74. Story.6 ~【初恋ダイアリー】~③
今日は土曜日。結愛先パイと約束した通り結愛先パイの家であたしはプリンを作ることにする。歩きながら最終確認をして家に向かう。
「プリンの材料、卵に牛乳にバニラエッセンス……あとは生クリームと砂糖か。レシピも確認しておこう。」
せっかく作るんだもん。大好きな結愛先パイに美味しいプリンを食べてほしいし。メモを見ながらブツブツ呟いているといつの間にか家に着いていた。あたしはドアを開け中に入る。部屋に入るとリビングから結愛先パイが顔を出した。
「あらお帰り。凛花。」
「なんですか?その格好……。」
結愛先パイの服装を見てあたしは固まった。すごいドレス姿だったからだ。赤を基調としたワンピースタイプのドレスでスカート部分にはレースがついている。すごく可愛い。
いやそんなことより!結愛先パイこんな服持ってたっけ!?あたしの記憶では持ってなかったと思うんだけど……。すると結愛先パイが言った。
「さぁ凛花。これに着替えて?」
「これって?えっ……メイド服じゃないですか!」
「昨日、日下部さんに会って凛花がメイド服着るって聞いたから買ったの。着てみて」
でもこのメイド服可愛いな。黒を基調としていて所々フリルやリボンで飾られているて可愛らしいし、それに生地もいい感じだし。
「文化祭で着ますけど……?」
「知ってるわ。でも今日は私のためだけに着てほしいの。貴族令嬢とメイドっぽいでしょ?」
確かにそうかもしれない。まあ結愛先パイが買ったなら着るけど……。ちょっと恥ずかしいなと思いながらもあたしは着替えることにした。そして数分後着替え終わり結愛先パイの前に立った。
どうだろう?似合ってるかな?少し不安になる。だけどすぐに結愛先パイの言葉によってかき消された。
「すごく可愛いわ凛花!本当に私の専属メイドにしていいかしら……」
「ありがとうございます。じゃなくてですね!何言ってるんですか!?」
「冗談よ。ごめんなさいね。それよりよく見せてちょうだい?一緒に写真撮りましょう。」
「じゃあ、あたしのスマホでも撮りたい!」
その後、謎の撮影会が始まったけど、結愛先パイもすごく楽しそうにしてたので良かった。
そして本題のプリン作りを始める。大丈夫。レシピ通り作れば。あたしはもう一度確認する。
「まずは鍋を用意しそこに水を入れて火にかける。沸騰したらそこにバニラエッセンスと砂糖を入れる……と。」
「凛花。手伝おうかしら?」
「ダメです!結愛先パイは座ってて下さい。」
だって今日はあたしが作ったものを結愛先パイに食べてもらうんだもん。結愛先パイには味見だけお願いしよう。
しばらくして水が沸騰したので火を止め、その中に牛乳を少しずつ入れる。それを混ぜながら温める。ある程度温まったら今度は卵を割って溶いて入れていく。
それからしばらくするとカラメルソースができたのでそれも加える。これで完成だ。後は冷やせばいいだけだ。あたしはそれを冷蔵庫に入れ、リビングに行くとソファーに座っていた結愛先パイの隣に腰かけた。すると結愛先パイが話しかけてきた。
「美味しくできるといいわね?」
「はい!結愛先パイのために頑張りましたから。」
「嬉しいこと言ってくれちゃって。期待しているわ。」
結愛先パイが嬉しそうな表情する。それを見てあたしも嬉しくなる。そして結愛先パイが持っている小説が目に入る。
「あれ?【初恋ダイアリー】結愛先パイも持ってたんですか?」
「言ったじゃない。これは私が中学生の……」
「わかりましたよ!そんなに強調しなくてもいいじゃないですか……今の彼女はあたしなんだし……。」
つい拗ねたように言うと結愛先パイが微笑んで頭を撫でてくれた。結愛先パイの手気持ちいいな……。
「凛花。この話はさ、未来から届く日記の通りに行動してうまくいくんだけど、ある時結末を知ってしまう。だから日記と違うことをするけど上手く行かない。でも最終的には自分の思った通りに行動するのよ。」
「そうですね。最後のシーンは泣けますよね!」
「それは、自分自身で行動したからだと思うわ。決められた未来なんてつまらないもの。だから私とあなたは思ったように生きて行きましょう。私はあなたとなら乗り越えられると信じているから」
そう言い切る結愛先パイがカッコ良く見えた。きっと、今あたしの顔赤くなってるんだろうな……。結愛先パイの顔をチラッと見ると優しく笑ってくれた。
その後は2人で話したり、テレビを見たり、話をしたりしていたらあっという間に夕方になっていた。そろそろかな?あたしは立ち上がりキッチンに向かう。
お皿に盛り付け、結愛先パイを呼ぶ。テーブルに運ぶのを手伝ってもらい、椅子に向かい合って座る。
「うん。形は悪くないわね?」
「さぁ食べてください。素直に感想下さい。初めて作ったから……。自信ないし。」
そう言って一口食べる。結愛先パイも食べたようで少し驚いたような顔になった。
どうだろう?おいしいって言ってくれるかな?ドキドキしながら結愛先パイを見つめる。すると結愛先パイは笑顔になって一言。
「とても美味しいわ。凛花は料理上手なのね。」
「そんなことないですよ。でも良かったです。」
「甘さ加減もちょうど良いし、食感もいいし、今までで一番美味しいプリンだわ。ありがとう凛花。」
「喜んでくれて嬉しいです。えっと…結愛お嬢様?なんちゃって……」
あたしがそう結愛先パイに言うと、いきなり立ち上がりあたしの腕を掴み強引にソファーに押し倒す。あれ?なんかスイッチ入っちゃいました!?
「痛っ……結愛先パイ!?」
「なんであなたはそんなに可愛いのかしら……主人を誘惑していけないメイドね?」
「ちょっと結愛先パイ……?目が怖いんですけど……。」
「結愛お嬢様でしょ?誘惑する悪いメイドにはお仕置きが必要よね?もう我慢できないわ……いっぱい可愛がってあげる。」
そう言って結愛先パイはあたしにキスをする。何度も啄むように繰り返されるそれにあたしはどんどん力が抜けていき頭が真っ白になるのだった。