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第110話 大混乱


 ライルズとショーン達は、灰煙が充満する中、互いの姿を探しながら、遮蔽物に身を隠す。



「ガアガア、ガア~~」


「ギュアーーーー!」


「ライルズ、ゾンビが来ているぞっ! 早くしないと、喰われちまうぜ?」


「ふんっ! この距離と煙では、銃は扱いにくいか?」


 灰煙により、視界が遮られてしまい、海トカゲ団員たちは銃撃できない中、ゾンビ達は走ってくる。


 ショーンは、これなら敵の防御陣形を崩せると思い、ひたすら動く死者たちが来るまで待つ。



 ライルズは、味方部隊を誤射しないように、ホルスターに銃を仕舞う。


 そして、サーベルを黒鞘から抜き取り、右手に握り、両目を瞑りながら耳を研ぎ澄ませた。



「視界が晴れてきたっ! うわああ、ゾンビが近づいて来てやがるっ!」


「撃て、撃て、近寄らせるなっ!」


「グオオオオオオ」


「ウギャアアアアーーーー」


 エリート兵は、クロスボウを射ちながら叫び、走るフレッシャーを倒す。


 防弾兵は、ミニミを撃ちまくりながら、小走りで迫るゾンビ達を、射殺していく。



 それでも、射撃やゴーレムの格闘攻撃を回避しながら、動く死者たちが、大群で向かってくる。


 しかも、マッスラーが突進してきたり、ジャンピンガーが勢いよく飛び跳ねる。



「スニージンガー、ガスモークだわっ! 雷撃と風刃の弾丸で倒すわっ!」


「この距離じゃ、銃は間に合わんなっ!」


「そうだぜ? 間合いにさえ、入ってしまえば、隙ができるっ! しかも、同士討ちを気にして、銃は撃てないっ!」


「ショーン、援護開始するわよっ! 邪魔な敵は、私が引き受けるわっ!」


 特殊感染者たちが、近寄ってくる前に、スザンナはベレッタから魔力を込めた拳銃弾を放つ。


 風刃魔法は、弾丸の回転速度を上げて、威力と命中率を向上させ、雷も攻撃力を高める。



 彼女が、何発も弾丸を放つうちに、ライルズは懐から、三つのスローイングナイフを投げる。



 二人が、ゾンビ達に注意を向けている隙を狙って、ショーンは遮蔽物を飛び越えた。


 そんな彼を助けるべく、リズは大きな火球を幾つも放ち、海トカゲ団員たちに奇襲を仕掛ける。



「ぐわっ! 魔法かっ! 何処からっ!?」


「このっ! く、」


「今だっ! スザンナ、邪魔だっ! ライルズ、その首、貰ったぞっ!」


「きゃあっ!」


「ショーン、貴様っ! 望むところだ、かかってこいっ!」


 火炎魔法が当たって、エリート兵は一瞬だけ、身を怯ませると、即座に反撃に移る。


 同じく、火球を、フェニックスバイザーに当てられた防弾兵は、焦って遮蔽物に隠れる。



 いきなり、現れたばかりのショーンは、スザンナを蹴り飛ばし、ライルズに剣を振るう。


 だが、互いに鍔迫つばぜり合いになって、刃を弾き、再度両者は切っ先を突きだす。



「これで、終わりだっ! ライルズ、お前も最後だっ!」


「それは、こっちの台詞だっ! この勝負、貰ったっ!」


 ショーンは、右手に握る、トリップソードで真っ直ぐに突きを放った。


 それを軽く回避しながら、ライルズは彼の左胸を狙い、サーベルを前にだす。



「ぐっ! これが狙いか? あと少し遅れていたら、確実に肩をやられてたな」


「ははっ! ショーン、腕が落ちているなっ! エリート部隊から外れたんだから当然か?」


「ライルズ、援護するわっ!」


「ショーンは殺らせないわっ! 喰らえっ!」


 サーベルの切っ先が、軽く左肩を斬ったが、ショーンは顔をしかめながらも、後ろに下がった。


 ライルズも同じく、バックステップで後退すると、懐からスローイングナイフを投げる。



 さらに、スザンナは素早くベレッタで援護射撃しながら、右側か走ってくる。


 そんな彼女を狙い、リズが遠方から、火炎魔法の火玉を、マシンガン見たいに連続で放つ。



「ぐぅっ! 何発か、喰らったか? だがっ!」


「向こうが厄介だわ…………しかし、やったわっ! えっ!」


「スザンナッ! 貴様っ! そっちは殺らせないっ!」


 頭や顔面に、弾丸が当たってらしく、ショーンは回転する風と電撃で、一瞬だけ脳が怯む。


 ただ、正面から投げられた、スローイングナイフはバックラーで見事に防御した。



 さらに、彼は前に出ると思わせて、スザンナを襲い、ベレッタをトリップソードで叩き落とした。


 ライルズは、彼女を守るべく、自ら盾に成ろうと前に出て、サーベルを正眼に構えた。



「このまま、援護をっ! きゃああっ! やはり、敵も簡単には殺らせてくれないのねっ!」


「あの女エルフは敵だっ! 撃ち殺すんだっ!」


「ゴーレムが、ゾンビを止めに行ったからな」


 更なる援護射撃を、リズは行おうとしたが、流石に海トカゲ団側も、彼女の存在に気づいた。


 カエル人間の海トカゲ団員は、何発かずつ、MP5を連射してきた。


 エリート兵は、自動散弾銃スパス15から何十発もの散弾を放ちまくった。



「くっ! ショーン、殺してやっ! うぐぅぅっ!」


「ガアガアガアガア」


「グルアア~~~~」


「防衛線が突破されたぞっ! ゴーレムも、何体か押し倒されたっ!!」


 腰から、素早くレイピアを抜き取って、スザンナは片手で構えながら突きを繰り出そうとした。


 しかし、その時、フレッシャー達が走ってきて、バリケードを飛び越えてきた。



 また、ジャンピンガーは凄まじい勢いで、跳躍して、一気に迫ってくる。


 ゴーレムも、この数は捌ききれなくて、ひたすら、ゾンビ達に橫を通り抜けられてしまう。



「こっちも、相手しなければ…………ライルズ、そいつの事は任せたわよっ!」


「分かってるっ! スザンナ、背中は頼むぜっ!」


 スザンナは、バリケードを飛び越えようとするゾンビ達の頭を、レイピアで切り裂く。


 その間に、ライルズは相変わらず、彼女を庇うようにして、サーベルを右手で構える。



「ライルズ、この混戦は俺に有利に働いたなっ?」


「ああ、お前は昔から、白兵戦が得意だったな? それに、戦術も上手く使ってたな」


 ショーンとライルズ達は、何度も剣を叩き合い、互いに首を狙っては、斬撃を繰り出す。



「撃ちまくれっ! 相手は、たった一人だっ!」


「火力集中させろっ!」


「たく、不味いわねっ! これじゃ、ショーンを援護できないわ」


「グオオオオオ」


「ウガアーーーー!!」


 エリート兵は、HK416を単発連射しながら、正確に狙いを定めて、弾丸を放ち続ける。


 スケルトンの海トカゲ団員は、M2ブローニングを射撃し続け、リズが隠れる壁をボロボロにした。



 その間にも、続々と新たなゾンビ達が現れては、ゴーレムを倒していく。


 マッスラーが突撃していき、ファットゲローは、バリケードに近づき、血液を橫凪に噴射する。



「うわああっ! 放水銃並みの威力だっ!」


「気を付けろっ! 次は、強酸を放つかも知れないぞっ!」


「今だっ! 敵は弱って来ているっ! 突撃開始ーーーーーー!!」


「撃ちまくってやるぜ、ヒャッハッハッハ」


 エリート兵は、噴射された血液を受けて、ダメージを受けなかったが、怯んでしまう。


 防弾兵は、ミニミを機銃掃射させながら、ゾンビの群れを押さえようと、必死で奮闘する。



 だが、そんな海トカゲ団員を狙って、彼等から見て、右側にある多数の通路やドアから敵が来た。



 ブラックアントを乗り回す、茶アリ人間は、三連散弾銃トリプルスレットを連射する。


 機銃掃射しながら突撃する、豆戦車に乗ったBB団員は、MP5を乱射する。



「バルコニーを制圧しろっ!」


「勢いに任せて、突撃だっ!」


 二階バルコニーにも、右側から黒アリ人間が、マテバを撃ちながら走ってきた。


 BB団員も、AK47を乱射しながら猛烈な勢いで、突撃してくる。



「上からもかっ! 反撃しろっ! うっ!」


「グレネードッ! 離れろっ! うぐわっ!」


「ガソリン・カクテルを喰らえっ!」


「オマケに、くしゃみ爆弾だっ!」


「形勢逆転だなっ! ライルズ」


「はっ! 言ってろっ! ショーン」


 イナゴ人間の海トカゲ団員は、斜め上に短弓を連射したが、頭をマグナム弾に貫かれてしまう。


 落下してきた手榴弾に、防弾兵は身構えるが、やはり衝撃を受けて、後ろに転んでしまう。



 更には、赤アリ人間や黒人BB団員たちが、火炎瓶や、円形の陶器を投げてきた。


 海トカゲ団側が、混乱に陥る中、ショーンとライルズ達は、最後の決闘に挑もうとしていた。

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