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第66話 お見合い②(sideG)


「え、ええと、岩田さんは、おいくつなんですか?」


 岩田さんは、ちょっと考えてから、


「じゅ、十七歳です……」


 目を背けてポツリと呟いたのだった。


(え、えええええええええええ?)


 なにそのすぐバレる嘘?

 どんだけサバ読むの?


 さっき教師っつってたよね?

 十七歳でなれるワケないよね?

 え、もしかしてなれる? 俺の知識不足だったりする?


「まあそんなことは置いておきましょう! 歳なんて関係ありませんしね!」


 そうですね。これまでの全ての会話自体が関係ありませんけどね俺には。


「じゃあ暗殺のほう、見せてもらってもいいかしら?」


 じゃあって何?


「えーと、実は今日、暗殺するための武器を持ってきてないので無理というか……」


 俺が言うと、岩田さんはムッと表情を強張らせた。


「武器を持ってきてないですって? いい加減にしなさい! あなたそれでも暗殺が趣味なの?」


 いい加減にするのはアンタだ。


「まさか暗殺が趣味なの嘘じゃないでしょうね!」


 アナタの年齢ほど嘘じゃないです。

 もういいから。

 そんな話を広げるシーンじゃないでしょここ。


 早く逃げさせて。

 こんなとこで足止め喰らってたらフルアーマー女子に見つかる。


「あ、今からちょっと家に帰って武器持ってくるんで、俺はこれで失礼します」


「そんなこと許されるとでも思ってるの!」


 まだこの話広げるのおおおおお?

 もう良いでしょうよ。

 つーかさっきからアナタの怒りポイントが分からないのですが?


「今はお見合い中でしょう! 最後までやり切りなさい!」


 ここはいつからお見合い会場になったんですか?

 学校の理科室ですよ?


「そんなハンパだとあそこの人体模型にも笑われるわよ!」


 急にここが理科室ってこと認知してるってのアピりだしたな。

 もしかして今思い出した?


「あ、いけない!」岩田さんは腕時計を見て、「もうとっくに帰りのHRが始まるわ、行かなきゃ」


 良かった、ようやく去ってくれそう。


「因みに年収はいくら?」


 まだやるのおお?

 俺の年収より生徒たちを学校から撤収させる方が大事でしょ。

 まあいいやテキトーに答えて終わらせよう。


「百五十万くらい――」


 です、と言い切る前に、岩田さんは『タッタッタッタッ』と軽快に走りだしたのだった。


(え、えええええええええええええええええええええ?)


 ここまで露骨に態度変えるうううううううううう?

 いや早くどっか行ってほしかったけど腹立つ。

 これはこれで腹立つ。


(ぐぐぐ……まあいい……)


 俺は世界に名を轟かせている暗殺者だ。

 この程度でいちいち腹を立ててる場合じゃない。

 クールに……クールに……。


(ふう……)


 よし落ち着いた……。

 さあ、早くこんなところから出て仕切りなおそう。

 明日、この高校の教頭をガチで狩りに来るぞ……。


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