大型オオトカゲは、何発もの拳銃弾が、体中の怪我した部分に当たり、悲鳴を上げる。
ガビアルは、落馬してから、氷結魔法を射たれて、体が凍らされてしまう。
「紫肉には、拳銃弾が効くらしいな?」
「近づく前に、口は塞いで置きましょう」
「ガビアル、最後の止めを刺してやる」
「ショーン」
ルガーP08の弾を何度も、当てながら、ゴードンは少し離れた場所から、大型オオトカゲを睨む。
同じく、ジャーラも警戒しながら、氷結魔法で、奴の
バリケード上から、ショーンは飛び降りると、身動きの取れない、ガビアルに近づく。
そして、ゾンビ化が進み、体中が紫色に染まり切った奴に、そっと近寄る。
「ショーン、早くしろっ! 敵は瓦解しているが、ゾンビ達が来ているからなっ!」
「私たちだけで、牽制するのは、かなりキツイですからねっ! この私の薙刀だけでは、勝てないですっ!」
マルルンは、スパタを振るいながら、ゾンビ達の間を駆け抜けていく。
火炎薙刀を横凪に振り回し、マッスラーやフレッシャー達を、サヤは斬り伏せる。
「お前ら、分かってるっ! さあ、最後に遺言だけは聞いてやろう」
「へへ…………毒ガスを吐いてやりたいが、それも、ごぼっ! できな、ぐ、は…………」
ショーンは、警戒しながら、ショートソードを抜いて、ガビアルに近づいた。
「ショーン、娘が、カイマが海トカゲ団の社員寮に…………あとは…………ガートと一緒に燃やしてくれ、頼む」
「分かった、お前の裏切りは、娘にために行ったんだもんな? 心配するな、後は任せろっ!」
苦し気に呻いたり、表情を歪ませるガビアルは遺言を吐きながら、大型オオトカゲを指差した。
そして、覚悟を決めて、眼を瞑った奴を、ショーンは振り上げた剣で、首を跳ねた。
「ぐ…………」
ガビアルは、ショーンの介錯により、完全にゾンビ化する前に死んだ。
「終わったか? じゃないか? ゾンビ達が、まだ残っているっ! しかも、海トカゲ団もだっ!」
「ショーン、援軍だにゃっ!」
「ウアアッ!」
「隊長が殺られたっ! 逃げろっ! もう、俺達の負けだっ!」
ショーンは、ガビアルを弔う暇なく、北側から向かってくる、ゾンビの軍団を見た。
また、海トカゲ団の騎兵隊も数を減らしたとは言え、未だに、バイクやオオトカゲ等が走っている。
ミーが近づいてきて、敵が逃げていく、東側を彼女が指差したので、そちらを眺めてみた。
そこでは、フレッシャーに追われて、馬に乗っている、吸血鬼の海トカゲ団員が悲鳴を上げている。
「これは、追撃しなければって、援軍は奴らか?」
「ヒャッハ~~!」
「死にやがれっ! 死ね、死ねっ!」
「うわっ!」
「グゲエーー!」
ショーンは、ゾンビと海トカゲ団の殲滅に向かおうとしたが、それよりも援軍に眼が向いた。
それは、叫び声を上げながら、道路を爆走する、BB団員たちの車両部隊だ。
バイクに跨がるトロールのBB団員は、マシンピストルで、海トカゲ団員を馬ごと撃ち抜く。
ワゴン車のスライドドアを開いた、アラブ系BB団員は、二連散弾銃で、ゾンビを吹き飛ばす。
「これで、終わったなっ? てか、連中まで来てくれるとはな」
「ショーン、あとは彼等に任せましょう? 私たちは、後方に行きましょう」
「さあ、ゾンビ狩りの時間だぜ」
「邪魔な、奴らを撃ち殺しまくりだぜっ!」
ショーンの側に、リズが寄ってくると、二人は次々と倒されていく、ゾンビ達を見ていく。
白人BB団員は、バイクから火炎瓶を投げて、特殊ゾンビなどを焼き払う。
ワゴン車から、黒人BB団員はアサルトライフルで、ゾンビ達に機銃掃射を浴びせる。
こうして、トラックやテクニカル等の車両部隊は、北側に向かっていった。
「早くしろっ! ワゴン車で道を塞ぐんだっ!」
「隙間には、瓦礫でも積めておけっ!」
灰色の服装と、赤いスカーフを首や頭に巻いた、BB団員たちが、急いで北側にバリケードを作る。
「はあ、俺たちの勝利だ」
BB団員に混ざって、様々な色のアリ人間や警察官に兵士たちが、働き始める。
そんな中、ショーンは頭から汗を滴しながら、バリケードの崩れた場所を目指した。
こうして、駐車場から敵は一掃されて、アジア人街の安全区域が、再び静寂に包まれた。
それから、長い時が立ち、冒険者たちは他の組織とともに、バリケード側にある建物に入っていた。
「はあ、パルドーラ…………奴は、なんで出てきたんだ?」
「もしかして、スーツ姿のインキュバスの奴か? アイツは、俺たちとともに、ゾンビやチンピラと戦ってたんだ」
「マルルンの言う通りです、私たちは南側中央を突破してきた、敵と戦いました」
「そこで、ピストルを撃ってたんだが、上手く撃退できて、東側に援軍に向かったんだ」
夜になり、ショーンはバリケードの向こう側に広がる街並みを眺めながら呟く。
彼の言葉に反応して、マルルンは一緒に共闘していた人物を思い出す。
ジャーラは、壁に背中を預けながら、この部屋から西側を向きながら語る。
両腕を組みながら、大きな木箱に座り、ゴードンは目を瞑りながら呟く。
「じゃあ、奴も援軍に来ていたのか?」
「彼は、倒れた敵のバイクに乗ったわね、その瞬間を私は見たわ」
「その後は、私たちは見てないです? 薙刀を振るうので、忙しかったので」
「俺も、狙撃支援に夢中だったから後は分からん」
あの時、パルドーラが助けてくれなければ、ショーンは火炎に包まれていただろう。
カーニャは、窓辺に腰掛けながら、ガラスに背中を預け、天井に視線を向けつつ呟く。
「じゃあ、バイクに乗った後は、俺を助けるために…………」
「気を落とすな、ショーン…………彼の仇は討ったんだ」
自らを犠牲にした、仲間パルドーラを思い、ショーンは顔色を悪くさせながら、俯いてしまう。
スバスは、そう言って、すごく落ち込む彼を、何とか励ましそうとする。
「ショーン、彼のためにも、残りの海トカゲ団員を殲滅させましょうっ! 連中は、未だにチンピラ達を率いて、北側で妙な動きを見せてるわ」
「リズ? そうだな? 悲しんでばかりは要られないっ! カラチス、ナカタニさん、パルドーラ…………みんなの仇は、ガビアルだけでなく、残りの海トカゲ団を殲滅する事だっ!」
リズの言葉を聞いて、ショーンは顔を上げて、拳を握りしめて、奮起する。
「そうだ、その息だ? ショーン」
冒険者たちが、見張りのために集う部屋に、ルドマンが、突然一人で入ってきた。
「ルドマンさんっ? なぜ、ここに?」
いきなり入ってきた、ルドマン社長の登場に、ショーンは驚いて、目を見開く。
「私は、前線の指揮を取りに来たんだ? それよりも、明日は海トカゲ団との決戦だっ!」
「決戦ですか?」
「はあっ!? 決戦ですって…………」
ルドマンは、ここにきた理由を話したが、その口からは衝撃的な言葉が出た。
それを聞いて、さらに、ショーンとリズ達は、びっくりしてしまった。
「そうだっ! いつまでも、連中を放置しておけないっ! 我々は力を結集して、ついに戦いを仕掛けるっ! もはや、海トカゲ団は巨大な盗賊団となっているっ! これからは、正々堂々と互いに潰し合えるっ!」
そう語る、ルドマンの目は、ワーウルフがごとく、ギラギラと輝いており、恐ろしかった。
当然だが、彼は表稼業の人間であるが、海トカゲ団に対抗するため、裏社会とも通じている。
加えて、警備員や警護員と言う名目で、ショーン達のような冒険者たちを私兵として、雇っている。
もちろん、もしもの時に、海トカゲ団と抗争になった際に備えるためだ。
「こりゃ、偉い事になったな…………だが、これで仇を討ちに行けるっ! 神様、勝負に勝たせてくれよ」
ショーンは、彼の話しを聞いて、気を引き締めながら、戦える事を神に感謝しながら呟いた。