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「格の違い」

 嫌な予感がする……。突如感知したあの“戦気”…………憶えがある。

 あの時……私たちの里を滅ぼしにきたアイツと似たものだった!

 しかも、ここからかなり離れているはずなのにもの凄く禍々しくて強く…………嫌な戦気だ。


 「コウガ…………」


 コウガは強い。災害レベルのモンストールの群れを一人で殲滅できるくらいに。分かっている。どんな敵だろうとコウガならあっという間に決着をつけてくれるって。

 それでも今回は………嫌な予感が、する……!


 「私は、コウガのところへ行く。足手まといになってしまうかもしれないけど、行かなきゃいけない気がする………っ」


 居ても立っても居られず状態の私は、まだ完治していない状態ながらもドラグニア王国へ行く決意をする。


 「そんな体で災害レベルの敵と戦うつもり?だとするなら見過ごせないわ」


 私の前にセンが立ちはだかる。その顔は若干怒っているように見える。


 「セン……お願い。センやみんなも……分かってるんでしょう?この戦気」

 「………」


 センも、他の鬼族の仲間たちも深刻な顔をして黙り込む。


 「ええ気付いているわ。あれは……私たちにとって大きな仇の存在かもしれない。そしてアレは………アレン一人じゃ絶対に敵わないレベルだわ。今の状態じゃ特に」

 「………」

 「アレンの仲間…コウガなら何とかなるかもしれない。彼に任せるだけじゃ、アレンは納得しないのよね?」

 「うん…!」 


 その問いに強く肯定するとセンは少し笑顔を見せる。


 「私もよ。鬼族の仇かもしれない奴を、たとえアレンの仲間だろうと任せる気はない。私にとっても憎むべき仇敵。私たちも奴を殺したいって思っているわ」


 センの言葉にみんなも頷いて肯定する。ここで私はセンが言おうとしていることに気付いた。


 「私も行くわ。もちろん殺されに行くようなことはしない。敵わないと分かったら悔しいけど退くからね。」

 「うん、ありがとうセン!」


 心強いことにセンも一緒に行ってくれることになった。


 「ルマンド、あなたも一緒に来てくれる?あなたの力が必要になると思うから」

 「ええ。喜んで力になるわ」


 ルマンドは嬉しそうに微笑んで快諾してくれる。


 「ガーデル、ギルス。二人は待機してちょうだい。もしものことに備えて、ね」


 こうして…センとルマンドをパーティに加えて、私たちはコウガとクィンがいるドラグニア王国へ向かった。


 (コウガ、無事でいて……!)



                   *


 どれくらい経ったのか、目を覚ましてふと目を向けると、目の前に見慣れた俺の体があった。

 さらに、さっきから髪を掴まれている感覚に気付いて、上を見ると、ザイートの姿が。そこで俺はようやく気付いた。

 俺は、奴に首を刎ねられて、その首を掴まれている...!


 構えすら視認できなかった。

 奴がいつ反撃態勢に入っていたのか、どういう攻撃で首を刎ねられたのか、俺の手刀は奴に届いたのか……何もかも分からないまま俺は行動不能にされている。

 初めて知ったが、首と胴体が離れるとさすがに動けなくなるみたいだ。

 地面に転がっている俺の首をザイートが髪を鷲掴みして持ち上げたことで、一瞬とんでいた意識が覚醒し、自分の置かれている状況にようやく気付いた。

 俺は今、こいつに生殺与奪の権利を握られている。まぁ俺死んでいるし、痛みも全く感じないのだが。けれど、こんな扱いをされて、それに対する屈辱感はありまくりだった。チートゾンビになって初めての経験だ。誰が見ても、俺はこいつに敗れてさらし首にされてるようにしか思えないだろう。

 「ハァ...ハァ...敗北者...?取りけ」――っておっと、ネタかましてる場合じゃなかったわ。


 つーか、この状況マジでまずい。首から下の部位は何一つ動かせない。完全に詰んでる。


 「お前が俺に仕掛けた攻撃技はもともと俺のだ。それも、分裂体から奪った紛い物レベルだ。そんな紛い物でオリジナルの俺がやれるわけないだろ。俺の固有技能で攻撃しようとした時点でお前は終わってんだよ。さっき同胞たちと戦った時も“武装硬化”を使っていたところ、どうやらお気に入りの戦い方のようだが、残念だったな」


 「硬化」と呼んでいたあの固有技能は本来「武装硬化」というのがオリジナルらしい。確かに、俺が今まで使っていたあれは紛い物だったみたいだな。

 ザイートは何を思ったのか、俺の首を俺の体のもとへ投げ捨てた。首と体が近づいたことで、塵が発生して、それによって身体が元通りにくっつき、動かせるようになった。


 「どういうつもりだ?こうなること分かっていたようだが?」

 「今の通りだ。俺とお前との戦力差を教えてやる。あと、お前の口から聞きなれない言葉があったから、それも訊いておきたいしな」


 完全に舐めプしにきてやがる。腹立つわコイツ。少し距離をとり、深呼吸して強力な魔法攻撃を次々に放つ。


 “溶岩炎嵐マグマストーム

 “絶対零度”

 “天雷氾濫アマツマガツチ


 この時の俺は冷静さを完全に欠いていたに違いない。見境なく大技を乱発する奴は絶対反撃されてボコられるオチではないか。初めて自分のはるか格上の存在と立ち会って、平静でいられなくなっている。完全に呑まれている。

 そして案の定、身体に若干傷をつけつつも、平気そうにしているザイートの姿が。

 奴を目視できたのは一瞬のこと。煙が晴れた直後、「神速」で俺の目の前に現れて、またも首をスパッと刎ねられた。

 さらに五体もバラバラに切り刻まれて、その場でなすすべなく倒れる。

 ダメだ。奴の固有技能は、紛い物の俺なんかよりずっと強い。威力が桁違い過ぎる…!咄嗟に体に張り付けた「魔力障壁」をあっさり破壊して俺をバラバラにしたのだから。

 それ以前に、こいつのステータスがクソチート過ぎる。生首状態でザイートの能力値を「鑑定」したのだが、軽く後悔した。



ザイート 135才 種族不明 レベル?999

ステータス

職業 不明

体力 ?99999999

攻撃 ?99999999

防御 ?99999999

魔力 ?99999999

魔防 ?99999999

速さ ?99999999

固有技能 武装硬化 神速 瘴気強化 気配感知 魔法弱体化鎧マジックアーマー 魔力障壁 全属性魔法レベル9 超高速再生 限定進化



 何だよコレ…。レベルもステータスも、文字化け状態じゃねーか。測定不能=異次元の化け物だ。そら勝てねーわ。

 固有技能もキチ狂ってやがる。さっき魔法くらって大したダメージ入ってなかったのは、「鎧」を発現させて防いでいたのか。何よりも見間違いであって欲しかったのが、「限定進化」するということ。ふざけてやがる。ここからさらにステータスが数倍化するってのかよ……。


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