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「救世団と鬼族の情報」2

 「お前ぇ知ってるか?あいつら……救世団の連中を」

 「ああ、二日程前に、ここでな。何やら任務で来たらしいが……ったく!まー偉そうで非常識なガキともだったよ!

 なんでも、対モンストールの軍勢をつくるために、ドラグニア王国が別の世界から召喚しやがった特別な人族だそうじゃねーかよ」

 「マジかよ…。それよかあいつら、自分らが特別な人間だと思い込んでいるようで、この辺りでかなり威張り散らしていたみたいじゃねーか。俺は実際見たわけじゃねーんだがよう、評判最悪だったみてーだぞ?」

 「ああその通りだ。その時のあいつらは、ここで、女冒険者にナンパしていたんだぜ?その女の連れが諫めに行ったら、あのガキどもここでそいつを殴りまくってよう、テーブルがめちゃくちゃにされたんだぞ。大声で俺は世界を救う勇者なんだぞー、みたいなこと言って大暴れしまくってたぜ。しかもそいつ、酔っていない状態であんなことやりやがった」

 「ガキが大きな力持つと、やんちゃどころじゃ済まなくなるのかねぇ。だが、そいつらの実力は本物らしいな。実際その時の任務で、上位レベルのモンストールを数体倒したとのことだってよ」

 「下位レベルでも苦戦する俺らだ。強さはたしかに本物だ。中身は最悪だそうだが。

 ああ、そいつらの名前だがな?ここにいた時、一人が大声で名乗っていたな。たしか、ユースケだの、ジュンイチ、だの言ってたな」

 「まーすぐに帰ってくれたから良かったけどよ、あんな奴らが対モンストールの、世界を救う組織だって思うと最悪だよな……」


 (ほう………)


 さらに、他のところからも、救世団に関する会話が聞こえた。



 「近いうちに、この国に新しい戦力が導入されるらしいぜ。救世団という組織の奴らが派遣されるとのことだ」

 「少し前に任務で来た、対モンストール組織だっけ?人族の希望らしいな、その連中は。そのメンバー一人一人が国の兵士数十人分の強さを持つそうだ」

 「その組織から5~6人程が、人族の大国に派遣されて、モンストールを定期的に倒すという方針だってよ」

 「いよいよ、本格的な戦争期に入るってことか。しばらく荒れそうだな…」


 それから主に、救世団に関する情報を色々聞いた。

 あの連中、任務で一度この国に来てたのか。しかもよりによって性格がゴミクズの大西たちか…。

 何やら随分調子こいてデカい面して暴れたそうだな。ま、どうでもいいか。

 とりあえず、救世団で分かったこと……最近他国に遠征して、モンストールを倒していること。実戦訓練の応用編かな。

 近いうち…具体的には数週間くらいか、人族の大国にメンバーを均等に派遣して、滞在させる。世界の軍事バランスを保ちながらモンストールどもと本格的に戦うとのこと。

 今分かることはこれくらいか。


 「はぁ、別に知りたくもない情報しかなかったな…」

 「コウガさん?さっきからいったい何を?」

 「ちょっと情報収集をやってた。聴覚を集中させて周りの会話内容を拾ってみた」

 「そんなことが出来るのですか…」

 「なんか救世団のメンバーが各大国に数名派遣して戦力を一時的に増強させるんだとか。サントにもあいつらが何人か来ることになるんじゃねーのか」

 「そういえば数日前に国王様からそういった報告を聞きました。彼らの実力は、信用できるのでしょうか?」

 「知らね。どうでもいいし。ただ本性はクズな奴らが多いから気をつけ………………ん?」


  クィンと会話している最中に、救世団とは別の気になる会話が聞こえてきた。集中して会話を拾う。


 「名前は忘れたが、竜人族を用心棒にしている情報屋から聞いた話だ。っつっても情報を買ったのは俺の知り合いの冒険者なんだが」

 「竜人って魔族の中で特に武力が優れていると言われているあの?そんな奴を人族がよく雇えたな」

 「そこについて詳しいことは知らね―けどな。それより俺の知り合いが買った情報だがよ………

 最近竜人族が、

 「鬼族だと?あの魔族はモンストールに滅ぼされたって聞いたが、生き残りがいたのか!?で、鬼族はどうしたんだよ?」

 「あー鬼族がどうなったのかは聞いてねーな。戦ったのか仲間になったのか、後のことは知らねー」

 「んだよ期待させやがって」

 「それより今の情報料として、ここの飯代はお前が払えよ!はっはっはー」

 「あー!汚ねーぞ!お前から話し始めたくせに!」


 「………」


 ほう、鬼族の情報が出てきたか。これはアレンにとっては大収穫と言っていいものじゃねーか。


 「コウガ、今度は何を聞いたの?」


 丁度アレンが問いかけてきたので答えてやる。


 「鬼族の情報が出たぞ。少し前に竜人族と遭遇したらしい。竜人族なら鬼族の生き残りについて何か知ってるかもしれない」

 「………!ほんと!?」


 アレンは勢いよく俺に迫り、肩をガッと掴んで真偽を問うてきた。


 「あ、ああ本当だ。これでやっと仲間に近づけたんじゃねーか?」

 「うん。だったら、すぐに行かなきゃ!」


 アレンはすぐにでも店を出て行こうとしていたので、どうどうと宥め落ち着かせる。


 「俺はともかくアレンとクィンは疲れているだろ。焦る気持ちは分かるがまずは自分の体力を回復させてからだ。明日朝になったらすぐに出発する。それで納得してくれねーか?」

 「………ん、そうする。いざって時に力が発揮出来ないと意味無いから」


 言うことを聞いてくれたことに礼を言って、翌日すぐに出発できるよう今日はさっさと宿に入って寝ることにした。


 次の行先は、竜人族の国だ。


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