを乱射して、レストランを攻撃して窓を壊しまくった。



 二人が、教会の前から、制圧射撃をしている間に、増援が続々と登場する。



 白髪オールバックのアジア人チンピラは、手斧を握って、狭い路地を走ってくる。


 メイスを両手に、人食い花のチンピラも、根っこを素早く動かして、疾走してきた。



「うわっ! 撃ってきたぞっ!? みんな、頭を下げろっ!」


「大丈夫だ、めちゃくちゃに撃っているだけだ、心配するな…………」


「魔法なら、射ち返せますし」


「ぐぅぅ? これは、私には部が悪いですね」


「とにかく、撃ち返せっ! 奴等を近寄らせるなっ!」


 飛んでくる銃弾や火の玉を見て、ショーンは身動きせず、カウンター裏から叫ぶ。


 テアンは、割れた窓の下から様子を伺いながら、反撃できる機会を待っている。


 ジャーラも、マジックワンドだけを両手で頭上に掲げ、倒した丸テーブルから、氷柱つららを乱発する。



 床に伏せたまま、サヤは火炎薙刀を握りしめて、敵の攻撃を耐えていた。


 対する、ゴードンは時おり、窓からピストルを乱射して、連中が近付いて来ないようにする。



「私を真っ向から、殺ろうってのかい?」


「ひぎゃっ!?」


 カーニャに、勝負を挑んだ、アジア人のチンピラは、口をアイス・マチェットで斬られてしまう。


 奴は、そのまま鼻まで凍らされて、息が出来なくなり、地面に倒れてかは顔を真っ青にさせる。



「はっ! そんなんじゃ、私は殺せないねっ?」


「このおっ! うわああああーー」


 人食い花のチンピラは、メイスを振り回したが、それをカーニャは軽く避けてしまう。


 そして、打撃に臆せず、ファイア・マチェットで、奴の腕を斬ると、たちまち体が燃えだした。



 こうして、路地裏の戦いは終わったが、まだまだ、レストランには銃弾と魔法が放たれていた。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?