「―――俺も我慢出来ない。アラミス……いいな?」
―――優しく問い掛ける。
朦朧としたアラミスは黙ったまま瞳を伏せて、小さくコクリと頷いていた―――
「ウグッ!!! うあうぅっ! アァアアア―――ッ♡!/////」
「アラミス、身体の力を抜いて。大丈夫だ。ゆっくりするから、心配しなくていいから」
正常位からアラミスの上に覆い被さり、そっと頭を撫でながら囁くと、
「わ、わかった……/////」
そう答えるアラミスに優しく唇を重ねる。
「ンッ!……ちゅっ……んちゅ……チュッ……んんっ♡……ちゅ♡/////」
瑞々しいアラミスの唇に、啄むようなキスから次第に強く押し付けて、唇を開かせて舌を絡めていく。
「アウウゥ……ハァハァ♡/////」
痛みが和らいだ辺りで、アラミスの顔が『神の手』スキルの効果で快感の悦へと変わってくる―――
「―――アウアアァ♡!/////」
―――何度も絶頂を迎えているアラミスに、八雲の追撃は止まらない。
「あうっ♡! あうっ♡! こ、こんな! けものみたな!イヤだぁ!!/////」
アラミスの羞恥心が抗議を申し出るが、八雲の腰使いは止まらない。
蒼い瞳から涙を流しながら許しを請うアラミスに、八雲はゾクゾクとした快感が背中を走るのを感じた。
そして―――
「うおぉ!!―――クッ!!!」
―――八雲の欲望がアラミスの中で弾けた。
「オホオォオォオッ♡!―――あ、ああ!!き、きたぁあ♡!/////」
(うおおぉ!気持ちいいぃ……全部搾り取られていくような感覚……これが『
ビクビクと八雲の上で身体を震わせるアラミスの下腹部には、静かに『龍紋』が浮かび上がってきていた……
―――その快感の余韻に浸る八雲。
「―――随分と……お楽しみだったようですわね?……黒帝陛下」
そこにいたのは無表情で立っているレーツェルだった。
(なにこれ!?これが浮気現場に踏み込まれた時の修羅場ってる空気なの!?違うか?……違うな、うん)
「じょ、女王陛下!?―――あの、これは?!/////」
レーツェルの姿を見て、一気に正気へと戻るアラミスは青い顔をしてレーツェルを見つめていた。
「心配しなくてもいいわ、アラミス。貴女と黒帝陛下の関係を取り持ったのはこの私なのですから、男女の関係になっても何ら気にすることなどありません」
「陛下……はい/////」
「それよりも、私のアラミスに何かおかしな印をつけてくれたようですが?」
裸のままのアラミスの下腹部をレーツェルは指差して、その先にはピンク色に輝き浮かび上がった『龍紋』があった。
「ああ、それは『龍紋』と言って―――」
―――そこから八雲は『龍紋』について説明を始める。
そして『伝心』という能力が加わることで、どんなに離れていても八雲と通信できる能力についても説明した。
勿論その『龍紋』の乙女が集う『
「―――そのような能力が……分かりました。アラミス、これから貴女も『
「……はい、女王陛下/////」
「では、黒帝陛下……私達はフォーコン到着まで暫し休ませて頂きますね」
「ああ、あっ!そうだ!―――ひとつだけレーツェル陛下に相談したいことがあったんだった!」
そこで八雲は、自分がレーツェルの部屋を訪れた理由を漸く思い出す―――
「―――なるほど……道の件は黒帝陛下にお任せすることに致しましょう……よしなに……」
「分かった!フォーコンにとってもいい結果になるように、頑張るから♪」
そう言い残して、八雲はレーツェル達の部屋から退室するのだった―――
―――そうして、ふたりきりになったレーツェルとアラミスは、
「申し訳……ございません。お姉さま……」
―――先に言葉を発したのはアラミスの謝罪の言葉だった。
「いいえ、貴女は……よくやってくれましたよ、アラミス……私の自慢の妹。むしろ……貴方に黒帝陛下を眷属化するように仕向けた、この愚かな姉を……恨んでくれてかまいません」
「お姉さま!―――私はお姉さまのお傍にこうして置いて頂いているだけでも感謝し切れませんのに、恨むことなどは決してありません!!」
―――アラミス=シュヴルーズ
フォーコンの伯爵家シュヴルーズ家の娘として育てられていたが元々は先代のフォーコン国王、つまりレーツェルの父がとある伯爵夫人との間に産ませた、れっきとした王家の姫である―――
しかし後々の後継者争いなどを恐れた母親により、友人であるシュヴルーズ伯爵家へ密かに養子に出され、レーツェルとアラミスの養父母と本人同士以外でふたりが姉妹だと知っている者はいない……
レーツェルの言った吸血鬼王家の者でなければ他人を眷属化することは出来ないという条件だが、レーツェルの実の妹であるアラミスであれば吸血、吸精行為によって眷属を従えることは可能なのだ。
レーツェルはアラミスと八雲に『
―――しかし、
一種の【
「フフフッ……本当に食えない御方だわ……黒帝陛下。アラミス、貴女……黒帝陛下のこと、お慕いしている?」
「えっ!?―――お、お姉さま!?何を突然言い出すのですか!?/////」
「正直におっしゃい……別に責めようと思っている訳ではないわ」
「……はい、その、気になって……魅かれては……います/////」
顔を赤くして答える妹に、レーツェルは微笑みを浮かべて、
「そう……では、これから貴女が黒帝陛下に……八雲様のお傍に行きたくなったなら、いつでも言いなさい。貴女には……これからは幸せになって欲しいもの。貴女を利用してきた私が言えたことではないのだけれど……それが私から貴女へ姉としての最後の
「お姉さま……」
見つめてくるアラミスを、レーツェルはそっと抱きしめるのだった―――
―――イロンデルを出発してフォーコン王国との国境を越え、国土上空に入った。
天翔船
『親愛なるフォーコン王国の国民へ
天翔ける船はシュヴァルツ皇国皇帝である九頭竜八雲の天翔船なり
今、この船にフォーコン王国の偉大なるレーツェル=ブルート・フォーコン陛下が乗船するものなり
イロンデルへの遠征より、我が天翔船に乗り女王が戻られしこと、国民は安堵せよ
親愛なるフォーコン王国に繁栄を
シュヴァルツ皇国 皇帝 九頭竜八雲』
空に
アルコン城の塔にあるバルコニーに停船した
アルコン城に無事レーツェルを送り届けた八雲は、アラミスに『伝心』を送る―――
【アラミス……『伝心』の使い方は大丈夫だな?いつでも構わないから、何かあったら連絡してくれ】
―――頭の中に響く八雲の言葉を聴いて、アラミスは笑顔で小さく頷いて返した。
「それではレーツェル陛下と
笑顔で挨拶する八雲にレーツェルが、
「黒帝陛下……街道の整備の件、よろしくお願い致しますね」
「ああ、すぐに始めるから心配しないでくれ。街道が整備出来たら、途中に建てる警備府に配置する警備兵はそちらで手配してくれ」
「承知しました。では……またお会いする日まで……ごきげんよう」
「ああ、また会おう」
レーツェルと別れを告げると、ダルタニアンが近寄ってくる。
「八雲!今度は絶対に負けないから、覚悟しとけよ!」
「ハハッ!いつでも挑戦を受けるさ。でも、気が向いたらコンスタンスと一緒にヴァーミリオンの浮遊島へ遊びに来てくれよ!アトスとポルトス、それに……アラミスも」
八雲の言葉にアトス、ポルトスも笑顔で頷き、そしてアラミスは……少し瞳を潤ませながら、
「それまで……どうぞ、お元気で」
と、笑顔でそう告げたことに同じ四騎士の仲間達はふたりの関係を察してしまったが、そこで口は出さなかった。
挨拶を済ませると八雲は再び
―――エーグルに向かう
「なぁにぃ~!!!―――アラミスが『
アラミスが名前を連ねたことに、驚愕の声を上げるノワール―――
「ちょっと?ノワールさん……人聞きの悪いこと口走らないでくれる?―――誤解を招くだろ!!」
―――当然、反論する八雲。
「や、八雲……ついに腐女子が大喜びするジャンルに手を出すなんて、異世界まで来て冒険者し過ぎだよ!もう勇者だよ!!」
ベクトルの方向が明後日の方向に向かっている雪菜……
「ほら誤解した子がいた……おい雪菜!異世界でおかしなジャンルを広げるような発言はやめなさい!迷惑になるだろう!―――主に俺が!!」
今もまだ興奮するノワールと雪菜を諫めながら、八雲は皆に説明する。
「アラミスは……歴とした女だったんだ」
「―――と、思いたいだけで実は『男の娘』だった……」
「ちょっと雪菜さん……マジで少し黙ろうか?」
アラミスの件は
「まあ、八雲がそう認めて抱いたのであれば、余は何も文句はない。相手が男だったなら、思うところはあったが……」
イェンリンも訝しんだ表情で八雲をジト目しながら告げる。
アラミスが女性だという件はレーツェルと四騎士しか知らない秘密だということを言い含めて口外しないように念を押して、この話しは終わるのだった―――
―――8月31日
夜間飛行を終えて翌朝、エーグルに到着した
エミリオ達にはジュディに『伝心』を飛ばして、八雲が訪れるまで滞在するように指示してあったので、フォーコンとの国境警戒に遠征してきた三万の軍と駐留していた。
「―――黒帝陛下!お久しぶりです」
笑顔で挨拶してくるエミリオと握手を交わし、
「元気そうだな、エミリオ。アマリアとジュディ、ジェナもお疲れ様だったな」
「勿体ないお言葉です!無事のご到着、お喜び申し上げます!!」
八雲の言葉に仰々しく返事をするアマリアを見て、エミリオが驚く。
「―――アマリア!?お前、いつの間にそんな挨拶が出来るようになったんだ!?」
「兄上!―――それはバカにし過ぎじゃないのか?私だってこういった場で挨拶くらい出来るぞ!!」
そんな兄妹の会話に皆で笑いながら、八雲はエーグル女皇帝であるフレデリカに向かい合う。
「お帰りなさいませ。八雲様/////」
「ああ、ただいまフレデリカ。元気そうで良かった」
「はい♪ わたくしもエーグルも特に問題はございません。城で皆様とお寛ぎくださいませ♪」
「その前に今回の顛末だけ、話しをしておくよ」
シュヴァルツ包囲網のために軍まで出兵させたのだから、説明するのが筋だろうと先にそれを促す八雲に、
「それでは、広間を準備致しますので、そこでお話を伺いますわね」
到着した一行を大きな広間へと案内するフレデリカだった―――
―――そして一通り今回の件を話し終えた八雲。
フレデリカとエミリオはソプラ・ゾットの海の向こうの話しから、ワインド公王の暗殺まで目まぐるしく激動の日々だったことに驚いていたが、アマリアはむしろ戦場に行けなかったことに悔しがっていることを兄に諫められていた。
それからイロンデル、フォーコンも勿論だがフォック聖法国、ウルス共和国、レオパール魔導国とも道を繋げること、そしてエレファンからはヴァーミリオンの首都レッドまでの街道を整備する計画を皆に話した。
大陸の四分の一で整備された道路網が広がることは、この文明レベルの異世界では経済効果的にも莫大な効果をもたらす。
その壮大な八雲の計画に、フレデリカもエミリオもシュヴァルツの明るい未来を想像する。
それからフレデリカから今年の麦の収穫量について、豊作だったことが報告されて整備された街道によりシュヴァルツ内での流通がスムーズに動いていることを説明された。
「―――八雲様の敷かれた街道が上手く物流の流れに拍車を掛けて、警備府の設置が街道周辺の安全に繋がって野盗に損害を受ける者も大幅に減りました。すべて八雲様のおかげですわ♪」
「上手くいっているならよかったよ」
「黒帝陛下!―――エレファンも秋になれば稲刈りの始まる時期に入ります!今年初めての稲作も、充分に期待出来る収穫量となりそうで国民達も皆、陛下に感謝しております」
エレファンに開墾した稲作用の田園が初年度から問題無く稲が育っていることを聴いて、八雲も笑みが零れる。
「そうか!新米で炊いたご飯ってホント美味いんだよなぁ~♪ 稲刈りの季節には俺も行って手伝うから!」
「おお!それは皆も喜びます!」
「私も久しぶりに国元に戻ってみて、広い田園に稲が育っているのを見て感動致しました!ありがとうございます八雲様」
そう言って頭を下げるアマリアを見て、またエミリオは驚いた顔をする。
「アマリア?!―――お前、他人に頭を下げることが出来るようになったのか!?」
「……兄上は、一体私をなんだと、お思いなのです?」
そんな話で盛り上がり、しかしゆっくりする暇もなく八雲は事後処理からの街道整備に向けてすぐにシュヴァルツに出発する―――
「フレデリカ、いつもバタバタとしていてゴメンな」
「いいえ♪ 八雲様のお顔をこうして見られるだけでわたくしは幸せですわ。それに、またすぐ会いに来てくださいますよね?」
「ああ、いつでも飛んでくるよ。それと、フォーコンとの街道の件だけど」
「―――承知しております。エーグル公王領は八雲様の国です。八雲様のお気がすむように進めてくださいませ」
「ありがとう―――愛してるよ、フレデリカ」
「ん……チュ♡……はい、わたくしも愛しております/////」
フレデリカとキスを交わす八雲―――
エミリオは地上からエレファンへと帰国の途に着き、アマリア、ジュディ、ジェナの三人は八雲達に合流して乗船した。
そして
―――そして、空の旅を終えてティーグルに到着した八雲は、
ノワールと共にアークイラ城へ出向き、今回の件とその後の街道整備についてエドワード公王やクリストフ、アルフォンス王子に説明をする―――
「なんと!それはもう、オーヴェスト全域に黒帝殿の道路網が完成するといってよい計画だな!」
エドワードも八雲の説明する街道の整備について喜びの声を上げる。
「イロンデルのシュヴァルツ包囲網が潰えて八雲殿の道路網が敷かれることになるなんて、亡きワインド公王も思いもよらなかっただろうねぇ……」
クリストフの言葉に八雲も上手く外交出来ていれば、こうはならなかったかも知れないと考えないこともない。
「あの者は自分の欲に目が眩んだのだ。昔は夢を語るくらいには余裕があったが『災禍』の力などに頼り、戦乱を巻き起こそうなどとしたのだから、本当に……バカな奴よ」
そう言うエドワードも若き頃から知る隣国の王のことだけに、諫める言葉にも力がなかった。
「ところで、今回そのワインドに加担していたダニエーレ=エンリーチについてはどうなっている?」
先に知らせておいたダニエーレの最後のことを聴いたエドワードは、すぐにクリストフに調査を指示していた。
その件に関する報告と思しきスクロールの束を開いたクリストフが読み上げて説明する―――
「ダニエーレ=エンリーチの動向について―――」
―――今回の外交に用いられたゲオルクの署名がされていた外交委任状については、ゲオルクは知らないを通しているとのことだった。
―――ゲオルクが署名した証拠も委任状も今はないため、真偽のほどはダニエーレが死亡したことにより闇の中となった。
―――曲りなりにもティーグルの第二王子であり、本人が認めないことを無理矢理で罪に問うことも難しい。
―――そのため、現在もゲオルクは領地での謹慎を申し付けられているという経緯を聴いた。
「―――魔女裁判する訳にもいかないしなぁ~」
八雲のその呟きに、
「ん?魔女が裁判すると、何かが分かるのか?」
と、ノワールが問い掛ける。
「あ、そうか、この世界には本物の魔女がいるんだった。いや、なんでもない、気にしないでくれ」
八雲の生まれた世界で且つては異端審問により冤罪で魔女と認定され、無理矢理に処刑された悲劇の女性達という歴史を思い出した八雲。
確かにこの世界には魔女も存在する異世界だが、そんな不公正な裁判や裁きを下すことは出来ないと、次こそゲオルクの尻尾を掴むことを改めて誓う。
そうして―――
―――イロンデルから始まったシュヴァルツ包囲網は終焉を迎えた。
八雲の構築した『オーヴェスト道路網』が、これからのオーヴェストの繁栄をもたらすものとなるのだった―――
―――それから八雲は、残りの夏休みを暫くはオーヴェストで過ごすこととなる。
そして、新たな展開へと八雲の冒険譚は向かっていくのだった―――