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第77話 黒の一撃


「はいはい、みんな静かに~」


 と、岩田先生が名簿を片手に入ってきた。同時にキーンコーン……とHR開始のチャイムが。


 俺の号令で『起立、礼』が行われ、皆が着席する。


「はい今日も頑張りましょうね。えーっと、欠席者は居ないわね」


 岩田先生は教壇で名簿を開いている。


「さてさて、あと二週間乗り越えたらゴールデンウィークだけど、浮かれないようにね~。その前に皆が大好きなテストがあるから」


 教室では「まあ余裕だよな~」とか「楽勝~」等の声が上がる。

 皆、余裕だ。もちろん俺も。それにはある理由があった。


「因みにそのテストで九割取れなかったら……分かってるわよね~?」


 教室で小さな笑いが起こる。


 きよキラは、大型連休前のテストで九割取れない場合……。

 連休中に決められた日数、補習を受けに来なければならない。

 ゴールデンウィークだと二日。

 夏休みだと十日と聞いている。


 かなり休日が削られることになるが、そう悲観することはない。

 何せテストの内容は、他校の実力テストで出されるような基本レベルだから。


 日々応用や発展問題を解かされている俺たちにとって、自転車を漕ぐに等しいくらい優しいもの。


 皆の余裕っぷりの理由はそれだ。

 常に基本は怠らずに休もうね、という学校からのメッセージなのだらしい。


「まあでも英語のリスニングだけは気を付けなさいよ~? 補習を受けた歴代の先輩たちは、みーーーーーんなリスニングで聞き逃したとかボーっとしてたとかいう、しょーもない理由で補習を受けてるからね~」


 それは有名な話だった。だから俺は……というか皆、リスニングだけは徹底して勉強してるだろう。


「なるほど」トアリは呟いた。「ディスカバリーには注意、と」


 それ発見ね。


「そしてランナウェイに備えて」


 それ逃亡。


「コーナーのことも考えて」


 それ隅。


「何かでクラッシュして」


 それ潰す。


「無理ならスプレー、と」


 それ噴射あああああああああああああああああああ!

 ここでゴキブリネタああああああああああああああああああ?


 満を持して出してきたよ。待ってましたかと言わんばかりに繋げてきたんだけど。


 つーか何でさっきの出しやすい囲碁のクダリでぶっこんでこなかったの?

 完全に上級者のそれだよねネタの出し方が。


城ヶ崎じょうがさきくん、私も応用や発展問題で鍛え抜かれているのですよ(笑)」


 やかましいわ。


「ふふふふふふふ……」


 だからテメー(加藤)もコソコソ笑ってんじゃねーよ。


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