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第121話 雪菜と向かえる朝

―――八雲と雪菜、ふたりの夜


「なんだか懐かしいな」


そう囁いて八雲は改めて雪菜を見つめる―――


―――長く艶やかな黒髪


―――潤いのある桃色の唇


―――滑らかで白く美しい肌


―――潤んだ黒く輝く瞳


―――大きさも良く形も良い胸


―――細く引き締まった腰


―――なだらかで柔らかい尻


幼い頃から美少女だった雪菜は小学校の頃から何度も男子に告白を受けていた―――


―――そしてそのことは八雲も知っている。


だがその度に雪菜の口から出てくるのは―――


『―――私には八雲がいるから』


―――という言葉だった。


それほどまでに雪菜は八雲のことを一途に想ってきた。


―――そして八雲はそのことを誰よりも知っている。


そして今その雪菜が望んでいることも―――


―――それからふたりは激しくもお互いを癒すように身体を重ねた。


何度も何度もお互いを求めるふたりは溶け合う様に見つめ合う―――


時には獣のように……時には恋人同士の睦み合いを語りながら……


―――そうして眠りにつこうとした時、


窓の外は白み始めていた―――


「まさか……ホントに朝までしちゃうなんて/////」


ベッドでぼんやりとした顔で窓を見つめる一糸纏わぬ雪菜だったが、


―――そこで突然、


「あ!今更だけど……避妊……してなかったね/////」


横の八雲に向き直って伝えると八雲はそっと雪菜の耳元で―――


「心配しなくても『受精管理』スキルで俺は避妊が出来るから」


―――と所持しているスキルのことを教える。


「え?なにそれ!?ということは、八雲のそのスキルでいつでも生ってこと!?」


「―――ちょっと雪菜さん……女の子でしょ?生とか下品な言葉、使っちゃいけません」


八雲は教育ママ風に注意してみる。


「だって生だよ!!日本にいた頃はゴム買ったり安全日計算したり、ピルまで買おうとしてたのに!今は八雲のスキルで好きなだけ生で出来るんだよ!!私、ゴム苦手だったし、八雲にも気持ちよくなって欲しかったし、これで気兼ねなく生で出来るね♪」


「……」


「ん?―――どうしたの?お腹痛い?」


心配そうに覗き込む雪菜に八雲はハァ…と小さく溜め息を吐きながら、


「やっぱりどこにいても、雪菜は雪菜だな」


と笑って返すとキョトンとした顔をした雪菜は、


「どういう意味?そんなの当たり前でしょ?」


と言って相変わらず可愛らしい笑顔で八雲に返す。


その顔に八雲は朝の挨拶代わりにそっとキスをするのだった―――






―――その後に朝食を済ませた八雲達。


エヴリンとアークイラ城へ向かう予定にイェンリンと紅蓮、雪菜に白雪、そして城に向かうのでヴァレリアとシャルロット、ユリエルにエディスも一緒に八雲とノワールに同行してキャンピング馬車で向かうことになった。


途中、首都アードラーに入る関所の門で、


「―――黒帝陛下の馬車が来たぞぉおお!!!」


誰かがそう叫ぶと―――


「掲げぇええ!!―――剣!!!」


―――整列した門兵達が一斉に剣を掲げてキャンピング馬車の通過を見送る。


「おはよう―――!!!」


「おはようございまぁ―――すぅ!!!」


今日も窓から挨拶をする八雲と今日は雪菜が一緒に挨拶をした。


そんな八雲にイェンリンは呆れるような表情をして、


「毎回そんなことをしているのか?」


と訊ねてくるので八雲は馬車に身を戻して答える。


「ん?そうだけど?挨拶しないとか人としてどうなの?」


と飄々と返してくるのでイェンリンはそれ以上追及することを諦めた。


紅蓮はそれを見てクスクスと笑っていたが白雪は雪菜に、


「……貴女もそうなの?」


と一緒に挨拶していた雪菜に訊ねると雪菜は笑顔で、


「―――挨拶は基本だよ?白雪」


とドヤ顔で返されて此方もこれ以上のツッコミは止めた。


ティーグルの首都アードラーの最初に訪れる一般人居住区を通り、アークイラ城周辺の中央部にある上級貴族の高級居住区を抜けてアークイラ城へ到着する。


城門を通ると城の正面に到着した八雲達を出迎えたエドワードの配下に案内され、城内の外交会談に使用される広間へ案内されると、中にはエドワード王、アルフォンス王子、エアスト公爵クリストフが待っていた。


「―――黒帝殿。今日は随分とお連れが多いことだな。そちらはエヴリン=アイネソン導師では?レオパールから此方に?」


「ええ、あれから色々ありまして。取りあえず紹介しましょう。まず此方は―――」


「―――余は北部ノルドのヴァーミリオン皇帝である炎凛イェンリン=ロッソ・ヴァーミリオンだ。ティーグル王とは初見であるな」


「なんと?!―――北部の覇王、剣聖ヴァーミリオン皇帝ですと!?これは……突然の訪問に驚きました」


「この度は急な話でな。だがまずはアイネソンの話しからするのが筋というもの。余の話しは後でかまわん」


大陸北部の覇者が後回しでよいという言葉にエドワードもアルフォンス、クリストフも困惑した表情になる。


「―――助かるよイェンリン。それでは俺の方から話しをさせてもらいます」


―――八雲は皆が席に着くのを確認して今回のレオパールでの魔神事件からの顛末、そして白神龍の御子、雪菜と白神龍本人である白雪のことを話し、その雪菜の誘拐未遂について現状までの経緯を語る。


「なんと……異世界から」


八雲と同じく雪菜も異世界からの転移させられた者だということを説明した上で、更にその誘拐の理由は不明だが蒼神龍の御子が関与している可能性が高いことも説明していく。


「蒼神龍の御子……それでは此方も警戒を強めるとしよう」


エドワードは説明された内容から国内の警戒心を高めると約束してくれて、そのことはクリストフに託される。


「そのことだが余から八雲にある提案をした。八雲と雪菜のヴァーミリオンへの留学という形で蒼神龍の御子の注意をヴァーミリオンに集める」


「―――しかし、それではヴァーミリオンが迷惑を被ることになるのでは?」


エドワードの質問にイェンリンは笑い飛ばしながら、


「ハハハハッ!!―――その程度で傾くような国であれば崩壊するのも仕方があるまい!だが、余はそのようなやわな国を建てた覚えはないがな」


皇帝位に就いて六百年の生ける伝説がそう口にすると、最早それに誰も反論や異論を唱える者はいなかった。


一週間後にはエーグル、エレファンを経由してヴァーミリオンに向かうことを八雲が告げると、


「そうか……ヴァレリアと遠く離れることは心苦しいが、夫に突き従うのも良妻の証し。ヴァレリア、しっかりと黒帝殿を支えなさい」


「―――はい!お父様」


「……ん?」


「シャルちゃんがそんな遠くに留学なんて!パパ堪えられないよ!!」


「―――もう!お父様!もう少しわたくしを信用してください!」


「エッ?―――ちょっと、ちょっと待って?」


そこでカットインする八雲に一同が視線を向けるが、何のことなのか分からないといった表情だ。


「エッ?いや何この空気?ヴァレリアとシャルロットも一緒についてくるってこと?」


そう問い掛けた瞬間エドワードとクリストフの目が貧困街でたむろっているチンピラの様な危険な雰囲気に染まっていく……


「黒帝殿……まさかリアたんを置いて他国で女を作るつもりか?……あ?」


「黒帝陛下……いや八雲殿……まさかシャルちゃんを置いていって寂しい思いをさせるつもりかな?……かな?」


「―――いやオッサンはさっきシャルロットが遠くに行くのは堪えられないっつっただろ!」


「そこは愛があれば強引に連れて行くもんでしょ!さあパパを倒して連れて行くがいいさ!」


「―――俺は身内でも一切手を抜かない主義だけど?」


「だからそれパパ死んじゃうってば……」


「あの……八雲様」


そこに声を上げたのはヴァレリアだった。


「あの……わたくし達が八雲様のお邪魔になるのでしたら、此方に残ります」


「あ、別に邪魔って訳じゃ……」


そこまで言い掛けて八雲がふと周囲を見ると―――


「……冷たいヤツだな。余なら斬り捨てるところだぞ」


「……そんなこと言っちゃダメよ……でも彼女達も可哀想よね」


「……やっぱり只の女誑しだったみたいね……雪菜を任せる訳にはいかないわ」


「ちょっと白雪?!」


「……なに?御子殿は女の子ふたりくらい幸せにできないの?エディス考え直しなさい」


「ちょ、ちょっとお母さん?!」


「……そう言うな、エヴリン。我の八雲のことだ。このくらい軽く了承するに決まっている」


「八雲君……もうこれって」


連れ立った女性陣がコソコソとしつつも八雲にわざと聞こえるくらいの声量で罵りや期待を込めて話し合っていた……


「あ、はい。喜んで連れて行かせて頂きます。むしろついて来てクダサイ、オネガイシマス」


「―――はいっ♪ よろしくお願い申し上げます/////」


「―――よかったです♪ わたくしも学校に行けます♪」


「ハハハッ!―――余に任せておけ!特待生で迎えてやろう!」


何故か最後はイェンリンが美味しいところを持ち去ってティーグルでの謁見は終了するのだった……





―――アークイラ城へ謁見に向かってから二日


八雲は『黒神龍特区』の整備に力を入れた。


「おはよう!ナターシャ」


「―――あ!御子様♪ おはようございます」


ナターシャはレオパール魔導国で比較的ウルス共和国の国境近くの村に住んでいた。


穏やかな生活を送っていた村娘のエルフだったが、ある日突如としてレオパール魔導国のルドナ軍隊が村を焼き払いに来たところを間一髪でサジテールに救出された娘だ。


ナターシャがサジテールにレオパールに残るのは危険だと提案した後にバルバール迷宮の第三階層に仲間の娘達と移住したことで、八雲に出会って今の生活を手に入れた経緯がある。


当初は救ってくれたサジテールにしか心を開いていなかったが、そこからこの『黒神龍特区』まで移動して八雲によって立派な家まで与えてもらったことに今は心から感謝と敬意を抱いている。


「―――お茶の茶樹を見つけたんだったな」


「はい♪ 皆さんに探すのを手伝ってもらえて、本当にありがとうございます!」


ストレートの金髪を風に靡かせた茶樹の葉と同じ緑の瞳をしたナターシャが、眩しいくらいの笑顔を八雲に見せてくれる。


エルフの娘達が住んでいるところからすぐ見えるところに並び立つお茶の葉をつける茶樹を、サジテールやスコーピオが広範囲で『索敵』を行い、まとまった本数を此処まで移植して立派な茶畑が形成されていた。


―――茶樹は種子から、あるいは挿し木によって繁殖する。


茶樹が種子を付けるまで四年から十二年ほど掛かり、新しい木が収穫(摘採)に適するまでには三年ほど掛かる。


ティーグルの気温や雨の量でも充分に育てることが出来るとのことで今は移植してきた樹を育て収穫出来るようになったら、お茶に加工してそこから味を試して試行錯誤が続くとナターシャが説明してくれるのを八雲はウンウンと頷いて聴いていた。


「あ、ごめんなさい。御子様にこんなお話、つまらなかったですよね?/////」


夢中でお茶の話しばかりしていたナターシャは顔を赤くして謝ってきたが、


「いや、そんなことないよ。自分の知らないことを知る機会は貴重だ。ところでナターシャ、今度この特区にリオンから何人か職人を呼び込もうと思ってるんだ」


「職人さんですか?農具とか扱ってくれる道具屋さんがあれば、とても助かります」


「うん。そういうのも含めてリオンとは話をしている。それであっちの方にその職人達が住む家を建てるから、そのことを他の子達にも説明しておいてもらえるかな?」


「分かりました!ちゃんと説明しておきますね♪」


笑顔で返事するナターシャとその後も暫く話して八雲は次に地聖教会と孤児院に向かったのだった―――



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