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第66話 レストランと教会


 アジア人街の片隅では、延々と繰り広げられる抗争が、未だに終わる気配がない。


 何故なら、これはただの戦闘ではなく、物資を巡る争奪戦だからだ。



 その象徴である、銃弾は途切れなく撃たれ続け、時おり、火炎魔法や風刃魔法も飛んでいく。


 これにより、ショーン達は応戦するだけで、手一杯であり、チンピラ達にずっと押されていた。



「ぐぅ? これでは、何も出来ない…………済まん、俺が敵を暗殺できなかったばっかりに」


「謝る必要は、有りませんよっ! 今、防弾氷壁を作りますねっ!」


「あっ! 奴ら、俺達の攻撃を防御する気だぞっ!」


「そうなる前に、やっちまえっ!」


 ショーンが、カウンター裏から謝罪する中、レストランの窓に、ジャーラは氷壁を作成する。


 これにより、外からの射撃は遮断されて、チンピラ達が放つ、銃弾や風圧を受けずに住む。



「おっと、こっちにも敵が居るんだよっ! 馬鹿タレどもがっ! それ、それっ!」


「氷を壊せっ! う…………」


「あっちからもっ! ぐわっ!」


 路地から飛び出てきた、カーニャは両を前に出して、魔法を敵に浴びせまくる。


 右手と左手から、暗黒球と紫ビームを交互に射ちまくり、チンピラ達は路上に倒れてゆく。



 褐色肌のサンドエルフは、脇腹を右側から射たれてしまい、指揮棒タクトを落とす。


 ライオン頭のチンピラは、アサルトライフルを撃ち続けながら、地面に両膝を突く。



「アイツも撃ち殺せっ!」


「向こうにも、火力集中だっ!」


「おっと、危ないねーー」


 チンピラ達の目には、冷酷さと殺意が宿り、カーニャも標的にした射撃が浴びせられる。



「サヤ、こっちに来られるかっ! 」


「はい、行けますよ」


 向こうに気が向いた瞬間、ショーンは、カウンター越しに、サヤを呼び寄せる。



「俺達は、裏口から回るっ! 背後を突けば、白兵戦に連中は対応できないだろう」


「なるほど、奇襲ですか、ならばともに参りましょう」


 そう言いながら、腹這いになって、ショーンとサヤ達は、厨房へと向かう。


 黄色いスケルトンのチンピラが死体と化して、倒れている横を、二人は通りすぎる。



「ぐっ! あの女の攻撃はヤバすぎるっ!」


「下がるぞっ!」


「連中が、下がっていく? 今なら、ピストルで反撃できるな」


「狙いを定めて…………よし」


 二連ショットガンを撃ってから、黒アリ人間のチンピラは、教会にまで走っていく。


 それに合わせて、ウッドエルフのチンピラも、マジックケーンから火炎魔法を放ちつつ下がりだす。



 他のチンピラ達も、ひたすら路上で、猛攻撃していたが、左右さら挟まれる事を警戒し始めた。


 そのため、連中は射撃しながら後退していき、建物へと逃げてゆく。



 レストランのドア付近から、ゴードンは敵に対して、ピストルで何発か弾丸を放つ。


 そして、テアンはクロスボウを確りと構えて、逃走する、白人チンピラの背中を射ち抜く。



「うが、う、ぐっ!」


「ふぐぅ…………!?」


 オークのチンピラは、正面から拳銃弾に撃たれてしまい、真後ろにバタりと倒れる。


 白人チンピラは、腹に穴が開いてしまい、両手で押さえながら前のめりに膝を突いた。



「今ですよ? 二人とも、裏口から出ていって下さいっ!」


「うわあっ! ガスだっ!」


「吸うなっ! 毒かも知れないぞっ!」


 氷結魔法で、ダイヤモンドダストを噴出させた、ジャーラの攻撃は、チンピラ達を怯ませる。


 真っ白い煙は、液体窒素と同じくらいの威力があり、まともに喰らえば凍結してしまう。



 もちろん、黒人チンピラは、それを警戒して、建物に素早く逃げ込む。


 白人チンピラも、教会に飛び込むと、直ぐ様トンネル型のドアを閉めた。



 他のチンピラ達も、周囲にある窓やドアから建物内へと避難していく。



「そっちばっかり見ていると、私に殺られちゃうわよっ!」


 市街地戦では、何が起こるかは誰にも予測できず、また事が始まる時も、何時かは分からない。


 密かに、路地裏から建物の中に入っていた、カーニャは、窓から向かい側にある建物を攻撃する。



「うわ、あの女を殺せっ!」


「ヤバい」


 アジア人のチンピラは、子樽型爆弾を投げてきたが、それを見て、カーニャは床に伏せる。


 しかし、それが運良く建物の手前に頃がって、爆発した事により、彼女は無事だった。



「今だっ!?」


「こっちからならっ!」


 裏口から出て、ショーンとサヤ達は、敵に気づかれる前に、こっそりと走っていく。


 そして、教会正面から左側にあるチンピラ達が居ない建物へと入った。



「外の様子は?」


「あの果物屋から、撃ってますね? 行きましょうか」


 どうやら、マグナムと弓矢を持った敵が、窓から両側の建物を攻撃している様子が見えた。


 連中の両腕と武器を、ショーンとサヤ達は、密かに視認すると、背中を丸めて歩いていった。



「おら、おらっ!」


「死ね、死ね」


「死ぬのは、お前らだよ」


「その命、貰ったあっ!」


 マグナムを射ちまくる、鹿獣人のチンピラへと、ショーンは密かに近づいていく。


 そして、いきなり、奴の左腕を切り飛ばし、胸に袈裟斬りを喰らわせる。



 弓を構えていた、ドワーフのチンピラは、それに気づいたが、時すでに遅かった。


 奴が振り向いた瞬間、サヤは真っ直ぐに炎を纏った火炎薙刀で、腹を横凪に斬り、体を燃やす。



「ぐゃっ!?」


「うわああああ」


「こっちにも敵かっ!」


「案ずるなっ!」


 ショーンとサヤ達による攻撃で、鹿獣人とドワーフのチンピラ達は、凄まじい断末魔を上げる。


 しかし、今ので教会に身を隠す敵は、二人が近づいている事に気がついてしまった。



「煙玉を喰らえっ! おらあっ!」


「今の内に撃ちまくれっ!」


「しまった…………こうなりゃ、強行突破だっ!」


「ゲホ、ゲホッ! 危険ですよっ! 止めといた方がっ!」


 三個も、投げなれた煙玉は、果物屋を灰煙で、包み込んでしまう。


 そして、敵が近づかないように教会から、アサルトライフルやショットガン等が、火を吹きまくる。



 このままでは、敵に近づけないし、奇襲も出来ないと悟った、ショーンは何と走り出した。


 銃弾が飛び交う中、いきなり突撃し始めた無謀な彼の背中を見ながら、サヤは叫んだ。



「心配は要らないっ! こうやって、地べたを這い回れば…………う、流石に怖いな」


「凄い覚悟ですっ!」


 ショーンが、一人だけで、匍匐前進しながら教会へと近づいていく様に、サヤは目を丸くする。


 その頭上、数センチを弾丸が飛び越えていく事に、彼はビビりながらも歩みを止めはしない。



「やったか? あの煙の中で、死んでると良いが」


「これで、奴は近づけないか? 死んだはずだっ!」


「向こうからは、煙で見えないしな? 援護射撃も出来ないだろ」


「そうだな、だが、まだ敵が…………奴だっ!?」


 充満する灰煙を見て、ホブゴブリンのチンピラは、両手でマグナムを握りしめながら呟く


 アサルトライフルを構えながら、黒人チンピラは、今度は正面の敵に制圧射撃を加える。



 リピーター・ボウから矢を乱射しまくる、白人チンピラは、レストランを攻撃し続ける。


 火炎瓶を投げようとした、小人族のチンピラは、ショーンが走っている姿を目にして驚いた。



「おらああああっ!? 俺は、銃弾や魔法くらいじゃ、止まらないぞっ!!」


「ぎゃあーーーー!?」


 ショーンは教会の左側にある窓に、ショートソードを思いっきり、右腕を伸ばして突っ込んだ。


 それにより、アサルトライフルを撃っていた黒人は、喉を突き刺されて、絶命してしまった。



「奴が来たぞっ! 撃ち殺せーー!」


「火炎瓶だっ! 喰らえってんだ」


 教会右側にある窓からは、白人チンピラが、リピーター・ボウで、ショーンを射殺しようとする。


 それに、小人族のチンピラが火炎瓶が投げて、地面に落下すると、たちまち辺りに炎が広がる。



「うわわ、アチチッ! 危なあっ!?」


「今だっ! 死ねっ!」


 矢を避けるべく、スライディングした、ショーンは、今度は地面を転がりながら炎を避ける。


 しかし、それを狙って、ホブゴブリンのチンピラは、両手で握るマグナムを発砲してきた。


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