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第108話 変装しながら?


 ショーンとリズ達は、豪華絢爛な応接室から逃げて、廊下に出ていく。



「よし、右は? ゾンビだらけだっ! この部屋は鍵が…………なら左に向かうかっ!」


「左からは、防弾兵が来ているわ」


「何としても、敵を押さえるっ! 防弾兵が来るまで、持ちこたえるのよっ!」


「この数では、押しきられてしまうっ!」


 ショーンは、左右に首を振って、すぐに左側へと駆け出していった。


 その背中を追って、リズも素早く、マジックロッドを抱えながら廊下を疾走する。



 HK416を連射して、弾倉を取り換えながら、銀髪ポニーテールの海トカゲ団員は叫ぶ。


 オークの海トカゲ団員は、両手でグロック17を握り、機銃掃射みたいに連射する。



 スピットゲロー、ファットゲロー、マッスラー等を含むゾンビ達の大集団が走ってくる。


 それに、左側の部屋から何人か、海トカゲ団員が飛び出てきて、銃撃や魔法を放つ。



「どうやら? あそこは、バリケードで防ぐ積もりらしいな?」


「前方にも、防弾兵たちが見えるわっ! まだまだ、敵は多いわっ!」


 ショーンは、後ろを振り返り、ソファーや棚を運ぶ海トカゲ団員たちを見た。


 リズは、十字路の左側に向けて、銃撃戦を行っている防弾兵たちを目にした。



「下がれ、エリート兵は何処に行ったんだっ! 連中なら、魔法も銃撃も平気だろう」


「とにかく、撃ちまくれっ! ぎゃああああっ!?」


「ガトリングガンだっ! 何発も喰らったら、貫通してしまうぞっ!」


「ダメだっ! タワーシールドでも防げないっ!」


 ショーンとリズ達は、敵と戦う部隊を走りながら眺めるが、かなり苦戦しているようだ。


 棚を橫だけでなく、後ろに三列も置いて、連中は敵の銃撃や魔法攻撃を防いでいる。



 小弓から矢を連射する、青い漢服を来ている中華系の海トカゲ団員は、身を低くする。


 ミニミから、銃火を吹かせ続ける白人の防弾兵は、連続で放たれるガトリングに殺られてしまう。



 アラブ系の防弾兵は、弾切れしたため、撃つのを止めて、ミニミを抱えたまま床に伏せる。


 タワーシールドに隠れながら、青髪白人の海トカゲ団員は、ステッキから氷結魔法を連発する。



「ここは、先を急ぐっ! 戦闘は無視だっ! 奴らが死ぬなら構わんっ!」


「そうねっ! 私たちの最優先目標は、敵の司令部を攻撃する事だしいっ!!」


「うぐっ! AK弾と魔法がっ! ぐわ?」


「反撃するわよっ! 後方に負傷者を連れてって」


 ショーンは、リズを連れて、十字路を右に曲がっていき、どんどん最前線から遠ざかってゆく。


 その間も、二人は流れ弾が当たらないうちに、廊下を必死で走り、奥へと逃げていく。



 彼等が、逃走している事に気がつかない海トカゲ団員たちは、敵と交戦を続ける。



 防弾兵は、絶え間なく発射される弾丸と雷撃魔法に肩を撃たれて、後ろに倒れてしまう。


 青いターバンを巻いているインド系ワーウルフ女性は、虎型砲デグから、火旧を連発する。



「右に曲がるぞっ! いつまでも、背中を見せていたら、流れ弾に当たってしまうからなっ!」


「じゃあ、ここからは部屋を通りましょうっ! ここなら開くわっ!」


 戦場を切り抜け、海トカゲ団の後方部隊を叩くべく、ショーンは曲がり角を左側に進む。


 そして、リズは右側のドアを開き、室内に突入していくと、そこは広い食堂だった。



「誰だ、貴様らはっ! 敵の変装かっ!」


「いや、違うっ! 後退命令だっ! それを伝えに走って来たんだ」


「無線が壊されたり、故障したり、最前線が混乱しているのよっ!」


 グロック17を向けてきた、白衣を着ている、ミイラの海トカゲ団員は、二人を怒鳴る。


 おそらくは、医者や衛生兵だろうと思った、ショーンは出鱈目を話す。



 リズも、適当な事を言って、何故ここに来たのかと言う、理由を、でっち上げる。


 そうすると、奴は再び負傷者を治療するため、銃を下ろして、下がり始めた。



「そうか、だったら、この場を死守するんだなっ!」


「いや、後方に援軍を呼びに行かなくては成らないんだっ! 敵部隊だけでなく、ゾンビまで迫っているっ!」


「そうそうっ! もう、そこまで、敵が迫っているのよ?」


 ミイラの医者は、床に寝かされた負傷者を手当てしながら、二人に留まるように命令する。


 だが、ショーンとリズ達は後方に行って、敵の司令部を破壊するか、指揮官を殺害する目的がある。



「だったら、エルフは残れっ! お前が援軍を連れてこいっ!」


「はいっ! 仕方ないが、俺が先に行ってくる、お前は負傷者を頼むぞ」


「分かったわ、私は手当てを手伝いながら、ここで殿をするわ」


 ミイラの医者は、命令してきたので、ショーンは仕方なく、リズを残そうとするしかない。



「リズ、頼むぞ…………」


「ショーン、こっちも頼んだわよ」


 ショーンは目配せすると、早々に反対側のドアへと向かっていき、リズは負傷者に近寄る。



「ふぅ? 一人だけの戦闘かっ! だが、それでも冒険者として、やる事を、やるだけだっ!」


「こっちから、アリ人間が来ているっ!」


「連中を止めに行くぞ、とにかく走れっ!」


 ショーンは、次のドアを開けて、部屋を通って行こうとするが、そこに海トカゲ団員たちが現れる。


 左側に見える十字路では、キリギリス人間の海トカゲ団員が、ベレッタを撃っている。



 さらに、奴の上では、天井に取り付けられた紫水晶が、レーザーを放っていた。


 右側からは、ロングソードとヒーターシールドを持っている、エリート兵が走ってくる。



「ここは、オフィスに成っていたのか? こっちは武器保管庫か? 懐かしいな…………」


 ショーンは、海トカゲ団員や警備システムを無視して、ひたすら前に進み続ける。


 オフィスでは、騎士型ロボットやゴーレム等と出会い、廊下では様々なゾンビを見かける。



「混乱しているし、押され気味だな? おっ! ここが、後方司令部か?」


 そう呟きながら、ショーンはドアを開くと、ついに裏側ホールへと飛び出た。


 ここには、大量の物資と武器が置いてあり、棚や土嚢まで積まれて、バリケードが構築されている。



 当然ながら、海トカゲ団員が大慌てで、弾薬箱を運んだり、木箱を持ってくる。


 さらに、陣地には、M2ブローニングが三丁ほど、三脚に載せられていた。



「おいっ! お前、何しに来たっ! 敵前逃亡は、即座に射殺するっ! その格好から察するに、バイトで雇われた、チンピラ社員かっ!」


「た、隊長っ! ここには援軍を呼びに来ましたっ! また、各所が敵やゾンビに突破されつつ有りますっ! 自分は武器弾薬を取りに来るように言われたから来たんです」


 青いベレー帽を被る白人の指揮官から、ショーンは先程と同じような罵声を浴びる。


 彼は、何時も着ているカーキー服の上に、ベストを着用して、帽子を頭に被っているだけだ。



 つまり、中途半端な服装なため、向こう側から見れば、下っ端が勝手に逃げてきたように思える。


 そして、多数存在する、エリート兵や防弾兵から睨まれて、クロスボウや魔法武器を向けられる。



「無線機は壊されるわ、無事なのは故障するわ、かなり最前線は混乱していますっ!」


「なら、弾薬箱を持って、今すぐ走れっ! 直ぐに定位置に戻り、死守してこいっ!」


 ショーンの言い訳を聞いて、指揮官は彼を叱責しながら、棚の上に置いた水晶玉に目を向けた。



「分かりましたっ! では…………」


 命令を素直に聞いた振りをして、ショーンは左側にある弾薬箱が、山積みにされた場所へと走る。



「…………よしっ! 梱包爆薬、C4、火炎瓶、グレネード、派手な花火が上がるぜ」


 ショーンは、弾薬箱を拾う次いでに、時限爆弾のタイマーをセットする。


 さらに、火炎瓶とグレネードを幾つか入手すると、何気なく部屋に戻ろうとする。



「では、私は前線に戻りますっ!」


 そう言って、部屋から最前線に戻る振りをして、そこから彼は火炎瓶を、そこら中に投げた。


 さらに、グレネードを転がしまくり、バリケードは連続して、爆発による炎と煙に包まれた。



「やったか?」


 室内に入った、ショーンはドアの右側から、敵が反撃して来ないか、慎重に様子を伺っていた。

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