雄叫びを上げて拳を振り上げながら俺に向かってくる。さらにその腕に岩石を纏わせて(大地魔法の応用か)腕を巨大化させていく。
迫りくる巨大な岩石拳に対し、俺も「硬化」させた右拳で対抗する。脳のリミッターを500%近くまで解除して思い切り拳を放つ。
耳が劈く高音が鳴り響き衝撃波も発生した後、俺が競り勝ってゴリラ鬼を吹き飛ばした、ついでに奴の左腕も破壊した状態で。
しかしモンストールどもが今度は俺にヘイトを向けてきたな。せっかく元クラスメイトどもが殺戮されていくところを観戦してたのに。よし、ここは再びあいつらを標的にしてもらおう。
「迷彩」を限定的に発動して、モンストールどもだけに俺が認識されないようにした。怪獣とプテラノドンとエーレは俺に注意が向かなくなり、再び元クラスメイトどもに目を向けた。
「ひっ、また……!か、甲斐田!助けろ!!それだけ強いならこんな化け物どもだって楽勝だろ!?」
「そうだそうだ!!このままだと俺たち殺されちまう!さっきみたいに本気出してこいつらを殺してくれ!!」
「………」
俺はぽけーっと黙って突っ立つ。
「ちょっと、何で動かないのよ!?早く倒してって言ってるでしょ!!一人で全部倒せるんでしょ!?だったら早くやれよ!!私たちの為に!!」
安藤の耳障りな命令言葉に対しても耳の穴をほじってうるさそうにリアクションをする。その態度に連中は怒りよりも焦りと恐怖の感情を乗せてさらに喚きだす。
「おい、マジで何とかしてくれ!!冗談やってる場合じゃねーんだって!」
「お前のクラスメイトである俺たちが窮地なんだぞ!!助けてくれよ!?」
「仲間だろ?早くこのモンストールどもを駆逐してくれ!!」
命の危機に晒されているとはいえあまりにも身勝手な発言の数々に、ついに俺は口を開いた。
「クラスメイト?仲間?いったいどの口が言ってんだ、テメーらは」
その一言を聞いた連中は固まったように黙る。
「去年からずっと……テメーらがクラスほぼ全体で俺をハブって。貶めて、陰口叩いて、ありもしない悪評をバラまいて、俺の器物にまで手を出して。
さらにこの世界に来てからは、いちばん低いステータスだった俺を罵倒と暴力で虐げて。またハブって。そして俺を生贄にして嗤いながら見捨てやがった。
そんなことをしてきたテメーらが、俺を仲間?何だ、ギャグかましてのんか?だとしたら随分スベッたギャグだな、は は は 」
感情が全くこもっていない乾いた笑い声を発してやる。大西たちの顔色がみるみる青くなっていく。
「そ、そんなこと言ってる場合か?それらのことなら誠心誠意込めて謝ってやるから。もう甲斐田を馬鹿にしたり酷いこと言って痛めつけたりなんてしねーから。つーかもう俺らじゃ甲斐田に勝てねーし」
「謝ってやる?謝らせて下さいだろそこは。つーか今すべきだろそういうことは。テメーらの今の立場分かってる?」
「あ、あああそうだな!今までのことマジで悪かったと思ってる!学校のこと、この世界でのこと全部!すみませんでした!!」
「ああ学校でのこと。大西、テメーが決めた下らない定期的な集まりに参加しなかっただけで俺を虐めようとしたのが始まりだったっけ、なぁ?」
すると他の元クラスメイトどもが大西を非難するように見やる。片上や山本ですらもだ。
「な、何だよお前ら……いやそんなことより!ちょっと気に入らなかっただけでお前を虐めようって思ったのがきっかけだったんだ!わ、悪かった!!この世界じゃあ散々暴力振るっちまってゴメン!!強いステータスもらって浮かれてただけなんだって!もう赦してくれよ!!」
「浮かれてただけ、ねぇ」
「実戦訓練で見捨てたことも、あれはマジで仕方がなかったんだって!甲斐田を助けてたら俺たちが殺されてたかもだったし!」
「でも嗤ってたよな?」
「あ、あれは……そう、気が動転してたんだ!!悪かったよ、赦してくれ!!本当に反省してるから!!」
大西に続いて他の連中もローテーションで俺に対して弁明して贖罪しようとしてくる。まぁ口が回ること。必死になるのも無理はないか、あの状況じゃあな。
「なぁ俺たちは全員反省している!甲斐田には散々酷いことをしてしまったことを本当に悪かったと反省している!!これからは甲斐田も俺たちの仲間になろうぜ!みんなで楽しくこの世界で生きていこうぜ!!虐めの償いもちゃんとするから!だから、俺たちを助けてくれ!!」
大西も山本も片上も安藤も須藤も里中も小林も、須藤とつるんでいる早川と柿本も、全員俺を縋るように懇願してくる。
だから、俺は―――
「え?嫌に決まってんじゃん。テメーらなんか助けねーよばあぁ~~~か」
冷酷にそう言って返事してやるのだった!