アレンたち四人で連携を取ったことで、二体のうち一体は既に討伐していた。
四人の状態が通常のままであれば今も二体に挟まれて苦戦していたであろう。
迅速にGランクもの敵を討伐出来た理由は単純―――四人が一斉にもの凄く強くなったからだ。
「限定進化」――いくつもの修羅場を潜り抜けて経験を積んだ魔族に発現される大幅な強化。人によっては能力値が通常より十倍以上も上昇すると言われているものだ。
「凄い、ルマンドもみんなも、いつの間に“限定進化”を!」
「ふふっ。アレンと並んで戦いたいって気持ちと、アレンが言う里の復興に協力したいって気持ちで、私も…いえ、みんなもこうして高みへ上ったわ。アレン、私たちみんなでもっと強くなるわよ!里を滅ぼしたあのモンストールを殺すくらいに!!」
「…!うん、なろう強く。みんなで!!」
センの言葉にアレンは体の奥底からさらに力が湧くのを感じた。仲間が傍にいることの心強さ。今なら目の前にいる敵も容易に屠れると、自信が勝手についてくる。
(みんなとこうして足並みが揃えば、こんな奴は敵じゃない!)
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全身に雷でできた鎧を纏って跳躍する。空中で構えを取る。それに気づいたモンストールはアレンに狙いを定めて「魔力光線」を撃とうとする。
「アレンの邪魔はさせない!」
「ちょっと幻を見ててね!」
そのモンストールを阻むべくセンとガーデルが立ちはだかって同時に何かの攻撃を発動した。
その直後、アレンに狙いを定めていたモンストールが突如方向を変えて、でたらめに光線を撃った。さらにまた別の方を見て光線を撃ったり魔爪を振るって空振りするなど、奇怪な行動をするようになった。
「アレンさんたちとは全く別の方へ攻撃を?」
その様子を不審に見ているクィンの疑問に答えるようにルマンドが解説する。
「あの姉妹の種は“
モンストールは地面に向かって乱暴に攻撃を続けている。「幻術」にはレベルがあり、最大レベルが5とされている。センのレベルが3でガーデルが2となっている。現在の彼女たち一人ずつでの幻術では、このモンストールを幻術に嵌めるのは困難だったが、二人の幻術を掛け合わせたことでレベル5相当の幻術の発動を可能にした。
(ありがとう二人とも……!)
隙だらけとなったモンストールに狙いを定めたアレンは、急降下して渾身の蹴りをぶつけた。
“
光の矢を思わせるアレンの蹴り技がモンストールの脳天に突き刺さる。モンストールは頭を勢いよく地面に陥没させた。
「まだ、仕留めてない!」
着地したアレンはすぐに追撃にかかる。雷が纏った拳を構えながら駆けて、飛び上がって拳を撃つ姿勢に入る。
「俺も行く!!」
その隣には両手に魔力をこめて魔法を撃つ姿勢に入っているギルスがいたアレンが拳を放つタイミングに合わせて魔法を放った。
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“
アレンが力を溜めた雷の拳を振り下ろし、ギルスが闇属性と水属性の複合魔法を放った。
二人の攻撃が放たれる寸前で態勢を整えたモンストールは、アレンの拳に牙を、ギルスの魔法に巨大な氷の結晶を撃って対応した。
攻撃を相殺された二人は後ずさる。モンストールの猛攻を躱しながら反撃するも決定打に欠ける。
「私たちもいるから!!」
センとガーデルが再び「幻術」を発動するが、今度は早く破られた。二度目以降だと破られやすいのだ。
「だったらさっきみたいに全員で殴って蹴りまくるわよ!ギルス、魔法でサポートお願い!」
「ああ!」
モンストールを四人で囲って猛攻を仕掛ける。
「私も加勢します!」
「まだ“神通力”は使える、一気に倒しましょう」
クィンとルマンドも加わり、総力を以て青い鬣ライオン型モンストールを攻める。
巨大な前足の一撃を二人がかりで弾いて相殺して、口腔から放たれる魔法や光線はルマンドとギルスが対応する。
アレンとクィンが主だって攻撃を仕掛けるがモンストールも躱したり防いだりと防御してくる。
攻防ともに優れているこの個体に全員苦戦したが、ようやく決着の時が来た。
“神通力”
「ギャアアアゥウウウウウ!!」
「ハァ、ハァ……持って三秒ってところ!決めて!!」
「十分!止め刺す!!」
ルマンドが力を振り絞った「神通力」でモンストールの全身を拘束させる。そこにアレンたちが一斉に全力の攻撃を放った。
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アレンが大弓を思わせる拳の一撃を、クィンが嵐属性の魔法を纏った剣撃を、センとガーデルが同じ拳闘技を、そしてギルスが闇色の炎の砲撃をモンストールに全てぶつける。
断末魔を思わせる絶叫を響かせた後、青い鬣ライオン型モンストールは灰となって消えた。
「これで、私たち側のモンストールは全て倒した…!」
アレンはやや疲弊しながら勝利を口に出す。センとガーデルは互いに手を叩いて労い合う。