ショーンの前に現れた、社長ルドマンは、ついに海トカゲ団と本格的な戦いを決意した。
「ルドマンさんっ! 本当に、明日戦争を仕掛けに行くんですかっ?」
「そうだっ! 戦力が揃ったからなっ! このアジア人街に、チンピラ達が移動したので、ゴルバ達は、避難民や仲間を武器屋集められたようだ?」
驚くばかりのショーンに対して、ルドマンは顔を真っ赤にしながら、ヤクザが如く険しい顔になる。
「彼等は、元から海トカゲ団と武器販売では、つねに商売仇だったからな? 喜んで、援軍要請に答えてくれた」
「はあ? その様子だと、表だけでなく、裏でも虫族の連中は、そうとう戦ってたんでしょうね」
「きっと、普段の利権抗争の報復する積もりねっ!」
ルドマンの言葉を聞いて、ショーンとリズ達は、普段から海トカゲ団が恨みを買っていた。
そして、種族や他企業と、派手な抗争を裏で行い、連日新聞を賑わしていた事が脳裏に浮かんだ。
「まあ、そう言うワケだ? それと、サイード爺さんの場所も襲撃されたが、撃退に成功したらしい? それで、こちらの援軍要請で来てくれたようだ」
「そう言や、BB団の連中も、最後に来てましたね」
「ギャング団の彼等が来たのも、やはり、あの人の命令だったのね」
目を瞑り、鼻息を鳴らしながら、ルドマンは落ち着きを取り戻したらしく、穏やかな顔で語る。
ショーンとリズ達は、最後の戦いを、窓から見えるバリケードに視線を合わせながら思い出す。
「今回、それで、アリ人間たちやBB団が援軍に来れたんだが、明日は彼等が敵の支部に総攻撃を仕掛けるっ! 同時に、兵士や警察官は北側のゾンビやチンピラ達を排除する事が決定した」
再び、ヤクザ見たいに険しい表情になった、ルドマンは明日の予定を語り出す。
「冒険者は、自警団とともに安全区域の警備を担当する」
「ルドマンさんっ! 俺も、行かせて下さいっ!」
ルドマンに対して、ショーンは仲間たちの仇を討つため支部に対する攻撃に志願した。
また、彼自身も、海トカゲ団とは、過去に浅からぬ因縁があるからだ。
「俺は、元海トカゲ団員でしたっ! 支部の場所は分かってますし、内部構造も知ってますっ! アリ人間たちやBB団の案内が出来ますっ!」
「そうか? そうだな…………ならば、ショーン、お前に案内は任せたぞ」
ショーンは、かつて、海トカゲ団の特殊部隊に属している、エリート冒険者だった。
そのため、ルドマンにも自身満々で、自ら先導役に名乗り出ることが出来た。
「と言うか? ルドマン社長、ゴルバ店長やサイード爺さんとは、どんな関係なんでしょうか?」
「社長、俺も気になってたんだが、いったい、何の仲間なんですか」
リズとショーンは、ルドマンの交友関係が広い事が、人間関係が気になった。
「ゴルバは、商売上の付き合いで長くなるな、サイード爺さんは、私の学校時代の不良チームの先輩なんだ」
「なるほど…………そんな関係だったとは」
「意外な交遊関係ですね」
ルドマンの口から語られた事実に、ショーンとリズ達は、少し驚いてしまう。
「そう言う訳だから、みんや明日に備えて、休んでくれ? これから私は他の警備部隊の調査に向かう…………それから、キョンシーのようなゾンビは、ジャンパーと言う呼称に決まったからな? キョンシーと名前が同じだと紛らわしいしな」
「ジャンパーですか? 分かりました、ここの見張りは任せて下さい」
「異常が有りましたら、直ぐに報告します」
「では、後は我々が引き続き、警備を担当しますっ!」
それだけ言うと、ルドマンは去っていくが、その後ろ姿を、みんなで見送る。
ショーンは、手を振って部屋から出ていく彼に対して、真面目に答えた。
リズも、そう言ってから、バリケードに近づく、敵が居ないかと、窓から外を眺めた。
元気よく返事しながら、スバスは床に置いていた、ウニ鉄球を両手で持ち上げた。
「ショーン? 元海トカゲ団だってのは、マジな話なのかい?」
「何故、それを黙っていた…………」
「本当だにゃっ! あのワニ男との繋がりも、気になるにゃ」
「そうだぜっ!! ショーン、お前は連中の仲間だったのかっ!?」
「気に成りますね? 差し支えなければ、教えて下さい」
木箱に座りながら、ポイズンソードの毒を塗り直していた、フリンカは呟く。
樽の上に載せた、狩猟弓を、手入れしながら、ワシントンは神妙な顔になる。
マルルンは、ショーンの過去が気になって、大きな声を出してしまう。
丁寧な口調で、内心は驚きながらも、非常に落ち着いた表情で、ジャーラは話す。
「ああーー? 言ってなかったけ? いや、うん? 言わなかったな」
「ショーンは、色々あってね…………前は、海トカゲ団の警備部門で働いてたのよ」
ショーンは、面倒で嫌そうな顔になり、リズも困ったような感じで語りだした。
それから、仲間たちの前で、ルドマン商会で働く前に起きた事を、彼は語りだした。
「そう言うワケだったのねぇ…………」
「絶句だな」
「ショーンが悪人じゃなくて、良かったが、これじゃあ…………」
「非常に腹の立つ話ですね」
聞き負えた話に納得して、フリンカは息を吐きながら、ショーンが悪人ではなかった事に安堵する。
一方、ワシントンは裏切られた、彼の余りにも酷い話に、気分が悪くなる。
もちろん、マルルンも裏切り者のライルズとスザンナ達に、怒りの感情が、こみ上がる。
顔を真っ赤にして、ジャーラは拳を握り締めて、腕をブルブルと振るえさせた。
「まあ、過去の話なんだが? 当時は、海トカゲ団も巨大企業じゃなかったし? 冒険者パーティーから発展した警備会社や商社だったからな」
「それより、ショーン? 明日は敵の本部に向かうらしいが、俺たちは住人を守りたい…………チンピラ連中やゾンビ達が、今日の戦闘で、街が弱ってると思って、近寄って来ているらしい? だから、俺はクロスボウで狙わないと」
「そうです、私たちは、街の人間を守りますので、皆さんは、遠慮なく前線で敵を叩きのめして下さい」
「殺るなら、とことん、殺りまくってきてね~~! こっちは任せておきなよっ! 殺しは私がやるからさっ!」
ショーンは、海トカゲ団で、暗殺や破壊工作部隊に所属していた訳ではない。
彼の主な任務は、人質や金品を奪還したり、要人を警護する事だったからだ。
そう考えている内に、テアンとサヤ達は、彼に冒険者として、人々を守る決意を伝えた。
カーニャは、二人よりも好戦的なため、もし敵が攻めてきたらと考え、口角を吊り上げる。
「ショーン、俺たちは街の人間が心配なんだ? 悪いが、そっちには行けない」
「いや、お前らの言う通り、ここも狙われる危険性があるっ! だから、ここの防衛は任せたぜ、マルルンッ!」
安全区域に残り、マルルンは自身のチームとともに、民間人と地区を防衛する道を選んだ。
もちろん、後顧の憂いなしと、ショーンは彼に自分たちが出来ない警備を快諾した。
「見張りの交代時間だ? 明日に備えて寝るんだな」
「ここは、私らに任せて貰うよっ! さあ、いった、いった」
黒服のキョンシーが、アサルトライフルを抱えながら部屋に入ってきた。
同じく、赤い服のキョンシー娘が、マジックロッドを手に持ちながら歩いてきた。
「ああ、もう、そんな時間か? 代わりが来るのが早いな…………」
「就寝時間ね? ここは、人数が多いから、交代時間が短くて助かるわ」
ショーンとリズ達は、キョンシー達に見張りを任せて、部屋を出ていく。
明日は、いよいよ決戦の日であり、彼等は充分に休息を取るようにした。