「きゃああああああああああああああああああああ!」
「うわああああああああああああああああああああ」
「なんだアレは!」
「金剛力士像が走ってるぞおおおおおおおおおおおおおお」
「みんな避難しろおおおおおおおおおおおおおお」
などと、学校は大騒ぎ。
くそ……この混乱の乗じたら簡単に学校から脱出できるだろうけど……。
元はと言えばオレのせいだ。
カタギに怪我でもされたら、それはそれで心持ち悪い。
しかしアイツを止めに行ったらバレそうだし……。
『皆さん、生徒会副会長の
校内放送が入った。
『金剛力士像が暴れているようですが、ご安心を。極悪非道六神獣及び魔王が何とかしてくれます』
まさかの名指しいいいい?
いや確かに何とかしようとしてるけども。
「ど、どうする? どうすれば――」
ここで、俺は思い出した。
机に置かれた清キラ高校の学ランを……。
あれと、人体模型の顔を拝借すれば……。
「……よし……」
俺はトレンチコートを脱ぎ、清キラ高校の学ランを着た。そして人体模型の顔の中身を、金剛力士像が破壊したことによって散らばったガラスの破片を使ってくり抜いた。それをマスクにして被る。
「行くか」
あのバカを止めに行くぞ。
俺が廊下を走っていると、
「うあああああああああああああああああああああああ!」
「今度は人体模型が走ってるうううううううううううううううううう!」
「いや違う! 学ラン着てるぞ!」
「えっ、じゃあアレって!」
「よ、よく見たら人体模型の覆面を被っているぞ!」
「あ、あんなことする奴なんて一人しか居ねーよ!」
「ああ!」
「この学校の極悪非道六神獣及び魔王だ!」
と、すれ違いざまに生徒たちは言っていた。
(あ、あれえええええええええええええええええええええ?)
バレてるんですけど何でええええええ?
まあいい、素顔がバレなきゃ明日に支障はない。
とっとと金剛力士像を止めるぞ。
「追いついたぞ! 止まりやがれ!」
オレは、中庭を駆け抜けようとした金剛力士像に向かって叫んだ。人体模型のマスクのお陰で声が良い感じにこもって、声バレしないようになっていた。
「な、なんだオマエは?」
金剛力士像はこちらを向くと、仁王立ちした。周りには沢山のギャラリーが。
「オレは――」
し、しまった。名前を考えてなかった。
ええい、『あのこと』はバレてんだからそのまま名乗るか。
「オレは極悪非道六神獣及び魔王だ! 良いから止まりやがれこの変態野郎!」
「へ、変態野郎だと? それはオマエだがや!」
……もっともだ。
「確かに……」
「人体模型の覆面被ってるしな」
「おいおいブーメラン刺さってんじゃん」
「大丈夫か極悪非道六神獣及び魔王?」
などとギャラリーたちがザワザワ。
「んなことは良いんだよ! とっととここから去るか、俺に滅されるか選びやがれ!」
オレは金剛力士像を力強く指さした。
「ぐっ……」面食らう金剛力士像。
「選べねえようならオレが決めてやる!」
オレは神速のステップで金剛力士像のふところに入った。そして肩、脇の下、みぞおち、腰、膝の順に手刀を放った。
「ぐあ!」
金剛力士像はその場に崩れ落ちた。その隙に、オレは渾身の力で金剛力士像を蹴り飛ばした。
金剛力士像は吹き飛び、『ドッカーン!』と背中から校舎にぶつかった。
(ふん、そのまま粉々に――)
なったと思った。しかし金剛力士像は思った以上に頑丈で、ところどころにちょっとヒビが入った程度だった。
何度か繰り返せば破壊できるだろうが……。
今ので体力をほとんど使い切ってしまった。
くそ……。
こういうの得意じゃないんだよ……。
暗殺者だから体力無いんですよ(泣)。
「ぐぐぐ……やりやがったな……」
金剛力士像は立ち上がろうとしている。
まずい……。
このままだと、こっちがヤられる。
「スゲー!」
「流石は極悪非道六神獣及び魔王!」
「あ、あれが一年生だとう?」
「とんでもねえ奴だ!」
「そのままトドメを刺すんだ!」
周りは『魔王! 魔王!』のコール。
勝手なこと言いやがる……。
こちとらもうマトモに攻撃できる力が残って無いんだよ……。
(ヤバいかも、な)
オレがそう思った、その時だった。
「やれやれ、何をやっているのですか?」
と、オレの隣にギシュリとフルアーマー女子が来た。
(な、なにいいいいいいいいいいいいいい?)
なんかややこしいことになったあああ。
「お、おいあれ!」
「ああ! 極悪非道六神獣及び魔王の相棒の!」
「
「最強コンビがここに!」
「これで勝ち確定ね!」
と、ギャラリーたちは更に沸く。魔王コールも増える。
(え、ええええええええええええええええ?)
相棒って何?
俺たち初対面ですが?
てか鞘師トアリっていうのねコイツ。
覚えたぞ、帰ったら要注意人物リストに入れよう。