目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第67話 メガネVS魔王(sideG)


「あのー、どうかされました?」


 俺が理科室を出ようとした時だった。

 またも背後から声をかけられた。

 振り向くと、そこにはとても分厚い眼鏡をかけた生徒が立っていた。


(……今度は生徒かよ……)


 なんでこう続けざまにエンカウントするんだ?

 ま、生徒ならテキトーにごまかせば逃げられるから良いけど――


「もしかして教頭先生を暗殺しに来た人ですか?」


 メガネをかけた生徒は、確かにそう言ったのだった。


(え、ええええええええええええええええええ?)


 ピンポイントなご指摘、来たああああああああああああああああ!

 マジか。

 どうなってんだこの高校?


「え、ええと、何でそう思ったのかな~、メガネ……くん? お兄さんに教えてくれる?」


 すると、メガネくんは黒ぶち眼鏡をクイッと上げてから、


「まず第一にこの高校に居るはずのない外人ってことですねアナタが。今日は来賓のアポはありませんからそう推理することは容易い。それに立ち方が只者ではありません。いつでも態勢を立ちなおせるような達人を思わせる雰囲気があります。そしてアナタの青い瞳の奥からは相当な修羅場を潜り抜けたであろう光を感じますね。故にアナタは裏の世界で生きてきたのではないかと推測が可能。いえボクは断定しました。更に我が高校の教頭先生を狙っている人は世界中に居ます。よってあなたが教頭先生と暗殺しにきた者である。証明、終わり」


 言うと、眼鏡をキラリと光らせた。


(え、えええええええええええええええええええええええ?)


 なにこいつううううううううううううううう?

 メッチャ早口で俺のこと分析したんだけど。

 完全に答え言ってるんだけど。


「黒のトレンチコートもゴキブリをモチーフにしていますね?」


 そこは違えよ。


「つまりゴキブリであることも証明できます」


 誰がゴキブリだ。なんでここの生徒は揃いも揃って俺をゴキブリにしたいワケ?

 なんかルールみたいなのがあんの?


「ボクですか? ボクは早乙女さおとめ勇気ゆうき、探偵さ」


 聞いてねえよ。てか大丈夫なのその名乗りかた? 色んな意味で。


「あ、ええと、早乙女くん……だね?」


「いえ、メガネです。そのままメガネくんで良いですよ」


 じゃあなんで名乗ったの?

 さては探偵のクダリ言いたかっただけか?


「じゃ、じゃあメガネくん」


「あ、はい、何ですか?」


「えっと、俺が暗殺者だとしたら、どうするつもりかな~?」


「うーん、そうですね……。別に放っておいても大丈夫そうなので何もしません」


 どういう意味?


「アナタは教頭先生を暗殺しようとしてるんですよね?」


 ……この際だからホントのこと言ってみるか。


「ま、まあ、そんな感じだよ」


「では安心です。何せアナタ如きに教頭先生を暗殺できるとは到底思えないので」


 …………なんだと小僧?


「えーっと、俺、ケッコー名の知れた暗殺者なんだけど……」


「そうだとしても教頭先生は倒せないですよ。あの人、たぶん人間じゃないし」


 ……????


「あ、HR行かなきゃ。まあ頑張ってくださいね」


 言うだけ言うと、メガネくんは理科室を出ていった。


(人間じゃない、ね……)


 何を言ってるんだか……。中二病こじらせるとああなるのか?


(……ん?)


 理科室の机の上に、この学校の学ランが無造作に置いてあった。誰かが忘れたのだろう。学ランには『清』というワッペンが付けられている。


 それを『誇り』に生徒たちは日々精進しているのは事前情報で知っている。


 俺も……裏の世界で『極悪非道六神獣及び魔王』と呼ばれていることを誇りに、この学校の教頭を狩ろうじゃあないか。


(明日、必ず暗殺を成功させる)


 とりあえず、早くこの学校を出よう。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?