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第109話 窮地


 ショーンはドアの右側から、敵が反撃して来ないか、様子を探るが反応はない。



「終わったか? いや、やっぱりな」


「副隊長が死んだぞっ! 撃ちまくれーー!」


「あの男を撃ち殺せっ!」


「魔法を使うっ! 喰らええっ!」


 銃撃が始まると、ショーンは直ぐさま、壁の奥へと身を引っ込めた。


 防弾兵たちにより、ミニミから機銃掃射が開始されると、凄まじい十字砲火が飛んでくる。



 黄色いリザードマンの海トカゲ団員は、半自動散弾銃ベネリM3を発射する。


 インキュバスの海トカゲ団員は、グレイブを両手で構えて、氷結魔法を切っ先から放ちまくる。



「不味いな? 上からも、銃撃してくる…………ここは、今来た道を引き返すしか? あ?」


「ゴーレムを機動させろっ! 今直ぐにだ」


「今、私がやるわっ!」


「撤退だっ! 敵部隊とゾンビが迫っているぞ」


「あっちから、大量のゾンビが来るっ!」


 ショーンを包囲する、海トカゲ団員は、二階や三階のバルコニーからも、集中砲火を加えてくる。


 遮蔽物から、M2ブローニングを乱射している銀髪オールバックの海トカゲ団員は、大声で叫ぶ。



 竹箒から、散弾のように火玉を放っていた、青髪ショートの女性エルフは床に手を付ける。


 すると、そこが魔力で緑色に光り、警備装置を作動させたらしく、何かが上がってくる。



 そして、四本の柱に囲まれた、ゴーレムが機動して、動き出し始めた。



 さらに、中央廊下からは、逃げてきたばかりの防弾兵が、自動散弾銃スパス15を背後に連射する。


 また、赤いオーガー族の海トカゲ団員は、HK417を抱えながら逃げてくる。



「グオオオオオオ~~!!」


「ギュアアアアーー!」


「グルアアアア」


「ゲロロ、ゲロロロロッ!!」


「連中も、来ているのか? これは速く逃げなきゃなっ!」


「ガアガア」


「グガアアッ!!」


 マッスラーが、ドタドタと足音を立てながら走っていき、その後に様々な群れが続く。


 じゃんピンガー、フレッシャー等を中心とするゾンビ軍団が、中央廊下から迫ってくるのだ。



 ショーンは、そちらに銃撃が向いているうちに、部屋から出ていこうと、ドアを目指す。


 だが、事務机とPCを避けながら進む、彼の正面にも、ジャンパーとエングラー達が行く手を塞ぐ。



「ギャアアアアーーーー!!」


「ギルアア」


「うわわわわ、お前らっ! ぐぅ…………うぐっ!」


 エングラーの叫び声は、空気を振動させるほど、強力な超音波として、ショーンを攻撃する。


 しかも、それに合わせて、ジャンパーが回し蹴りを放ってきたのだ。



「う、頭が揺れる? ヤバい、死んでしまうっ! 次のっ! スカルビーマーかっ! それに、ウォーリアーもっ!」


「グアアラ~~~~」


「ウグルルルル」


 今度は、ショーンの前に、スカルビーマーが現れると、同時に両目から連続で、ビームを放つ。


 さらに、その攻撃に合わせて、ウォーリアー化したBB団員が、ロングマチェットを振るう。



 彼は、ふらつきながらも、それを頭を下げつつ前に倒れるようにして、回避に成功する。


 そして、反撃のために、トリップソードを構えながら、連中に立ち向かって行った。



「一人で、この数を相手にするのは辛いが、それでも殺るしかないっ!」


「ギャアアアア」


「グララララ」


「グルアア~~~~」


 様々なゾンビ達が、ショーンの前に立ちはだかり、行く手を邪魔する。


 彼は、トリップソードを振るい、ゾンビの頭を切り落とし、ウォーリアーを蹴っ飛ばす。



 さらに、エングラーが大声で騒がぬように、バックラーで顔を殴りながら後ろに下がる。


 そして、再び後方にバックステップで下がりながら、ゾンビ達から距離を取る。



 しかし、奥から動く使者の群れは、途切れる事なく、続々と現れる。



「グルアッ!!」


「ギャピーー」


「これ以上は、外に出てしまう…………向こうは、機銃陣地が? 今、出ていけば蜂の巣だな…………」


 二体のゾンビ達が、前に飛び出てくると、ショーンは額から汗を流す。


 後ろを振り向いた、彼の耳には、機銃掃射とライフルによる銃撃音が聞こえる。



「グルアアアアーーーー」


「終わったか? だが、死ぬなら、それでも跑いてっ?」


「ファイヤー、ファイヤー、ヘルファイア」


 正面から、海トカゲ団員のウォーリアーが、飛び上がりながら、コンバットナイフを振るってきた。


 それを、彼はトリップソードで、受け止めながら、他のゾンビ達による攻撃を避ける。



 スカルビーマーのビーム攻撃や、ジャンパーによる正拳突きを交わしながら、後退していく。


 だが、ゾンビ達の勢いは凄まじく、直ぐに左右から包囲するように走ってくる。



 しかし、いきなり、連中の後ろから火炎放射が噴射され、女性が叫びながら火炎玉を乱発する。



「ショーン、無事ね? 今、射ちまくってるから、ソイツを肉盾にしてっ!」


「ギャアアアアーー」


「ウアアーーーー!!」


「リズ、助かったっ! 俺も、今そっちまで、下がるからなっ!」


「グエエ?」


 リズは、自身に注意を惹き付け、小さな火球をマジックロッドから連発しまくる。


 火炎放射や魔法に当たってしまった、ゾンビ達は燃えながら叫びまくり、やがては倒れてしまう。



 彼女の指示した通りに動くべく、ショーンはウォーリアー化しているBB団員が持つ武器を狙う。


 そして、コンバットナイフを握る手を切り落とし、顔面をバックラーで殴る。



「今だっ!」


「やるわよ」


「グアアアァァ」


 ショーンとリズ達による連携攻撃で、肉盾にされたBB団員ウォーリアーは、燃えながら崩れる。



「リズ、あの負傷者の避難所は? どうして、こっちまで、逃げられたんだ?」


「あの後、直ぐにゾンビ達が襲撃してきて、負傷者どころじゃなくなったのよっ! だから、私も逃げてきたわけっ!」


 ショーンとリズは、開かれたままのドアから、裏面ホールで戦っている海トカゲ団を睨む。


 左右から、様子を探りながら、二人は話し合い、ゾンビ達が後ろから来るのも警戒する。



「お前ら、増援部隊が到着したっ! 早く体制を立て直せっ! 直ぐに、ゾンビ達を倒せっ! 次はアリ人間やBB団員が来るぞっ!」


「分かっているわね? ここが、最後の砦よっ! 連中を撃退しなければ、私たちが死ぬだけだわっ!」


「了解っ!!」


「速やかに殲滅する」


 ライルズとスザンナ達が、エリート部隊を引き連れて、バリケードに登場する。


 二人は、増援部隊に素早い射撃を行わせつつ、ゾンビ達の数を減らしていく。



 さらに、ゴーレム達が左側に並ぶ、幾つものドアや通路から迫る敵を倒していく。


 こうして、海トカゲ団員たちは、何とか防御体制を維持しながら応戦している。



「アイツら…………今が、チャンスだなっ! リズ、援護を頼むっ!」


「えっ? ちょっ! 待ってよ、仕方ないわねっ!」


「正面は、バリケードで塞げっ! 右側の通路やドアから来る連中に、攻撃を集中しろっ!」


「防御体制を立て直すのよっ! ゾンビが出て来なくなったら、ドアや通路も塞ぎなさいっ!」


 ショーンは、自分から見て、左側に射撃が行われている間に、密かに走り出していく。


 それを見て、目を丸くしながらも、リズは直ぐさま、マジックロッドを構える。



 ライルズは、ベレッタを両手で握り、部隊の指揮を取るだけでなく、自らも拳銃弾を放っている。


 スザンナも、ベレッタから弾丸を放つが、それは風と雷の魔法を纏い、威力と速度が向上している。



 二人の射撃と、海トカゲ団員たちによる機銃掃射を中心とする銃撃は、ゾンビ達を寄せ付けない。



「グアアアァァァァ」


「グャーーーーーー」


「今だっ! 塞ぎに行けっ!」


「俺も今やるぜっ! ライルズッ!」


 ゾンビ達に、ライルズや海トカゲ団員たちは、完全に気を取られていた。


 その隙に、ショーンは懐から取り出した、発煙弾を、幾つか床に転がしまくった。



「ぐわ、ショーン? 居たのか? 決着を着けてやるぜっ!」


「それは、こっちの台詞だっ! かかってこい、クズ野郎っ!」


 ライルズとショーン達は、灰煙が充満する中、互いの姿を探して、大声で叫ぶ。


 こうして、混乱する戦場で、両者による最後の戦いが始まろうとしていた。

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