「―――それなら、こういうのはどうだ?お前達、ヴァーミリオンに留学してみる気はないか?」
と八雲達の予想の斜め上を行く提案を持ち出すイェンリンに一同沈黙してしまった―――
「……は?なに?……いま、留学って言ったか?」
訝しげな表情で八雲がイェンリンに問い掛けると、
「ああ、そう言ったぞ。人の話はちゃんと聞けよ?」
と、諫めるように言い返してくる。
「ちょっとなに言っているのか、分からないんだけど?留学?俺と、それに雪菜も一緒ってことか?」
「―――だからそう言っておるだろう!」
「いやいやいやいや!どこからそんな話が出てきた!?」
「王族や貴族が他国の名門校に留学して箔を着けるという話はよくある話だ。お前は皇帝だし雪菜は白神龍の御子だし、留学してこの世界のことを学んでも何らおかしくはない」
淡々と説明するイェンリンの言葉を聞いてノワール達に視線を向けるが、何かおかしなことでも言っているのか?と言わんばかりに彼女は冷静だ。
「確かにな。八雲自身が異世界から突然現れてシュヴァルツの皇帝という地位にまでなったが、今までの経歴はまったく無に等しい。どこか有名な学校くらい留学でもして出ておいてもいいだろう」
「おい!?ノワールまで何言って―――」
「―――アルブムにも学校はあるけれど、ヴァーミリオンの学校はこの大陸でも一番歴史があるわ。雪菜も白龍城でずっと学ぶよりは外の国で学ぶいい機会でもあるわね」
「―――ちょ、ちょっと白雪も!?」
保護者的立場でもあるノワールと白雪が乗り気になっていて八雲と雪菜が困惑する。
「勿論この留学はあくまで表向きのことだ」
イェンリンのその言葉に八雲が眉をピクリと動かして、その意図に耳を澄ます。
「そこでさっきの話に戻るが、蒼神龍の御子が狙っているのが八雲だと見立てたとして、ヨルンの件に絡んでいるのは余だけだ。八雲の狙われる理由は不明だが、その八雲を狙うために雪菜まで利用されそうになった。そこで余と八雲は正直何が襲って来ても自力でどうとでも出来る力があるが……雪菜、お前今のlevelはいくつだ?」
全員の視線が雪菜に向けられると、ウッと息を呑んだ雪菜が一度深呼吸をして、
「Level……5です……」
と答えてイェンリンが白雪にジト目を向けながら、
「白雪……過保護にも程があろう……」
と呆れていた。
「―――仕方ないじゃない。雪菜を戦わせる気なんて無かったのだから」
白雪が悪びれずに答える。
「八雲はLevelいくつなの?私を助けてくれた時も凄かったから強いのは分かっているんだけど」
「俺?今で―――」
【ステータス】
【Name】九頭竜 八雲(ヤクモ=クズリュウ)
【年齢】18歳
【Level】131
【Class】黒神龍の伴侶 超越者 転移者 皇帝
【超越者】Level.100を越えた者
リミット・ステータス
【生命】 9,999,999/9,999,999
【魔力】 9,999,999/9,999,999
【体力】 9,999,999/9,999,999
【攻撃】 9,999,999/9,999,999
【防御】 9,999,999/9,999,999
【知力】 100/100
【器用】 100/100
【速度】 100/100
【物理耐性】100/100
【魔法耐性】100/100
※リミット・ステータス
ステータスの表示上限数値
オーバー・ステータス
【生命】41,961,791/41,961,791
【魔力】27,974,527/27,974,527
【体力】27,974,527/27,974,527
【攻撃】41,961,791/41,961,791
【防御】27,974,527/27,974,527
【知力】1,000/1,000
【器用】1,000/1,000
【速度】3,000/3,000
【物理耐性】3,000/3,000
【魔法耐性】3,000/3,000
※オーバー・ステータス
リミット上限突破分のステータス数値
《神の加護》
『成長』
取得経験値の大量増加【覚醒】
各能力のLevel UP時の上昇数値の大量増加【覚醒】
理性の強化
スキルの取得向上強化
『回復』
HP減少時に回復・超加速【覚醒】
MP減少時に回復・超加速【覚醒】
自身が直接接触している他者の回復・超加速
自身・他者同時に広域範囲回復・超加速
自身・他者の欠損部位の再生
死亡時に完全複製した身体を交換・過去24時間前の身体と交換
『創造』
素材を加工する能力
武器・防具の創造能力
創造物への付与能力
疑似生命の創造能力
疑似生命への自我の移植能力
死亡時に完全複製した身体を創造・過去24時間前の身体を複製
『終末』
自身が死亡時に万物を滅する白き光を放つ
(自己のlevel能力を越える者は耐性によりダメージを負う)
《黒神龍の加護》
『位置把握』
自身の位置と黒神龍、さらに眷属のいる位置が把握出来る
『従属』
黒神龍の眷属、自身の加えた眷属を従える
『伝心』
黒神龍とその眷属、さらに自身が加えた眷属との念話が可能
『収納』
空間を開閉して物質を保管する能力
『共有』
黒神龍と同じ寿命を得る
『空間創造』
自身の固有空間を創造し、その中に建造物、生物を置く能力
『龍印』
性交にて精を受けた全ての異性に『龍紋』の紋章が現れる
加護を贈与した黒神龍以外の異性で御子が性交し紋章を持つものは能力が向上する【覚醒】
『龍紋』を与えるか与えないかを選択できる
《取得魔法》
『身体強化』
魔力量に応じて体力・攻撃力・防御力上昇【覚醒】
『対魔法防御』
魔力量に応じて対魔法攻撃防御能力上昇【覚醒】
『火属性魔術』
極位/極位 神位準備
『水属性魔術』
極位/極位 神位準備
『土属性魔術』
極位/極位 神位準備
『風属性魔術』
極位/極位 神位準備
『光属性魔術』
極位/極位 神位準備
『闇属性魔術』
極位/極位 神位準備
『無属性魔術』
極位/極位 神位準備
《取得スキル》
『鑑定眼』
物質の理を視る
『言語解読』
あらゆる種族の言語理解・文字解読・筆記可能
『酸耐性』
あらゆる酸に対する耐性
『毒耐性』
あらゆる毒に対する耐性
『精神耐性』
あらゆる精神攻撃に対する耐性
『身体加速』
速度を瞬発的に上昇させる【覚醒】
『思考加速』
任意で思考を加速させる【覚醒】
『索敵』
周囲の索敵能力 索敵対象:生物・物質
索敵マップにマッピング能力
『威圧』
殺気により恐慌状態へ堕とす
Levelの低い対象では死に繋がる
『寒暑耐性』
極寒・灼熱エリアで体温調整し適温を維持する
『限界突破』
能力の上限を一定時間✕3倍(現在突破維持時間0.5時間)
《性技スキル》
『受精操作』
妊娠操作が可能
『絶倫』
精力の増加
『神の手』
愛情をもって触れる異性に快感を与える
感度の調整が可能
『完堕ち』
性交によって異性を完全に陥落させる
堕とされた異性は性交に関してあらゆる命令に従う
「―――Levelは131だな」
「へぇ~131かぁ……へ?ひゃくさんじゅう……いやいや!嘘でしょ!?え?そんな人いるの!?」
雪菜がひとりボケツッコミをかましてくれているが、隣で聞いていた白雪も驚いている。
「イェンリンは俺より強いぞ?」
「まぁな♪ これでも世界最強の人類だからな!フッフーン♪ 敬えよ」
「ヒェッ!ははあぁ~~~~!イェンリンさまぁ~!」
両手を上からテーブルに下ろしてお辞儀をする雪菜の謎の敬いは置いておくとして、先ほどの話しの続きをイェンリンが語り出す。
「今聞いた通り雪菜のLevelは壊滅的に低い。そうなってくると遠く離れたアルブムで雪菜ひとり、何かあればどう仕様もない事態に陥りかねん。現にダイヤモンドが護衛に就いていながらも雪菜は誘拐されていることは現実として受け止めねばならんだろう」
「―――そのために俺達を留学という形でヴァーミリオンに集めようと?」
イェンリンの話しから全容が見えてきた八雲が問い掛ける。
「その通りだ。雪菜を余と八雲、それにそれぞれの神龍が持つ部隊から精鋭を組んでおけば、蒼神龍の御子が何か仕掛けてきたとしても対処しやすい。いや……むしろ仕掛けてもらわなければ困る」
「エッ?手を出してくることを望んでいるんですか?」
雪菜の質問にイェンリンがニヤリと笑みを浮かべながら、
「でなければいつまでもこの件が解決出来ずに時間だけが無駄に過ぎることになる。余はこう見えて皇帝だからな。いつまでもヨルンの孫などに構っているヒマなどないわ」
と言い捨てると、八雲もそれには同意だった。
「確かに俺達が固まっていれば、安全と同時に相手の襲撃率も集中して上がるってわけか……標的をどうにかしたいって思ってるなら絶好のチャンスだからな」
そこで八雲は少し考え込むと、
「分かった。ヴァーミリオンへの留学の件、俺は受けるよ。ただ、ティーグルのエドワード王やエヴリンにも話を通しておかないといけないから時間が欲しい」
「構わんよ。別に明日すぐに立てという話でもない。だが八雲、ヴァーミリオンに行く時は―――あの船に乗せてくれ!」
「はぁ~絶対いつかそれを言い出すと思ったよ……いいけど、その時はエーグルにエレファンを経由してから行くことになるぞ?それでもいいなら構わないけど」
「勿論そんなこと構わん!今から楽しみだなぁ紅蓮♪」
「まったく……ゴメンなさいね。八雲さん」
紅蓮が呆れているところに雪菜が白雪を見て、モジモジしながら問い掛ける。
「ねぇ白雪?私も……八雲について行ってもいいかな?」
「ダメと言っても行きたいのでしょう?……仕方がないからついて行ってあげるわよ」
「やったぁ♪ ホントありがと白雪!愛してるぅ~♪」
「バッ?!バカ!なにを突然……/////」
(あれ?雪菜はそっち系の百合百合しいモードはなかったと思うんだけど?いや、どっちかと言えば白雪の方が……)
「何かしら、九頭竜八雲?……私の顔に何かついているの?」
「可愛い目と鼻と口」
「―――子供なの!?」
そんな言い合いをしてから八雲はエドワードやアルフォンス、クリストフへの説明とエヴリンにも説明しておかなければならないことを踏まえて留学への出発は一週間後とした。
途中エーグルとエレファンに立ち寄るのでヴァーミリオンへの到着は更にその後になる。
「―――それと、天孤を捕まえる時に少し話したけど、レオパールの魔神の件もここで話しておこうと思う」
「おお!!それだ!!!―――その話しが聴きたくて待っていたのだ!」
ずっと気になっていたイェンリンが身を乗り出してくる。
「近い!近い!あと胸を寄せるな!!まったく……それじゃあ長くなるけど―――」
―――八雲はレオパール魔導国で起こったことを初めから話して聴かせた。
最後に魔神を討伐した魔術については、イェンリンはかなりしつこく訊ねて来たが何とか濁して光属性魔術とだけ説明して終わらせた。
「―――しかし三千年前の魔神か……さすがに余も本物は見たことがない。羨ましい」
「いや、あんなの二度とお会いしたくないから。今回俺の手で討伐出来たのも三千年前にあいつ等と戦った経験があるノワールと
「まぁひとりで倒したいという考えはエゴでしかないからな。余はエゴの塊を自負している!」
「―――それ自慢することじゃないよね?俺がこの話をしたのは、そんな魔神なんて伝説の生き物もいつ突然出てくるか分からないってことを言いたくて。光属性に弱いっていうのも、いつまで通用するか分かったもんじゃない」
「危機意識が高いことは為政者として重要な素質だ。さて、そろそろ余は眠たくなってきたことだし、今日はこの辺でお開きとしようではないか」
「そうだな。明日はアークイラ城に行ってエドワード王達に話しをしないと」
「余も一緒に行くぞ。話を通しておかねばな」
「―――分かった」
そうして解散となった神龍と御子達だったが、そこで白雪が―――
「雪菜、貴女はもう少し彼と話していたら?別にこの後は休むだけなのだし。好きになさいな」
と言って雪菜を八雲の部屋に置いてひとり部屋を出ていった。
「クックックッ♪ あいつもなかなか気が利くじゃないか?―――雪菜よ」
ノワールが雪菜を見つめる。
「―――は、はいっ?!」
雪菜は玉座の間で『威圧』を受けてからノワールに対して微妙に身構えてしまっている。
「別に緊張する必要はない。玉座では少しキツくあたり過ぎた。すまなかったな」
「い、いえ!!ノワールさんの言ってたこと、本当のことだと思います。だからまた同じ過ちを繰り返さないためにも気をつけます!」
「そう言ってもらえると助かる。それと、八雲とは積もる話もあるだろうから、ゆっくりしていくといい。なんなら此処に泊まっていっても構わんからな!正妻の我が許す」
城主であるノワールのお泊まりオッケー宣言に雪菜は顔を真っ赤にするが、そっと雪菜に寄り添ったノワールが彼女の耳元でこう囁いた。
「遠慮しているとドンドン追い抜かれていくぞ?―――それでもいいのか?」
その言葉に雪菜は覚悟を決めるのだった―――
―――八雲の部屋の寝室では、向かい合って立つ八雲と雪菜がいた。
この状態になるまではソファーにふたり座って昔のこと、子供の頃の思い出など話しては笑い合っていたのだが雪菜がふと欠伸をしたところでそろそろ寝室に行こうと八雲から誘って、雪菜は黙ってコクリと頷いた―――
そして今お互いの神龍のトレードカラーをしたコートを脱いでから、雪菜にゆっくりと口づけをする八雲。
「……ん……んちゅ……ちゅ♡ ちゅ♡/////」
しばらく唇を唇で撫で、そうしてゆっくりとお互いの口を離すとキラキラと細い橋が架かって切れた。
「なんだか夢みたいだよ……こうしてまた八雲に会えるなんて。諦めてた訳じゃないんだけど、ずっと不安だった」
雪菜がひとりになったときの不安を吐露すると、八雲はそっと雪菜の黒髪を優しく撫でる。
「俺もこの世界に放り出されて、雪菜にはもう会えないのかって不安になった。いつもちょっとした切掛けで雪菜の顔が浮かんできて、仕方がなかった」
雪菜が八雲の言葉を聞いて、スゥと八雲の背中に両腕を回して抱きしめてきた。
「今日は八雲のしたいこと全部してあげる。だから……私のことも……ね?/////」
上目遣いにそう言った雪菜に八雲はもう一度キスをするのだった……
キスを繰り返す雪菜は舌を絡めながらスッと八雲の股間に手を伸ばしていく。
「……んん……え?ちょっと、これって?ねぇ……八雲。もしかして……前よりも大きくなった?/////」
ズボンの上から撫でながら、雪菜が問い掛ける。
「ああ~そうだなぁ。こっちに来て身体を鍛えたりしていたら、気がついたら大きく成長していたんだよなぁ」
「そ、そうなんだ/////……これ……/////」
八雲のズボンを摩りながら、雪菜はちゃんと迎え入れることができるか不安に駆られるが、
「こっちに来て『神の手』ってスキルを身につけたんだ。それは愛情を持った相手には触れ合うだけで快感を与えるってやつでさ。それと『回復』の加護を併用して使うから痛みとかはないと思うぞ」
「何その女泣かせなスキル?!はぁ~八雲はそれでこっちで知り合った女の子達を片端から食べちゃってるんだ?」
そう言って八雲の股間を強く握り締める雪菜に八雲は思わず「うっ」と声が漏れた。
「そんなことないなんて見え透いた嘘は言わない。雪菜からすれば只のチャラ男の最低野郎だってことも分かる。だからここで止めてもいいんだぞ?」
そう言った八雲の顔を見上げた雪菜が潤んだ瞳で一言―――
「今さらそれはズルい……/////」
―――と返して、
「……私だってこっちに来て二カ月、無駄に過ごしてた訳じゃないよ?この世界の文化、特に婚姻関係についてもちゃんと勉強したんだから。この世界ってアレだよね?」
「一夫多妻制か?」
「そう、それ……本当は八雲のこと誰にも渡したくなんてないんだけど……でも、このお城に来てからアリエスさんやアクアーリオさん、フィッツェさん達と話していて八雲の話題が出てくると皆幸せそうな顔して話してくるの」
八雲は黙って雪菜の話を聴いている。
「その時、八雲は私のものなのに!て気持ちと、ああ、やっぱり私の好きになった八雲のこと皆分かってるんだっていうのも思えて……だから皆も八雲のこと好きなんだって思う気持ちと両方あって、そう思ったらなんだかスゥーと自分の中に入って来て納得してる自分がいたの」
「お、おう。そうか」
「なぁにぃ?その返事は!でもそれが八雲なんだよね……日本にいた時は法律とかあって、そんなの絶対ゆるさない!と思っていたけど、違う世界に来て、そういうのが当たり前の世界だと結局は受け入れちゃってたんだよね」
そう言って雪菜は額を八雲の胸板に当ててくる。
「俺も、初めは戸惑ってたよ。一夫一妻制の世界から来て一夫多妻だって言われても、どこかで線引きして納得し切れていない時があった。だけどノワールと結ばれて、そこから一歩踏み出せない俺に、ノワールが―――」
【我の夫がその程度の甲斐性もなくてどうする!此処にいる者は皆お前のことを憎からず想っているのは確かだ。後はお前の決心ひとつで、此処の皆が幸せな家族になるのかどうかだ】
「―――そう言われたんだ。ノワール達、神龍ですら元の世界に戻る方法は分からないって言われて絶望感も味わったし、でも死にたいなんて思わなかったし、だったら―――俺は家族が欲しかったんだ」
雪菜に自分の思いの丈を聴いてもらい、八雲は改めて―――
「俺の家族になってくれ。雪菜」
―――プロポーズをした。
そんな八雲の言葉に雪菜は―――
「今度いなくなったら絶対許してあげないから/////」
―――そう涙目で返事をするのだった。
そして、ふたりの再会の夜が始まる―――