アジア人街の片隅では、延々と繰り広げられる抗争が、未だに終わる気配がない。
何故なら、これはただの戦闘ではなく、物資を巡る争奪戦だからだ。
その象徴である、銃弾は途切れなく撃たれ続け、時おり、火炎魔法や風刃魔法も飛んでいく。
これにより、ショーン達は応戦するだけで、手一杯であり、チンピラ達にずっと押されていた。
「ぐぅ? これでは、何も出来ない…………済まん、俺が敵を暗殺できなかったばっかりに」
「謝る必要は、有りませんよっ! 今、防弾氷壁を作りますねっ!」
「あっ! 奴ら、俺達の攻撃を防御する気だぞっ!」
「そうなる前に、やっちまえっ!」
ショーンが、カウンター裏から謝罪する中、レストランの窓に、ジャーラは氷壁を作成する。
これにより、外からの射撃は遮断されて、チンピラ達が放つ、銃弾や風圧を受けずに住む。
「おっと、こっちにも敵が居るんだよっ! 馬鹿タレどもがっ! それ、それっ!」
「氷を壊せっ! う…………」
「あっちからもっ! ぐわっ!」
路地から飛び出てきた、カーニャは両を前に出して、魔法を敵に浴びせまくる。
右手と左手から、暗黒球と紫ビームを交互に射ちまくり、チンピラ達は路上に倒れてゆく。
褐色肌のサンドエルフは、脇腹を右側から射たれてしまい、
ライオン頭のチンピラは、アサルトライフルを撃ち続けながら、地面に両膝を突く。
「アイツも撃ち殺せっ!」
「向こうにも、火力集中だっ!」
「おっと、危ないねーー」
チンピラ達の目には、冷酷さと殺意が宿り、カーニャも標的にした射撃が浴びせられる。
「サヤ、こっちに来られるかっ! 」
「はい、行けますよ」
向こうに気が向いた瞬間、ショーンは、カウンター越しに、サヤを呼び寄せる。
「俺達は、裏口から回るっ! 背後を突けば、白兵戦に連中は対応できないだろう」
「なるほど、奇襲ですか、ならばともに参りましょう」
そう言いながら、腹這いになって、ショーンとサヤ達は、厨房へと向かう。
黄色いスケルトンのチンピラが死体と化して、倒れている横を、二人は通りすぎる。
「ぐっ! あの女の攻撃はヤバすぎるっ!」
「下がるぞっ!」
「連中が、下がっていく? 今なら、ピストルで反撃できるな」
「狙いを定めて…………よし」
二連ショットガンを撃ってから、黒アリ人間のチンピラは、教会にまで走っていく。
それに合わせて、ウッドエルフのチンピラも、マジックケーンから火炎魔法を放ちつつ下がりだす。
他のチンピラ達も、ひたすら路上で、猛攻撃していたが、左右さら挟まれる事を警戒し始めた。
そのため、連中は射撃しながら後退していき、建物へと逃げてゆく。
レストランのドア付近から、ゴードンは敵に対して、ピストルで何発か弾丸を放つ。
そして、テアンはクロスボウを確りと構えて、逃走する、白人チンピラの背中を射ち抜く。
「うが、う、ぐっ!」
「ふぐぅ…………!?」
オークのチンピラは、正面から拳銃弾に撃たれてしまい、真後ろにバタりと倒れる。
白人チンピラは、腹に穴が開いてしまい、両手で押さえながら前のめりに膝を突いた。
「今ですよ? 二人とも、裏口から出ていって下さいっ!」
「うわあっ! ガスだっ!」
「吸うなっ! 毒かも知れないぞっ!」
氷結魔法で、ダイヤモンドダストを噴出させた、ジャーラの攻撃は、チンピラ達を怯ませる。
真っ白い煙は、液体窒素と同じくらいの威力があり、まともに喰らえば凍結してしまう。
もちろん、黒人チンピラは、それを警戒して、建物に素早く逃げ込む。
白人チンピラも、教会に飛び込むと、直ぐ様トンネル型のドアを閉めた。
他のチンピラ達も、周囲にある窓やドアから建物内へと避難していく。
「そっちばっかり見ていると、私に殺られちゃうわよっ!」
市街地戦では、何が起こるかは誰にも予測できず、また事が始まる時も、何時かは分からない。
密かに、路地裏から建物の中に入っていた、カーニャは、窓から向かい側にある建物を攻撃する。
「うわ、あの女を殺せっ!」
「ヤバい」
アジア人のチンピラは、子樽型爆弾を投げてきたが、それを見て、カーニャは床に伏せる。
しかし、それが運良く建物の手前に頃がって、爆発した事により、彼女は無事だった。
「今だっ!?」
「こっちからならっ!」
裏口から出て、ショーンとサヤ達は、敵に気づかれる前に、こっそりと走っていく。
そして、教会正面から左側にあるチンピラ達が居ない建物へと入った。
「外の様子は?」
「あの果物屋から、撃ってますね? 行きましょうか」
どうやら、マグナムと弓矢を持った敵が、窓から両側の建物を攻撃している様子が見えた。
連中の両腕と武器を、ショーンとサヤ達は、密かに視認すると、背中を丸めて歩いていった。
「おら、おらっ!」
「死ね、死ね」
「死ぬのは、お前らだよ」
「その命、貰ったあっ!」
マグナムを射ちまくる、鹿獣人のチンピラへと、ショーンは密かに近づいていく。
そして、いきなり、奴の左腕を切り飛ばし、胸に袈裟斬りを喰らわせる。
弓を構えていた、ドワーフのチンピラは、それに気づいたが、時すでに遅かった。
奴が振り向いた瞬間、サヤは真っ直ぐに炎を纏った火炎薙刀で、腹を横凪に斬り、体を燃やす。
「ぐゃっ!?」
「うわああああ」
「こっちにも敵かっ!」
「案ずるなっ!」
ショーンとサヤ達による攻撃で、鹿獣人とドワーフのチンピラ達は、凄まじい断末魔を上げる。
しかし、今ので教会に身を隠す敵は、二人が近づいている事に気がついてしまった。
「煙玉を喰らえっ! おらあっ!」
「今の内に撃ちまくれっ!」
「しまった…………こうなりゃ、強行突破だっ!」
「ゲホ、ゲホッ! 危険ですよっ! 止めといた方がっ!」
三個も、投げなれた煙玉は、果物屋を灰煙で、包み込んでしまう。
そして、敵が近づかないように教会から、アサルトライフルやショットガン等が、火を吹きまくる。
このままでは、敵に近づけないし、奇襲も出来ないと悟った、ショーンは何と走り出した。
銃弾が飛び交う中、いきなり突撃し始めた無謀な彼の背中を見ながら、サヤは叫んだ。
「心配は要らないっ! こうやって、地べたを這い回れば…………う、流石に怖いな」
「凄い覚悟ですっ!」
ショーンが、一人だけで、匍匐前進しながら教会へと近づいていく様に、サヤは目を丸くする。
その頭上、数センチを弾丸が飛び越えていく事に、彼はビビりながらも歩みを止めはしない。
「やったか? あの煙の中で、死んでると良いが」
「これで、奴は近づけないか? 死んだはずだっ!」
「向こうからは、煙で見えないしな? 援護射撃も出来ないだろ」
「そうだな、だが、まだ敵が…………奴だっ!?」
充満する灰煙を見て、ホブゴブリンのチンピラは、両手でマグナムを握りしめながら呟く
アサルトライフルを構えながら、黒人チンピラは、今度は正面の敵に制圧射撃を加える。
リピーター・ボウから矢を乱射しまくる、白人チンピラは、レストランを攻撃し続ける。
火炎瓶を投げようとした、小人族のチンピラは、ショーンが走っている姿を目にして驚いた。
「おらああああっ!? 俺は、銃弾や魔法くらいじゃ、止まらないぞっ!!」
「ぎゃあーーーー!?」
ショーンは教会の左側にある窓に、ショートソードを思いっきり、右腕を伸ばして突っ込んだ。
それにより、アサルトライフルを撃っていた黒人は、喉を突き刺されて、絶命してしまった。
「奴が来たぞっ! 撃ち殺せーー!」
「火炎瓶だっ! 喰らえってんだ」
教会右側にある窓からは、白人チンピラが、リピーター・ボウで、ショーンを射殺しようとする。
それに、小人族のチンピラが火炎瓶が投げて、地面に落下すると、たちまち辺りに炎が広がる。
「うわわ、アチチッ! 危なあっ!?」
「今だっ! 死ねっ!」
矢を避けるべく、スライディングした、ショーンは、今度は地面を転がりながら炎を避ける。
しかし、それを狙って、ホブゴブリンのチンピラは、両手で握るマグナムを発砲してきた。