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「新技」2

 「次は、魔法で殺してみるか」


 まだ十体近く残っているモンストールどもを睨んで、手を向けて魔力をこめる。


 “雷電紅炎サンダー・インフェルノ


 左手から黄色の雷を、右手から真っ赤な炎を発生させて、それらを混ぜ合わせて巨大な雷と炎の複合魔法として放った。

 4~5体ものモンストールが雷炎に飲み込まれて断末魔の悲鳴をあげながらその体を焼き焦がしていった。これで大体4割くらいは殺したか。 


 “光砲メギド


 引き続き魔法でモンストールを駆逐していく。光と炎熱の複合魔法とした砲撃を放つ。もの凄い爆撃音を立ててモンストールを一体消し飛ばした。

 その隙にいつの間にか俺の後ろへ回り込んでいた豹型のモンストールが、どう猛に吼えながら暗黒属性を纏った前足で殴りにきた。


 「く……っ!いつの間に回り込まれて!?…………なんてね」


 狼狽した顔から余裕に満ちた顔に切り替えて、同時に来ると分かっていた方向に左腕を伸ばして、豹の前足を止めてやった。

 「未来予知」で前もってこのモンストールが背後から襲ってくると予知していたのだ。


 「ガアアアッ!?」

 「無駄だ。俺の方が力が上だし障壁も纏っているからな。

 そら、プレゼントだっ」


 前足を受け止めたまま脳のリミッターを200%程解除して、空いている右腕を旋回して裏拳をぶつけた。ぶちゅりと肉を潰す音とバキッと骨を砕く音を立てて豹型モンストールの顔面を砕いて怯ませる。

 その隙をついて赤い魔力光線を間近で撃って消し飛ばした。


 「テメーら程度の敵なら容易に行動を予知できるみたいだな。便利な技能だ」


 エーレを喰らって得た固有技能「未来予知」。相手が完全に格下なら全て見通すことができる。まあそんなことすれば戦いが一気に面白くなくなるから、本当にガチで戦う時だけ使うとするか。


 「残り半分ちょい。来いよ、まとめて殺してやる」


 挑発するように魔力を全身から迸らせてやるとそれに反応した残りのモンストールどもが、一斉に魔力光線や魔法を放ってきた。

 それら全てを「魔力障壁」で防いで、地面を蹴ってモンストールどもへ接近する。ここからは武術で攻めよう。

 目の前には狐型のモンストールが大口を開けている。俺を視認するやいなや炎熱魔法を放ってくる。


 “破空打はくうだ


 両手に嵐属性の魔力を纏わせ、その場で思い切り掌打を繰り出して空気を殴りつけることで衝撃波を発生させる。その衝撃波はモンストールと炎を全てバラバラにして吹き飛ばした。

 属性魔力を纏った状態で繰り出す武術、エルザレスやカブリアスから習った応用技だ。強力な分、習得も困難なものだった。「武芸百般」が無ければ今も会得出来ていなかったかもしれない。

 狐型モンストールを消し飛ばすと次に大猿型モンストールが三体一斉に攻撃してきた。三方から襲いかかってくる爪や拳、蹴りを全て容易に躱してみせる。


 「蛇のようにスルスルと動き、“複眼”でテメーらの動きをしっかり読み取る。テメーら程度の攻撃なんか当たらねーよ」


 これもエルザレスたちから習った武術……独特な体捌きだ。この技術はあいつらには劣るものの、「複眼」という固有技能で不足している技術で補えている。複数の攻撃だろうと全て避けることができる。


 「そらぁぁぁあああ!!」


 両腕両脚に鎧を武装させてさらに「硬化」も纏わせた状態で、三体の大猿どもを洗練された動きで殴って蹴る。

 マッハ突きで腹に穴を空けて、大振りの足刀蹴りで首を刎ねて、拳の連打で全身をミンチにして潰した。


 「次!属性魔力を纏った状態でぶん殴って蹴るぜ――」


 そして残りのモンストールどもも、鍛錬で得た武術を使って討伐しまくったのだった。




 「こ、これは……!?」

 「嘘だろ!?全部……死んでるっ」


 群れの殲滅が終わってから一分程経ったところで、さっきの冒険者どもがようやく到着した。


 「遅かったなぁ。悪いけどテメーらの討伐する分はもう残ってねーぞ?全部俺が殺したからな」


 俺の周りには素手で殺したモンストールどもの死骸や魔法で崩壊した家の残骸で溢れかえっていた。地面も焦土と化していた。


 「Gランクのモンストールを全て……この惨状を、あんた一人で全て!?」


 俺に逃げろと命令した男の冒険者は、顔を引きつらせながら俺とモンストールどもの死骸と滅茶苦茶になった住宅街を見回した。他の冒険者どもも唖然とした様子で同様に見ていた。


 「あんたはいったい、何者なんだ?名前は……?」


 男の冒険者は恐る恐る俺のことを尋ねてきた。


 「失礼な奴だな。まずは自分から名乗るのが礼儀ってもんだろうが。

 と言いたいところだけど別にテメーらのことなんかどうでもいいから名乗らなくていいけど」


 俺は奴の問いかけに答える気はなく、用も無くなったこの町から出ようとしたその時、同行していた冒険者があっと俺を凝視しながら叫んだ。


 「お、思い出した!最近新しいSランク冒険者が現れたって噂の、オウガって男だ!

 新聞で顔写真も載っていた、間違いない!」

 「な……!?確か、最低ランクからいきなりAランクに昇格したイレギュラーの!?サント王国出身の冒険者だと聞いていたが何故この町に!?」 

 「若い……少年じゃないか。彼が本当にあのオウガ!?」


 おいおい、顔写真だと!?いつの間にそんなものが新聞に掲載されてんだ?勝手に人の顔を世間に晒してんじゃねーよ冒険者ギルド!訴えるぞコラ。

 って言っても、この世界に元の世界の常識が当てはまることないのかもな……。


 「まあどうでもいいや。とにかくこの町に侵攻してきたモンストールの群れは殲滅しておいたから。後はご自由に。俺は次へ行くから」

 「次ってまさか、他の各地で発生しているGランクの群れを討伐するつもりか!?」

 「まあな。ああそうだ、一つアドバイスだ。

 人を見た目で判断するもんじゃねーぞ、マジで」


 そう言い捨てると、重力魔法で体を軽くして空を飛んで、嵐魔法でもの凄い速度で次の群れへ向かうのだった。




 「「「…………」」」


 冒険者たちは直前まで皇雅がいた空を呆然と見ることしか出来なかった。

 ただ、皇雅の忠告を受けた男の冒険者だけは心の中で、「肝に銘じよう」と呟いていたのだった。



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