ダイと呼ばれている最初にからんできた男を横切り、アレンの手を引いて出ようとするが、取り巻きの一人が俺の肩を掴み引き留める。
「だから、お前は黙ってねーちゃんを置いて雑魚狩ってこいっていってんだよ!
雑魚らしくなぁ!?」
「かっこつけてんじゃねーぞぉガキがぁ!恥かく前に失せろ!」
「何なら、ここで分からせてやろうかぁ?冒険者Cランクのこのダイさんがみんなの前で軽くシメて自分の雑魚さを分からせてあげようかぁ!?」
3人そろって俺を罵倒し始める。その目はどいつも悪意に満ちている。あいつらと同じ目だ。周りの冒険者男女も遠巻きに俺らの様子を見ているが、大半が俺が罵倒されているのを面白がっている様子だ。誰も止めに入る気配はない。受付嬢は我関せずといった様子だこっちを見てすらいない。慣れているのか、このパターンは。
「はぁ...こいつら後者のタイプか。異世界に来てまでどうしてあいつらみたいなゴミカスどもにここで絡まれなきゃならんのかね?どうしてわざわざ悪意をばら撒いてくるのかね?頭沸いてんのか?酒のせいでここまでできるのか?」
しかもガキだのヒョロだの言いやがって。確かに俺の顔年齢はまだ中3レベルだ。腕はこいつらに比べると若干細いが、単に無駄な肉が無いだけだし。どうでもいいか。俺のぼやきが聞こえたらしく3人がさらに逆上する。
するとダイが俺にめがけて手にしていた酒瓶を投げつけてきた。瓶は割れ、破片が中身もろとも頭に降り注ぐ。痛覚無いので破片はどうってことないが、酒が口の中に。あまり美味しくない。
アレンが小さく息を呑んだのをよそに、ダイとその取り巻き、傍観者どもが指さしたりしてゲラゲラ笑いやがる。さらに野郎は、酒を浴びせるだけでは飽き足らず、俺の顔面に殴りかかろうと腕を振り回している。周りはその様を囃し立てる。
俺は思う。この手の絡みに対する主人公の対応は、笑い飛ばしてその場を後にしたり、やんわりとその場をとりなしたり、力をちらつかせ黙らせたりなど穏便だ。いずれもその後は絡んできた奴とは和解し、一緒に飲んだりするのだ。
俺は思う。なぜ作者はこういう奴らを削除しないのかと。理解できない。自分をここまで
俺は思う。こういうクズどもは、その場で見せしめに殺すべきだと。確かに意に介さない姿勢がカッコよく映るとも言えるが、読者の俺はこういうの見てるとイライラするのだ。チート級の強さ持ってるのに、なぜ力を使って黙らせないのかと。
そして今。俺への罵倒・侮辱・仲間への視姦・不味い酒を浴びせる・そして暴力に移ろうとしている。もう十分だろう。
力を使う理由は十分過ぎるくらいだ。俺は、お前ら温厚主人公とは違う。俺を害するゴミ、不快を与えてくるクズは全員地獄行きだ。まぁ、今回は初回特典だ。特別に温情をかけるか。
野郎が拳を大きく振りかぶる。焦点合わない目を俺の顔に向けながら。こんな奴が冒険者上位クラスだと。冒険者への恥さらしだ、冒涜だ。
足元お留守になってる野郎の脚に刃物と化した俺の足蹴りが入る。
スパッ...といい音を立てて、野郎の両脚を宙に舞わせた。ついでに奴の汚い血も宙に舞った。
「え?.........ぎ、あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ!!?」
俺にとってはゆっくりとした一連だったが、当の本人と周りのゴミカスどもはそうではなかったらしい。何が起きたのか全く反応できていない。脚を失った野郎でさえ自分の身に起きた惨劇を把握するのに数秒かかった。やがて自分の状態を理解するやいなや、さっきまでキモい笑みを浮かべた顔を真っ青に、激痛にさらにキモく歪め、耳障りな悲鳴をギルド中に響かせる。
取り巻き2人とも腰を抜かし尻を着くが、その顔面2つにつま先蹴りを叩き込み、酒場で面白がってた傍観者どもへ吹っ飛ばしぶつけさせる。
ドゴォン!!「「「うわああああああああ!?」」」
ある男は突然のことに声も出せず呆然とし、ある女はパニックで悲鳴を上げ、ある男は野郎の無様な惨状を見て嘔吐するなど、多種多様なキモい反応をみせてくれた。
「威圧」や「威嚇」といったプレッシャーをかける系の技能は無いため、周りのゴミカスどもに牽制をかけることはできないが、この惨状を起こしたという事実が、俺にちょっかいかけてはいけないと十分に伝わったようだ。誰もが青ざめた表情で俺を見ている。受付嬢も顔を引きつらせていた。
さて、ようやく周りが少し静かになったな。まだ足りない。俺をキレさせたらどうなるかここで今一度喧伝する必要がある。膝から下が無い無様野郎の首を乱暴に掴み、奥にいる奴らにも聞こえる声量で喋る。
「これは自己紹介と見せしめを兼ねた行為だ。俺に害をなすとどうなるか。悪意をぶつけたらどうなるか。不快感を与えたらどうなるか。俺だけじゃない。ここにいる仲間にもちょっかいかけるとどうなるか。俺の顔をよく見ておけ!今後絶対にちょっかいかけたらいけないこの俺の顔をよく覚えておけ!!
ああ、今回はこれでも温情をかけてるんだぜ?本来なら、このカス野郎の首をスパッといってた。けど俺もそんなに鬼畜じゃない。今回は初回特典として殺さずに済ませている。けど次からは...もう慈悲は無い、確実に殺す。
とにかく、今後俺にああいうちょっかいをかけることのないように。俺からちょっかいをかけることはしないから安心しろ、ゴミカスども。以上っ!!!」
最後の一声に衝撃波を混ぜ、建物内のガラスを全て割った。それにまた悲鳴を上げる者がいたが無視。言いたいこと言えたし、もういいか。
ふとアレンを見やると、割と引いた様子だった。あれま。ま、いいか。まずはまだ掴んだままでいるこのゴミの処分だ。膝下から血がぼたぼた流れ、顔がすっかり青白くなり、涙を流して、さっきからごめんなさい、ごめんなさいと繰り返している。
「おい、テメーも聞いてただろ?これに懲りたら俺みたいな新米君にもちょっかいをかけるんじゃねーぞ?そして、次は、もっと苦痛を与えてから殺すからな?」
そう言って、ゴミを無造作にまた酒場にいる連中めがけて投げ捨てた。
ドゴォン!パリィン!! 「「「ひいいいいいいいいいいいいい!?」」」
衝突音と同時に醜い豚どものキモい悲鳴声がギルド内に再び響いた。
あ~~~スッキリした!