ショーンはドアの右側から、敵が反撃して来ないか、様子を探るが反応はない。
「終わったか? いや、やっぱりな」
「副隊長が死んだぞっ! 撃ちまくれーー!」
「あの男を撃ち殺せっ!」
「魔法を使うっ! 喰らええっ!」
銃撃が始まると、ショーンは直ぐさま、壁の奥へと身を引っ込めた。
防弾兵たちにより、ミニミから機銃掃射が開始されると、凄まじい十字砲火が飛んでくる。
黄色いリザードマンの海トカゲ団員は、半自動散弾銃ベネリM3を発射する。
インキュバスの海トカゲ団員は、グレイブを両手で構えて、氷結魔法を切っ先から放ちまくる。
「不味いな? 上からも、銃撃してくる…………ここは、今来た道を引き返すしか? あ?」
「ゴーレムを機動させろっ! 今直ぐにだ」
「今、私がやるわっ!」
「撤退だっ! 敵部隊とゾンビが迫っているぞ」
「あっちから、大量のゾンビが来るっ!」
ショーンを包囲する、海トカゲ団員は、二階や三階のバルコニーからも、集中砲火を加えてくる。
遮蔽物から、M2ブローニングを乱射している銀髪オールバックの海トカゲ団員は、大声で叫ぶ。
竹箒から、散弾のように火玉を放っていた、青髪ショートの女性エルフは床に手を付ける。
すると、そこが魔力で緑色に光り、警備装置を作動させたらしく、何かが上がってくる。
そして、四本の柱に囲まれた、ゴーレムが機動して、動き出し始めた。
さらに、中央廊下からは、逃げてきたばかりの防弾兵が、自動散弾銃スパス15を背後に連射する。
また、赤いオーガー族の海トカゲ団員は、HK417を抱えながら逃げてくる。
「グオオオオオオ~~!!」
「ギュアアアアーー!」
「グルアアアア」
「ゲロロ、ゲロロロロッ!!」
「連中も、来ているのか? これは速く逃げなきゃなっ!」
「ガアガア」
「グガアアッ!!」
マッスラーが、ドタドタと足音を立てながら走っていき、その後に様々な群れが続く。
じゃんピンガー、フレッシャー等を中心とするゾンビ軍団が、中央廊下から迫ってくるのだ。
ショーンは、そちらに銃撃が向いているうちに、部屋から出ていこうと、ドアを目指す。
だが、事務机とPCを避けながら進む、彼の正面にも、ジャンパーとエングラー達が行く手を塞ぐ。
「ギャアアアアーーーー!!」
「ギルアア」
「うわわわわ、お前らっ! ぐぅ…………うぐっ!」
エングラーの叫び声は、空気を振動させるほど、強力な超音波として、ショーンを攻撃する。
しかも、それに合わせて、ジャンパーが回し蹴りを放ってきたのだ。
「う、頭が揺れる? ヤバい、死んでしまうっ! 次のっ! スカルビーマーかっ! それに、ウォーリアーもっ!」
「グアアラ~~~~」
「ウグルルルル」
今度は、ショーンの前に、スカルビーマーが現れると、同時に両目から連続で、ビームを放つ。
さらに、その攻撃に合わせて、ウォーリアー化したBB団員が、ロングマチェットを振るう。
彼は、ふらつきながらも、それを頭を下げつつ前に倒れるようにして、回避に成功する。
そして、反撃のために、トリップソードを構えながら、連中に立ち向かって行った。
「一人で、この数を相手にするのは辛いが、それでも殺るしかないっ!」
「ギャアアアア」
「グララララ」
「グルアア~~~~」
様々なゾンビ達が、ショーンの前に立ちはだかり、行く手を邪魔する。
彼は、トリップソードを振るい、ゾンビの頭を切り落とし、ウォーリアーを蹴っ飛ばす。
さらに、エングラーが大声で騒がぬように、バックラーで顔を殴りながら後ろに下がる。
そして、再び後方にバックステップで下がりながら、ゾンビ達から距離を取る。
しかし、奥から動く使者の群れは、途切れる事なく、続々と現れる。
「グルアッ!!」
「ギャピーー」
「これ以上は、外に出てしまう…………向こうは、機銃陣地が? 今、出ていけば蜂の巣だな…………」
二体のゾンビ達が、前に飛び出てくると、ショーンは額から汗を流す。
後ろを振り向いた、彼の耳には、機銃掃射とライフルによる銃撃音が聞こえる。
「グルアアアアーーーー」
「終わったか? だが、死ぬなら、それでも跑いてっ?」
「ファイヤー、ファイヤー、ヘルファイア」
正面から、海トカゲ団員のウォーリアーが、飛び上がりながら、コンバットナイフを振るってきた。
それを、彼はトリップソードで、受け止めながら、他のゾンビ達による攻撃を避ける。
スカルビーマーのビーム攻撃や、ジャンパーによる正拳突きを交わしながら、後退していく。
だが、ゾンビ達の勢いは凄まじく、直ぐに左右から包囲するように走ってくる。
しかし、いきなり、連中の後ろから火炎放射が噴射され、女性が叫びながら火炎玉を乱発する。
「ショーン、無事ね? 今、射ちまくってるから、ソイツを肉盾にしてっ!」
「ギャアアアアーー」
「ウアアーーーー!!」
「リズ、助かったっ! 俺も、今そっちまで、下がるからなっ!」
「グエエ?」
リズは、自身に注意を惹き付け、小さな火球をマジックロッドから連発しまくる。
火炎放射や魔法に当たってしまった、ゾンビ達は燃えながら叫びまくり、やがては倒れてしまう。
彼女の指示した通りに動くべく、ショーンはウォーリアー化しているBB団員が持つ武器を狙う。
そして、コンバットナイフを握る手を切り落とし、顔面をバックラーで殴る。
「今だっ!」
「やるわよ」
「グアアアァァ」
ショーンとリズ達による連携攻撃で、肉盾にされたBB団員ウォーリアーは、燃えながら崩れる。
「リズ、あの負傷者の避難所は? どうして、こっちまで、逃げられたんだ?」
「あの後、直ぐにゾンビ達が襲撃してきて、負傷者どころじゃなくなったのよっ! だから、私も逃げてきたわけっ!」
ショーンとリズは、開かれたままのドアから、裏面ホールで戦っている海トカゲ団を睨む。
左右から、様子を探りながら、二人は話し合い、ゾンビ達が後ろから来るのも警戒する。
「お前ら、増援部隊が到着したっ! 早く体制を立て直せっ! 直ぐに、ゾンビ達を倒せっ! 次はアリ人間やBB団員が来るぞっ!」
「分かっているわね? ここが、最後の砦よっ! 連中を撃退しなければ、私たちが死ぬだけだわっ!」
「了解っ!!」
「速やかに殲滅する」
ライルズとスザンナ達が、エリート部隊を引き連れて、バリケードに登場する。
二人は、増援部隊に素早い射撃を行わせつつ、ゾンビ達の数を減らしていく。
さらに、ゴーレム達が左側に並ぶ、幾つものドアや通路から迫る敵を倒していく。
こうして、海トカゲ団員たちは、何とか防御体制を維持しながら応戦している。
「アイツら…………今が、チャンスだなっ! リズ、援護を頼むっ!」
「えっ? ちょっ! 待ってよ、仕方ないわねっ!」
「正面は、バリケードで塞げっ! 右側の通路やドアから来る連中に、攻撃を集中しろっ!」
「防御体制を立て直すのよっ! ゾンビが出て来なくなったら、ドアや通路も塞ぎなさいっ!」
ショーンは、自分から見て、左側に射撃が行われている間に、密かに走り出していく。
それを見て、目を丸くしながらも、リズは直ぐさま、マジックロッドを構える。
ライルズは、ベレッタを両手で握り、部隊の指揮を取るだけでなく、自らも拳銃弾を放っている。
スザンナも、ベレッタから弾丸を放つが、それは風と雷の魔法を纏い、威力と速度が向上している。
二人の射撃と、海トカゲ団員たちによる機銃掃射を中心とする銃撃は、ゾンビ達を寄せ付けない。
「グアアアァァァァ」
「グャーーーーーー」
「今だっ! 塞ぎに行けっ!」
「俺も今やるぜっ! ライルズッ!」
ゾンビ達に、ライルズや海トカゲ団員たちは、完全に気を取られていた。
その隙に、ショーンは懐から取り出した、発煙弾を、幾つか床に転がしまくった。
「ぐわ、ショーン? 居たのか? 決着を着けてやるぜっ!」
「それは、こっちの台詞だっ! かかってこい、クズ野郎っ!」
ライルズとショーン達は、灰煙が充満する中、互いの姿を探して、大声で叫ぶ。
こうして、混乱する戦場で、両者による最後の戦いが始まろうとしていた。