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「ドラグニア王国」

 「...化け物と戦う?どういうこと?意味分からなすぎる。説明してくれるんだよなぁ?」


 と、やや裏返った声で今話しかけた少女に尋ねたのは大西だ。俺を含むほぼ全員が思っていることを第一に口に出した。


 「はい、もちろん説明します。まずは場所を移しましょう」


 少女はそう言うと、隣にいる青年に相槌するとこちらにお辞儀をして、奥のドアへ移動する。そして今度はその青年がまたよく通る声で俺たちに話しかけてきた。


 「余はマルス・ドラグニア、ドラグニア王国の王子である!お前たちの戸惑う気持ち察するが、事情はすべて詳細に話す。今は余らの後に続いてくれ」


 この青年が王子だとするなら、さっきの少女はお姫さんか何かか?いずれにしろ、王族のようだな。彼の一言にひとまず従うことにし、後に続いた。クラスメイト女子の何人かは、王子についてきゃいきゃいと話している。面食いな女どもだ。高園やその友人たちは特に色めき立ってはなかったが。


 場所は変わり、煌びやかで豪奢な広間に連れられた。床には百数万円はありそうな赤く高級そうな絨毯がドア前から敷かれていて、その終着点には、金色の大きな椅子があり、そこには高貴な身なりをしたオッサンが偉そうに腰かけている。


 「全員いるようだな。ミーシャ、マルス。引率ご苦労。そして召喚班にはこの後でここに呼び出すように。たくさん褒美をやらねばな」


 と威厳のある声で椅子に腰かけているオッサンが俺たちを連れて来たあの少女と青年に話した。二人とも無言でオッサンに了承のお辞儀をして、俺たちに向き直る。


 「さて…ゴホン!若き者達よ!まずはなんの前触れもなしにこの世界に呼び出したこと、申し訳ない!そしてドラグニア王国へようこそ!我はこの国の王、カドゥラ・ドラグニアと申す!」


 と王様は俺たちに謝罪と自己紹介を済ます。謝罪とはいうが、その態度は俺たちを椅子から見下すもの。絶対申し訳ないとか思ってねーだろ。


 「余のことはさっき紹介した。ミーシャ、お前の番だ」

 「はい。改めまして、皆さま。私はドラグニア王国の王女、ミーシャ・ドラグニアと申します」


最初の部屋で話しかけてきたあの少女は本物のお姫さんだった。

 青いロングヘアで、やや小柄の中学生みたいな可愛らしい少女だ。


 「我らの自己紹介が済んだところで、そろそろ説明に入るとしようか。ああ、おぬしたちの自己紹介は後に聞くとしよう」


 王さ...オッサンでいいか。なんか感じ悪いし。オッサンは一息ついてこの状況について話しはじめる。話が無駄に長いので、肝心の内容だけしっかり聞き取り、脳内で大まかに整理した。


 ここは俺たちが暮らしていた世界とは別の世界 ――ラノベでよく目にする異世界だ――であり、俺たちはこのドラグニア王国とやらの身勝手により召喚魔法で呼び出されたことになる。

 この世界では人族と呼ばれている人類は、数年前から発生した未知なる化け物――「モンストール」と呼ばれている敵たちと戦い続けているそうだ。モンストールの持つ力は凄まじく、そして気性が荒いのがほとんどだ。その戦闘力は、通常のモンストール(下位のレベル)2~5匹で国の精鋭兵士およそ10人レベルといった程と言われている。

 この世界の人々も奴らの生態はまだまだ知らないことが多いらしい。ここ数年でモンストールによる侵略で人族が暮らす大地はかつての約4割も失われている。人族の中にも強者は世界中に何人かいるが、このままだと人族は終わりを迎えるだろうと言われている。

 そんなモンストールに対抗すべく、この国は王族の指揮の下、異世界から俺たちみたいな若い人間の召喚を行い、モンストールどもと戦わせることに。


 あとはこの国のくっそどうでもいい歴史を話しだすので、頭の回転を止めボーっとすることに。

 退屈そうに王座の方を見つめていると、視界にお姫さんが映った。彼女もちょうどこちらに目が映ったらしく、見つめあう形に。俺が退屈そうにしていることに気付いたのか、可笑しそうに頬を緩ませ笑顔を向けてきた。

 あれ?なんかデジャヴが...。まぁいいや。


 「あのー。質問があるんすけど」


 と、手を挙げる奴が。里中優斗さとなかゆうと、学級委員長でサッカー部だ。男子なのに委員長だ。クラスのまとめ役的存在だが、こいつも俺のこと良くはおもっていない。

 彼の挙手にオッサンは「何か」と促す。


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