「余を虚仮にするのも大概にしろ!!貴様のその力は所詮ハッタリだ!その化けの皮を剥がしてくれる!!」
そう叫びながら武器らしき錫杖をこちらに向けて魔法を放った。
「“
闇属性の魔法か。絵本でよく見る死神を思わせるような化け物の巨大な口が、俺を嚙み砕こうと向かってくる。
そんな魔法攻撃を、俺は硬化状態の左拳でパァンと消し飛ばした。
「は……?」
「まさ、か……!?」
その光景を目の当たりにした王子と国王は思いっきり動揺していた。お姫さんも息をのんで見ている。
「そんな……余の魔法が、ただの拳一つで……破られただと!?」
「ただの拳?これがか?よく見ろよ、かなりレアな固有技能を纏わせてるんだぞ。テメー程度の魔法くらい簡単に破れるっての」
そう言いながら王子のステータスを鑑定してやる。ついでに国王も。
マルス・ドラグニア 19才 人族 レベル30
職業 僧侶
体力 900
攻撃 900
防御 900
魔力 900
魔防 900
速さ 900
固有技能 光魔法レベル5 闇魔法レベル5 重力魔法レベル5 魔力障壁 堅牢 魔力光線(光 闇) 回復 加速
カドゥラ・ドラグニア 56才 人族 レベル45
職業 召喚術師
体力 1000
攻撃 600
防御 1500
魔力 2000
魔防 1500
速さ 300
固有技能 光魔法レベル7 炎熱魔法レベル6 雷電魔法レベル6 召喚術(神獣クラスまで召喚可) 魔力障壁 堅牢
「はっ、二人とも元クラスメイトどもくらいには戦える強さはあるみたいだな。腐ってもこの国を統べる奴ってことか。まあ俺にとっては雑魚なんだけど。なあ、僧侶と召喚術師よぉ?」
職業を見破られたことでまた驚愕する国王と王子の体を、重力魔法で引っ張り出す。
「ぐお!?」「何ぃ!?」
二人を俺の前まで引っ張り出し、宙に浮かせる。国王はそのままにして、全身をギリギリと締め付けているクソ王子の顔面を掴んで、重力を解くと同時に力一杯地面にぐしゃりと叩き落した。
「げばぁああ……!!」
「げばあって、王子がそんな汚い声を出して良いのかよみっともねぇ!」
地についたクソ王子の顔面に足を乗っけながら罵ってやる。うつ伏せ状態で倒れているから見ることはできないが、きっと怒りと屈辱で顔を歪めているんだろうな。そう思うと心底笑えてくる。
「きさ、ま……!マルスに何をしている!?その足を、どけ…ろぉ!!」
「テメーも黙れよ老害クズ国王」
ガンッッ「ごふぅ!?」
怒声を上げて俺に吠えてくる国王に逆切れ返事しながら顔面を蹴り上げる。重力で縛っているので天井へ吹っ飛ぶことはなくその場で停止したままだ。
改めて二人を地面に這いつくばらせる。顔だけ自由にさせてやると二人とも怒りと畏怖が混ざった表情を浮かべて俺を見上げてくる。
「カイダ、さん……っ」
お姫さんは王座の傍から動くことなく怯えた目でこっちを見ているだけだ。他の王族や上層部どもは何人かこの部屋から逃げ出して行ってる。戦士ではなくとも俺が得体の知れない凄く強くてヤバい奴だってことくらいは理解したようだ。
「馬鹿な……貴様にこんな、力が……っ」
「悪夢でも、見ているのか…!?こんな……こん、な………」
この二人もようやく俺が異次元に強くなってることを認め理解したようだ。同時に脅威認定もして以前の俺とは別人だということも認識したみたいだ。
「さっきの続きだが…テメーらの国をあの化け物どもから守ってやった俺に、何の礼も言わねーのはどうなんだって言いたいんだよこっちは。まあこっちは?テメーらゴミカスどもに恩を着せたいとか感謝されたいとか思ってねーからどうでもいいんだけど。こっちは依頼されてこの国に侵攻してきたモンストールどもを駆除しただけだしな」
「ぐ……!」
「おのれぇ…!」
「まあそれでも、さっきのあの態度にはムカつかされたから…ここは一つ、テメーらの誠意ってやつを見せてくれねーと腹の虫が治まらねーかもな」
スッと手を左右上下に振って、二人の体勢を変えてやる。うつ伏せから正座体勢へと無理矢理変えてやった。
「さあ、誠意を見せてもらおうか、クズ国王とクソ王子」
正座させたまま手を地につけさせて、さらに頭も地に擦りつけさせてやる。土下座の完成だ。
「ぐぅぉおお、やめろぉ!!」
「くそ、くそぉぉお!!」
重力で縛っているため二人は土下座体勢から逃れることが出来ない。何か喚き立ててることしか出来ない二人を、俺は笑いながら見下している。
「ほら、国を守ってくれてありがとうございますって礼を言ってみろよ!それとも俺がどうしてこんな力を持ったのか教えて下さいって頼む方が良いか?好きな方を選べよ!その汚い頭を地に擦りつけながら礼を言うか教えを乞うか、どっちかやってみろよ、ほらぁ!!」
今度は国王の頭を踏みつけてやる。窒息しかけたのかゴホゴホと咳き込んで苦しそうにする。いい気味だ、楽しくて仕方がない。
「図がたけーんだよ。弱くて大した能もないくせに偉そうに国王とか王子とか名乗りやがってよぉ。最初から俺のことを見下しやがって。そして、真っ先に俺を切り捨てやがって!」
再びクソ王子の頭を踏みつける。勢いよく踏んだせいで王子の鼻がぐちゃりと折れた。
「ぐおおお、おお…!!」
「が、あああっ!!」
二人とも俺が提示した文句を言うことなくただ呻き声を出すだけだ。俺に礼を言うのも教えを乞うのも嫌みたいだ。プライドが許さないってやつか。ここまで面子を汚されておいてまだ抵抗するのは、王国としてのプライドか…下らない。
「や、止めて下さいカイダさん!!」
ここでお姫さんが制止の声をかけてくる。彼女は目に涙を溜めて悲しそうな顔をしていた。
「どうか……その怒りを鎮めて頂けないでしょうか。お願いです、どうかこれ以上は…!」
両手を組んで祈るように懇願してくるお姫さんを冷めた目で見る。
「コウガさん、そこまでにして下さい…」
さらにはチャキ…と背中に何か刺さる気配がした。
半分振り返るとクィンが険しい顔をして、こっちに剣を向けていた。ブラッド兵士団長たちも同じように剣を向けている。
おやおや、これが四面楚歌ってやつかな?