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「vs幻獣エーレ」2

 「生き残ってる兵士の誰か、この隊長さん担いでここから離れてくれ。あまり人がいると戦い辛いからさ。そこの…あの時絡んできた目つき悪い兵士、任せるぞ」

 「俺は…デロイだ。それよりも、まさかエーレを一人で…!?」


 デロイとやらの兵士含む5人程の生き残りに兵士団長を担がせる。しかしデロイとクィンが俺を見て無茶だと制止の声をかけてくる。

 それに対して問題ないと手振りで応えてエーレのところへ向かう。


 「よっし、これでのびのび戦える。こいよ。さっさと狩って、ギルドに弁償金払

わなきゃならねーんだからよ」


 手招きして煽る。エーレは一声鳴いて、口元に凝縮した魔力を浮かばせる。あの赤い色からして炎熱魔法か。ここは、俺も魔法を放ってみるか。初めてやるな、魔法攻撃。

 数秒後、エーレが俺をめがけて真っ赤な凝縮された炎球を放つ。摂氏一万度はありそう。触れるとどうなるかと思うと怖いので早く消化しよう。


 “水砲すいほう


 水魔法の高火力技を放つ。レベルⅩまでいくと、氷も混ぜられる。巨大な水砲の中には、氷の破片も混ぜておいた。二段攻撃をくらえ!

 炎球と水砲が激突するも、一瞬で炎を飲み込み、そのまま一直線にもの凄いスピードで地面を抉りながら通過する。巨大な水しぶきが辺り一面に舞い、地面も俺もびしょびしょになった。

 水は、中に研磨剤を混ぜてウォータージェット機で放水すると、鉄板をも貫通する。今回は、氷を研磨剤として混ぜてみた。結果はさっきの通りだ。当たれば上位のモンストールもきっと風穴空いてほぼ即死だ。



 が、水砲が通過した跡には、エーレの残骸らしきものは見られなかった。それどころか、俺が攻撃されていた。地面に電撃が走り、水たまりを伝って、俺の体に電気が流れて、めちゃくそ感電状態だ。痛くはないが、体がボロボロになっていくのが分かる。このままいけば黒焦げだ。一旦上へ跳んで、放電から逃れる。


 なぜやられていたのか、と考える間もなく、上空からエーレが高く鳴きながら前脚を振り落として俺を叩き落とす。俺が跳ぶことも読まれていた...だと!?驚愕するも、あいつの固有技能を思い出し、納得がいった。


 「未来予知」…!俺が水魔法で自身の魔法が消されることを予知し、俺が発生させた水たまりを利用して放電攻撃を仕掛けて、二重の攻撃をしてきた。さらに、俺が放電から逃れるべく上へ跳ぶことさえも予知し、予め自身も跳んでいた。一手二手を読む技能。それも知能が高い魔物がそれを持つ。それがどれだけ厄介で強力なものか。クィン、コザはもちろん、今のアレンでさえ勝てねーぞコイツは。知能がある分、地底にいたハリネズミ型モンストールを上回るかもしれない戦闘力だ。


 地面に激突する直前に体勢を立て直し、両足で着地する。アレンやクィン(いつの間にか近くにいた)が驚愕の表情で今のやりとりを見ていた。アレンはエーレの計算された戦略に、クィンは俺が放電攻撃を受け、思い切り殴られたにも関わらず、普通に立っていることにそれぞれ驚いている、といったところか。

 俺も少し驚いている。ここまで知能が高い魔物だとは思わなかった。「未来予知」は強力だ。是非手に入れよう。次は、俺の番だ。反撃も防御もさせない。一瞬で片づける!


 「身体武装化」で両肘に推進エンジンを付ける。両手には圧縮した魔力光線を溜める。属性は光。普通の人間がこんなことをすれば、手が爛れる。実際俺の手も爛れてきているが、どうせ治る。そして、ゾンビだから可能な、脳の「制限解除」。身体がいくら悲鳴を上げようが、関係無い。これ以上に無い肉体強化だ。


 「脳のリミッター300%解除」


 「瞬足」でダッシュする。今の俺が本気で走れば、100mを5秒~3秒で駆け抜けるだろう。300%の俺の走りは、エーレでさえ捉えられないみたいだ。

 右腕を空手の構えで控える。力の放出の出発点は右足から。

 地面を踏みしめ、力の流れを右足から前に突き出している左腕へ。左手を素早く横腹に引っ込める。同時に左足を前に出し踏み込む。

 左腕→左手→左足、そして右腕から右手へ。この時、体幹をキュッと締めて、力が分散しないようにする。捻りを加えた正拳突き、それも魔力光線を込め、推進エンジンも出力で威力増加、脳のリミッター500%解除。これまでにない強力な一撃。


 いや、一撃で終わらない。エーレのどてっ腹に正拳突きが入る直後、体を素早く時計回りに捻って、左アッパーの姿勢へ。光線を込めた強烈アッパーを同じ場所へ叩き込む。直後、2度眩しい爆発が起きる。そしてもの凄い音がして、あたりに砂ぼこりが舞う。


 深呼吸して、体のリミッターに蓋をして自然体の構えになり、俺の攻撃のターンが終了した頃、目の前にいたエーレは、上半身がキレイさっぱり無くなっていた。

 砂ぼこりによりクィンをはじめとする兵士たちが俺たちを捉えていない今のうちに、さっさと捕食を済ます。ここで「早食い」が役に立つぜ。


 適当な部位を食いちぎり、エーレの固有技能を奪う。「未来予知」・「雷電魔法」を手に入れ、レベルが少し上がった。


 エーレ討伐完了!


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