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「冒険者になろう」2

 準備を終えて店から出る。行先は特に決めていないが、冒険者ギルドがあると言われているサント王国に行こうかと思う。そこで正式に冒険者になろう。

 出発しようとしたその時、待てよと後ろから声をかけられる。振り向くと人相が悪い男冒険者二人が俺を蔑んだ目で睨みつけている。


 「さっきのやりとり見ていたぞ。ソロで冒険者をやっているそうだな。それも…ランクもEかFってところだろう」

 「そんな奴がこの先の洞窟を抜けられるとは思えねぇ。

 そこでだ。Ⅾランク…それも直に昇格する予定の上位候補である俺たちのパーティに入れてやるよ」


 よくあるパーティ編成の冒険者たちだった。冒険者は基本二人以上で編成するものらしい。ソロで活動している者は余程の実力者かその逆であぶれた者かのどちらかがほとんどらしい(さっきの店から得た情報)。

 で、俺がソロ冒険者だと見抜いたこの二人は俺をこのパーティに入れてやると話を持ち掛けられたのだが……どう見ても俺を仲間として歓迎する気はないな。悪意しか感じられない。


  「実力が下の下な奴じゃこの先やっていけない。見たところお前、クエストで死にかけたそうじゃねーか?実力が無いくせにソロでやってるからそうなるんだよ」

 「だが俺たちと一緒に行けば少なくとも死ぬことはねーよ。俺らは安全に成功出来るクエストしかやらねーからな」

 「まぁお前には俺らの荷物持ちからやってもらうけどな。丁度そういう奴が欲しいと思ってたところなんだ…くくっ」


 二人は悪意ある笑みを浮かべながら俺に荷物持ちとしてパーティに加われと言ってくる。俺を奴隷扱いにでもしたいのか。先程の一件で俺がかなりの弱者だと思い込んでいるそうだな。アホらしい。


 「断る。俺は一人でやっていける。さっき金を貰ったのは実力が無いとかじゃなくて、不慮の事故で有り金を落としたからってだけだ。荷物持ちが欲しいなら他を当たりな」


 そう言って去ろうとするが、当然のようにそれを許す二人ではなく、前後を塞いで止めてくる。


 「俺らは親切に、お前の為を思って勧誘してやってんだぜ?お前よりランクが上の俺らがよぉ」

 「何が不慮の事故だ。事故に対処出来てない時点で実力が無い雑魚だろうが」


 後ろの短髪男は武器である剣をこちらに向け、前を塞いでいる坊主の男は魔法具らしき道具を向けて脅してくる。そんなに俺を荷物持ちにさせたいのか。


 「下位の中でも雑魚な奴は俺らみたいな有望な冒険者の荷物持ちでもやってりゃいいんだよ!どうせ誰も期待なんかしてねーよ、モンストールどころか下位の魔物に手こずってるだろうカスが、冒険者名乗ってんじゃねぇ!」

 「まだ断るってんなら、今後冒険者をやれない程度に痛めつけてやるぜ…!」


 脅しながら二人は距離を詰めてくる。見た目だけで俺を弱者だと決めつけるこいつらには心底呆れさせられる。

 こういう奴らはウェブ小説の異世界作品の序盤で何度も見てきた。弱い者にしか相手しない、しかも自分らの奴隷にしようとするクズだ。

 それにこいつら見てると、元クラスメイトの大西とかああいうクソな連中を思い出してしまいイラついてくる。


 なので、遠慮無く潰すことにした。


 「お前らみたいなクソ野郎こそ――」


 後ろを振り返って剣を構えている男の頭を一瞬で掴んで――


 「冒険者やってんじゃねぇこの、冒険者の恥どもが!!」


 地面にドカァンと叩き潰した。


 「あ”……あ………」

 「………え?」


 地面にめり込んで物言わなくなった剣男を見た坊主男は、何が起こったのか理解が追いついていないといった様子だ。呆然と仲間の変わり果てた姿を見ている。


 「ゴミは……」


 めり込んでいる男を掘り出して掴んでその全身を思い切り――


 「消えろ」


 空の彼方へ投げ飛ばした。数秒で男の姿は空へ消えて無くなった。


 「……………」


 今度は空を呆然と見つめている冒険者の胸倉を掴んで締め上げる。


 「がっ!?あがががが……っ」

 「見た目でしか実力を測れない小物のクズが。目障りだからさっさと消えろ、殺すぞ」


 ブチッと掴んでいた服の一部を破って地面に捨てて吐き捨てる。俺が弱い奴ではなくとんでもない力を持った奴だと理解した坊主男は、血相を変えて悲鳴を上げながら俺から逃げ去った。


 現実にも、ああいうクズは存在するんだな。異世界は……俺が思っていた以上に現代と変わらないつまらないところなのだろうか。

 今の一件で異世界に対して失望をし始めた俺は溜息をついて改めて出発した。


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