目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第64話 日本のセキュリティー(sideG)


「うーん、こんな感じで良いかなあ。Gの前で言う感想は」


 Gってなに?


「いやこれだと課外授業楽しかったの伝わりづらいから止めとこうかなあ」


 楽しかったの存分に伝わってきてますが?


「でも楽しかったのバレたら恥ずかしいし、さっきみたいに遠回しに言った方がいいかな」


 残念ながらモロバレしてますよ。遠回しどころか最短ルートで楽しかったの言ってますよ。

 てか授業行けよオマエ。


「G対策にもうちょっと考えようかな」


 だからさっきから言ってるGって何よ?

 G……


(……待てよ……)


 俺は『極悪非道六神獣及び魔王』と呼ばれている。

 その頭文字、日本語では『G』……。


(ま、まさか……)


 俺対策のことを言っているのかアイツは?

 そーいやさっきから聞こえよがしに喋ってるけど……。


 もしかしてオレがここに居ることなんてお見通しだと……。

 そのことを『遠回し』に言ってるっていうのか?


 ヤバいヤバいヤバい。

 そう考えた方が色々と辻褄が合うぞ……。


(お、落ち着け……。まだ勘違いという可能性が……)


 ここは平和ボケした民族が住む日本じゃあないか。

 オレが暗殺の下見に来ていることなんて、誰一人、予測できる者なんて居るはずが……、


「しっかし極悪非道六神獣及び魔王なんて大層な二つ名ですよねー」


 フルアーマー女子は、確かにそう言ったのだった。


(え、ええええええええええええええええええ?)


 極悪非道六神獣及び魔王って完全に俺のことじゃねーか。

 マジか。


 もう俺が学校に隠れてることもお見通しってこと?

 どうしよう、ヤられる前にヤった方がいいか?


(……し、しまった!)


 ぶ、武器が無い。

 いつもなら懐に忍ばせてる武器が無いいいいいいいいいいいいいいいいい。


 そうだったぁ、ホテルに置いてきたんだった。

 ま、まさかこんな平和ボケした国で、危機的状況に陥るとは……。


 うかつだった……。

 他国なら下見の時でも武器の一つや二つ所持してたろうけど……。


 ど、どうする……?


「極めて素朴な四天王最弱に改名した方が良いと思うんだけどなー」


 な、なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?

 この俺に向かって最弱だって?

 そ、それ以上の猛者だというのかアイツは?


「ああでもゴキブリはしぶといから最弱ではないか」


 誰がゴキブリだ。確かに服装は黒いけども。 


「さーてと、そろそろ行ってくるか」


 言うと、フルアーマー女子は、防護服をギシュギシュ鳴らしながらその場を去っていった。


(なんとか乗り切ったか……)


 どうやら俺の場所を完全に把握できているワケでなないらしい。

 おそらくフルアーマー女子は、潜伏している俺を探しにいったのだ。


 その間にこの学校から脱出せねば。

 鉢合わせないようにして――、


「キーンコーンカーンコーン……」


 ここで学校のチャイムが鳴った。授業が終わったのだ。

 まずいな。

 生徒たちが出てくる前に去らないと――


『生徒会副会長の加藤かとう律子りつこです。皆さん、極悪非道六神獣及び魔王には注意して下校しましょう』


 俺が理科室を出ようとした瞬間、校内放送が入ったのだった。


(え、ええええええええええええええええええええええええ?)


 学校総出で極悪非道六神獣及び魔王対策だとおおおおおおおおおお?

 なんてこった。

 こ、これが日本……?


 平和ボケしていて、セキュリティー甘々な印象だったけど……。

 その実態は、極秘で暗殺に来た俺の存在すら把握するほど優れた国だった……。


(く、悔しいが、認めるしかない……)


 もう認めよう。

 日本という国を。


 平和ボケなんかしていない。

 日本はちゃんと、俺のような危険人物を察知できるほど優れた国だった。


(明日だ……。今日は負けを認めて明日……必ず暗殺を成功させてやる……)


 明日、仕切り直して、本腰を入れて暗殺しに来ようじゃないか。

 まだ俺の特徴はバレていないようだし。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?