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第369話 妹達の告白

―――首都アードラーに出掛けた日の夜


八雲とジェミオス、ヘミオス姉妹、それにコゼロークとアマリアの五人はキャンピング馬車に今夜一泊することになった―――


「ノワール様には事前にお許しを頂いて来ました♪ エヘヘッ/////」


笑顔で告げるジェミオスに八雲も笑い返すしかない手際だ。


キャンピング馬車は首都から離れて一路、黒神龍特区にある湖の畔に停車して車内のリビングコーナーにある半円のソファーの真ん中に八雲が座り、その左右に全員が集まっていた。


八雲の左右にはコゼロークとアマリア、その隣にそれぞれジェミオスとヘミオスが座っていて、これもジェミオス達の作戦のうちである。


「今日は随分と色々考えてきてくれたみたいだな?お前達」


八雲は全員の顔を見回すと余裕があるのはやはりジェミオス、ヘミオス姉妹だった。


「……怒っちゃいましたか?」


問い掛けるジェミオスの不安そうな表情を見て、


「あっ、イヤイヤ!別に怒ったりなんかしてないぞ。ただ―――」


「―――ただ?」


慌てて返事をした八雲だが、そこで一呼吸おいてから、


「四人で一生懸命、考えてきてくれたのが可愛らしくてさ。ホントに今日は楽しかった」


「兄さま……/////」


何かしらあるとは気づいていた八雲が、四人の気持ちを酌んでここまで何も言わずに四人に従ってきたのだが、まさか最後に一晩泊まることになるとは思いもよらなかった。


「あっ!そうだっ!今日買った装備に付ける装飾あっただろう?俺が付けてやるよ」


「はいっ!ありがとうございます兄さま♪」


「やったぁ♪ 兄ちゃんありがとう!」


順番に装飾を八雲に付けてもらうことになってはしゃぐジェミオス達。


「それじゃあ、まずはジェミオスから。日輪出して」


八雲に指名されて、『収納』から日輪を差し出すジェミオス。


黒直双剣=日輪は西洋剣風の両刃の黒い直剣に、金を用いた鍔、白を基調にした柄、そして黒い鞘には太陽を模した蒔絵のような模様を入れられた黒神龍装ノワール・シリーズだ。


八雲はジェミオスが選んだ銀で彫刻された栗鼠りすを受け取ると、鞘の栗形くりがたを『創造』で少々加工するとその彫刻を黒鎖=黒龍鎖こくりゅうさで造ったリングに繋げて補強し、そこからぶら下がるようにして取り付けが終わった。




因みに栗形とは―――


打刀拵の差表さしおもて(刀の刃を上にして腰に差したときに外側になる面)側の、鯉口近くに付けられる下緒を通すための穴がある突起物のことである。


多くは栗の実を半分に断ち切ったような形をしており、角だけでなく、木や金属などでも作られる。


穴を「刳り貫く」(くりぬく)という意味の「刳り形」が語源となっており、栗形は当て字である。




「わぁ~♪ 流石は兄さまです!ありがとうございます♪ チュッ♡/////」


喜びに顔を綻ばせたジェミオスが感動極まって八雲の頬にキスをした。


それを他の三人が、いいなと思いながら見ていた。


「ちゃんとお礼をしないといけませんからねっ♪」


ウィンクしながら他の三人に伝えるジェミオスを見て、自分も!という決心をするヘミオスにコゼロークとアマリア。


「それじゃあ、次はヘミオスだ。三日月出して」


「はぁ~い♪」


『収納』から黒曲双剣=三日月を取り出し、八雲に手渡す。


黒曲双剣=三日月はカットラス型の黒い曲剣に、銀を用いた鍔、白を基調とした柄、そして黒い鞘には三日月を模した蒔絵のような模様を入れられた黒神龍装ノワール・シリーズだ。


「ヘミオスは何を付けるんだ?」


「これっ!猫さんだよっ♪」


ニコニコしながら手渡されたのは金で彫刻された猫の装飾だった。


「よしきたっ!それじゃあ、着ける場所はジェミオスと同じでいいな?」


「うん♪」


ヘミオスの三日月もジェミオスの日輪と同じく、鞘の栗形に黒龍鎖で造ったリングに通してぶら下がるように加工する。


「ほらっ!出来たぞ」


「やったぁ!ありがとねっ♪ 兄ちゃん♡ チュッ♡/////」


ジェミオスと同じく八雲の頬にお礼のキスをするヘミオス。


ヘミオスが離れると八雲は次に、


「コゼローク。毘沙門出して」


「は、はいっ!……お願いします」


武器が大きいので席を立ってから黒戦斧=毘沙門を『収納』から取り出し、同じく立ち上がった八雲に渡す。


「それでコゼロークが選んで来たのは―――」


「―――猪さんですっ!」


余程気に入ったのか、コゼロークは金で彫刻された猪を珍しく鼻息荒く八雲に手渡した。


(さて……コイツは厄介だぞ)


戦斧である毘沙門には当然だが鞘はない。


穂先の刃に付けると戦闘で相手の武器や身体の部位に当たって損傷や汚れる可能性が高い。


かといって石突に付けると、彫刻を気づかって地面にその石突を置けなくなってしまう。


(だったら、穂の部分から柄に変わる部分から見て三十cmほど柄に入ったところに管留めのような金具を『創造』で取りつけて、そこに黒縛鎖のリングを通して補強した猪の彫刻を取り付ける)


どうするか決まった八雲は、そこからの作業は手早い。


「―――出来た。どうだ?コゼローク。これは一度持ってみてくれ」


「はい……うんっ……大丈夫……です♪ あの……ありがとう……ございます……チュッ♡/////」


精一杯の勇気を振り絞ったと言わんばかりに赤面しながら八雲の頬にキスをするコゼロークに、八雲は可愛らしさを胸いっぱいに感じていた。


「最後はアマリアだな」


そう言って八雲はアマリアに振り返る。


「はい!よろしくお願いしますっ!」


その手に持った国宝武装『獣皇』を八雲に差し出した。


(コイツが一番気をつかうんだよなぁ……俺が造った武器じゃないし。下手するとレオンが泣き出すかも知れない……)




国宝武装=獣皇じゅうおう


エレファンに太古の時代から伝わる伝説の武装のひとつ。


普段は王宮の宝物庫に仕舞われ、厳重に保管されている武装であり、かつてエレファンの英雄と言われた王が装備して外敵を撃ち払ったと言われている。


幾つか武装は存在し、剣、盾、鎧、兜とあり鎧は災禍戦役の際にレオンが纏っていた黄金の鎧がそのひとつである。




黄金に輝く刃幅の広い大剣には、同じく黄金で造られた幅の広い鞘があり、アマリアの希望はその鞘に彼女が選んだ銀で兎を模ったレリーフを取り付けることだ。


鞘に取り付ける作業自体は、これまでの中では一番簡単な作業内容だ。


鍔の近くの一番幅広のところに、『創造』で取り付けて補強も掛けながら取り付けると、すぐにそれは出来た。


「ほら、これでいいか?」


「はいっ!ありがとうございます!八雲様♪ わぁ……可愛い/////」


微笑みながら『獣皇』に取り付けられた兎のレリーフを撫でているアマリアに八雲はコホンと咳払いすると、


「丁度いいからアマリアに俺の国の言葉を贈ろう」


「八雲様のお国の言葉ですか?」


「ああ―――『獅子は兎を狩るにも全力を尽くす』という故事だ」


「獅子は……兎を狩るにも全力を尽くす……」


「ああ。これは優れた人物は小さなことにも手を抜かずに、常に全力で取り組むものであるという例えを示した言葉だ。その『獣皇』に刻まれた兎こそ、全力を出すことを示す象徴になると信じてるから」


「八雲様……ありがとうございます!! ムチュウッ♡/////」


喜びのあまり八雲の頬に噛みつかんばかりに飛びついて熱烈なキスをするアマリアに驚く八雲だったが、喜んでもらえたことには満足していた―――






―――それから、


夕食には八雲がキャンピング馬車の中のキッチンで調理した物を皆で楽しく食べた。


ジェミオス、ヘミオス、コゼロークもアクアーリオとフィッツェに簡単な料理は学んでいて、それぞれが得意な物を作って八雲に食べてもらった。


アマリアもまた意外なことに料理は作れるという一面を見せて、八雲に新たな魅力を披露した。


「亡くなった母上と姉上に教えられました。ですので、私が母上から唯一受け継いだものです……」


アマリアの亡くなった母の思い出は八雲にもよく分かる。


八雲自身も基本的な料理は母と祖母から学んだのだから。


そして、食事も終わってキャンピング馬車での夜は更けていく―――


八雲が使っているキャンピング馬車の一階の寝室に集まったゴシックロリータの服を纏った美少女四人が集う。


「兄さま。どうかコゼロークちゃんとアマリアちゃんの言葉をお聴きください」


ジェミオスがそう言うとコゼロークがベッドの前に立っている八雲の前に来る。


「ス~ハ~……や、八雲様……わ、わたし……コゼロークは……八雲様のことがっ!だ、大好きですっ!/////」


普段は無表情が多いコゼロークが、頬を紅潮させながら必死で想いを伝えてくれたことに八雲は嬉しさが込み上げてくる。


「ありがとうな!コゼローク。ちゃんと気持ち伝わった。俺もコゼロークが好きだよ。大切だと想ってる」


八雲の返事にコゼロークの瞳には喜びの涙が溜まっていく。


そして次に八雲はアマリアに向かい合う。


「私は……押し掛けみたいな形で八雲様に近づきました」


アマリアはこれまでのことを想い返して、八雲に語りかける。


その言葉を黙って聴く八雲。


「本当にご迷惑をお掛けしたと自覚しています。そんな私に八雲様は色々と気をつかって頂いて、そんな優しい貴方は誰よりも強くて、そんな貴方にこうして想いを告げられるだけでも、私は幸せ者です!―――お慕いしております!!世界で一番、貴方が好きですっ!!!/////」


最後にはアマリアらしい気合いの入った告白に、八雲は如何にもアマリアらしいと心から思った。


「ありがとう、アマリア。アマリアのことも長く待たせちゃったみたいで、俺の方こそゴメン。俺も、ちゃんとアマリアと向かい合って、それで一緒に前に進めたら嬉しい。好きだよ、アマリア」


「―――はいっ!/////」


八雲の返事にアマリアもついに想いが成就したと涙が瞳に光る。


「それでは兄さま♪ この後は……私達をどうか受け取ってください/////」


ジェミオスがそう告げると同時に、四人のゴスロリのドレスがパサリと床に滑り落ちていく―――


「―――ッ!?なん……だと……」


―――それと同時に現れたのは、四人共お揃いの下着だ。


しかも―――


「ピンクの……マイクロ下着……だと……」


―――四人が身に着けているのは、極小の面積しか有していない、防御力ゼロで攻撃力に特化したマイクロビキニ風のピンクの下着だった。


すると不敵な笑みを浮かべたジェミオスが―――


「いつから私達が今日買って頂いた下着をつけていると錯覚していましたか?/////」


―――チロリと可愛い舌で唇をペロリと舐めたジェミオスが、八雲に告げる。


エロティックな下着を纏った四人の美少女達を前に、八雲の理性は爆発寸前だった―――



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