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第67話 いよいよ、安全区域へ


 ショーンは何とか、敵の攻撃を避けようと、必死で地面を転がり続ける。


 そこを狙って、ホブゴブリンのチンピラは、両手で握るマグナムを発砲しまくった。



「しまった、あっ!?」


 何発か放たれた、赤いマグナム弾は、真っ直ぐショーンの体に迫る。



「がは…………」


 しかし、何故か知らないが口から血を吐いたのは、ショーンではなかった。


 ホブゴブリンのチンピラは、背中から撃たれてしまい、だらりと窓に倒れかかった。



「援護するっ! 挟み撃ちにするぞっ! マーリーン、側面を頼むっ!」


「リオン、分かったっ!!」


 何事かと、チンピラ達は背後を振り向いたが、そこには警察官たちが立っていた。



 一人は、バイオアルマゲドンに登場するレオンハルトに服装や容姿が似ている。


 金色がかった茶髪の髪を七三分けににしており、右側にアシンメトリーを垂らす。



 リオンと呼ばれた青い制服を着ている彼は、祭壇の裏から、リボルバーを撃ってくる。



 もう一人は、制服の上に青いレインコート型ローブを羽織り、頭にはフードを被っている。


 少しだけ見えた、鮮やかな水色の髪は美しく、また彼女も警棒から、火炎魔法を放ってくる。



 マーリーンと言うらしい、女性警官は、直ぐに左側のベンチに隠れて、敵の攻撃から身を隠す。



「助かった…………? あと、少しずれていたら、お陀仏だったな? あの二人は警察官だな?」


「ぐはっ!!」


 今度は、迂闊に飛び出て行こうとはせず、窓の陰から、ショーンは中を眺める。


 教会内部では、白人チンピラが、リピーター・ボウを射ちまくっていたが、拳銃弾に撃たれた。



「そこにも居るな? 出てこいっ!」


「武器を捨てなさいっ!」


「ま、待て、俺はチンピラじゃないっ!」


「ぐああっ!!」


「ぎゃあっ!?」


 リオンとマーリーン達は、外から中を除いているショーンの存在に気がついて、攻撃してきた。


 彼は、直ぐに壁へと身を引っ込めるが、拳銃弾や火炎魔法は、窓ガラスを割って飛び出てくる。


 その間に、小人族のチンピラが、何かに殺られたらしく、悲鳴が木霊した。


 アジア人のチンピラは、子樽型爆弾を投げようとしたが、腕を撃たれてしまい、建物内で爆死する。



「逃げろっ!」


「やってられるかっ!」


 二連ショットガンを撃ってから、黒アリ人間のチンピラは、建物から飛び出て左側へと走っていく。


 それと同じく、ウッドエルフのチンピラも、急いで戦場を離れようとして、逃走を開始する。



「おい、待てっ! チンピラ野郎っ! あそこまで、逃げられたら? は…………」


「敵が来たぞーー!」


「撃ち殺せ~~!!」


「ぎゃああああ」


「ぐわあっ!?」


 逃げ出した敵の背中に、ショーンは罵声を浴びせながら、追いかけようとした。


 しかし、逃げているチンピラ連中が、突然前方から銃撃を浴びせられた。



 なんと、そこには重武装の海トカゲ団員たちが、アサルトライフルを持って待ち構えていた。


 それも、かなりの人数であり、真っ向から戦えば、勝ち目は無いだろうと思えるほどだった。



「不味い、マーリーン、逃げようっ!」


「ええ、戦略的撤退しなければっ!」


 教会内部から、リオンとマーリーン達が、叫ぶ声と裏口から逃げていく足音が聞こえる。



「まだ、向こうに残っているぞ」


「狙い撃ちにするんだ」


「うわ~~!? ヤバイッ!! コイツは俺たちも、勝てないっ!!」


「ショーン、無事でしょうか」


「ぐ、あの数はヤバイぞっ! うわっ! このっ!」


 マンドラゴラの海トカゲ団員は、アサルトライフルを連射してきた。


 それと同時に、ドラゴノイドの海トカゲ団員は、口から火炎魔法を乱発してくる。



 教会の正面玄関に隠れながら、道路を眺めるショーンを狙って、ライフル弾や火炎球が飛んでくる。


 それが、壁やドアに当たって、下手に身動きが取れないほど、激しい攻撃が続く。



 彼の元に、サヤは這ってくると、無事なのかと訪ねながら、直ぐに後ろに回り込む。


 ゴードンは、路上を走りながら片手で、ピストルを乱射しながら、こちらに向かってきた。



「うっ! 危なかった…………」


「ゴードン、大丈夫ですかっ!」


 ゴードンが転びながら、正面玄関に入ってくると、サヤは彼を心配する。


 しかし、運良く弾丸は当たっておらず、無事な様子に安堵する。



「くっ! サヤ、ゴードン、俺たちも逃げようっ! 教会を通って、向こう側に行くんだっ! さあ、はやくっ!!」


 そんな二人を見てから、ショーンはキョロキョロと目配せして、奥にある祭壇の方を指差した。


 すると、そこには警察官たちが通っていったであろう、ドアが開かれた部屋が左側にあった。



「うわっ! 爆弾がっ! うぐーーーー!!」


 サヤとゴードン達を走らせると、ショーンは転がってきた、手榴弾を目にする。


 それから、即座に教会の奥へと飛び込んで、炸裂すると同時に、彼は床に伏せた。



「マジで、不味いっ! テアン、ジャーラ、カーニャ、急ごうっ! 敵は、まだ遠くだっ!」


「分かってるぜ、おっと? …………ふぅ」


「今です、氷の霧と壁を作りましたっ!」


「オラ、オラ、オラッ!? よし、逃げるよっ!」


 ショーンは、他の仲間を呼ぶと、テアンが銃弾を掻い潜って、何とか教会内に走り込んでくる。


 ジャーラは、氷結魔法で、ガスを噴出させながら、その中に氷を作る。



 何発か、暗黒球や紫ビームを射ったあと、カーニャは、霧に紛れて逃げ込んできた。


 その間も、海トカゲ団員による制圧射撃は、止まる事なく続けられる。



「ショーン、早く行きましょう」


「危ないぜ、兄弟?」


「先に行けっ! 今、俺も行くっ!」


 ジャーラとテアン達は、祭壇にまで走っていき、振り向いて、ショーンの方に目を向けた。


 しかし、彼はドアを閉めたあと、鍵をかけてから、仲間たちを追って逃げてゆく。



「居たぞーー! 逃がすなーー!」


「野郎、逃げられると思っているのかっ!」


「うわああああ、ヤベ~~~~!?」


 海トカゲ団員たちは、ドアを開けようとしたが、鍵がかけられているため、窓に向かった。


 そして、アサルトライフルを猛乱射して、大量の銃弾で、ショーンを射殺しようとした。



「はあっ! あと少しだっ!」


 背中に向かって、浴びせられる銃撃が、己に当たらぬように祈りながら、ショーンは走る。


 次いで、左側にある部屋に入って、海トカゲ団との戦闘から逃れて、裏口から飛び出ていった。



「ふあっ!? 連中…………まさか、俺を置いてったのか…………」


「ショーン、こっちですよっ!」


 一瞬、ショーンは路上で焦ったが、直ぐに、ジャーラの手招きする姿に気がついた。


 何と、彼女はマンホールから、頭と手だけを出して、下水道に誘導していたのだ。



「さあ、早く」


「ああ、分かってるぜっ! てか、ギルドの時と同じか」


 ジャーラが穴の中に、体を引っ込めると、ショーンも直ぐに飛び込んで、茶色い蓋を閉めた。



「あれ、何処に行ったんだ?」


「知らん、探すしかない」


 海トカゲ団員たちが、話す声が頭上から聞こえてくるが、ショーンは梯子はしごを掴んだまま動かない。



「仕方ない、周辺を探すぞ」


「ああ、あの辺りを調べよう」


「…………行ったか?」


「ええ、どうやら、そのようですね」


 路上を歩く、海トカゲ団員たちの足音が、段々と遠ざかっていく様子が、地下にまで伝わる。


 ショーンとジャーラ達は、それを聞くと、再び梯子を降りていった。



「ここは下水道か? もしかしたら、ここにも、ゾンビやチンピラ達が居るかも知れない」


「ええ…………次の梯子を見つけたら、そこから慎重に外に出ましょう」


 そう言いながら、ショーンとジャーラ達は、薄暗い下水道を進んでいった。


 この先は、右側にある側溝から光が漏れており、左側には下水が流れている道が続いていた。

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