「俺のステータスを見たのか?馬鹿が、余計に後悔するだけだろうに。まあ、これで自分と俺との格の違いが分かっただろ?」
俺はただ悔しさに歯ぎしりすることしかできないでいた。奴の言う通り、格が違い過ぎる。死んでからチートな力を手に入れて、そこから敵を圧倒していって完全に天狗になっていた。この世界には、こんな奴がまだいたのだ。
その後また舐めプで俺を再生させて、俺は何度もザイートに攻撃するが、悉く返り討ちにされて、その度に戦闘不能にさせられるのループが続いた。
合計10回は死んだかと思えるくらいに殺された俺は今、首と上半身と下半身が分断されて、下半身には鋼鉄化した岩石が乗っかっていて、上半身は雷でできた縄で縛られ、その上に首が乗せられているという状況だ。文字通り指一本動かせないでいる。
これだけされてもゾンビの俺は何も感じない。苦痛など無い。死ぬこともないから意識が途切れることもない。完全に生物からかけ離れた存在だ。まぁ目の前にいる男はそれ以上の化け物だが。
「さて、これ以上殺そうとしてもお前は死ぬことも消えることもないらしい。普通その状態になれば生命活動が終わっていいはずだが、まだ意識があるとはな。やはり俺が知っている屍族とは少し違うな」
縛られている俺の目の前まで近づいてその場でしゃがんで見下ろすザイートを俺はただ睨むことしかできない。
「カイダさん!!」
思わぬ人物が現れる。ザイートの後ろから、逃げたはずのミーシャがこっちに駆けてくるではないか。
「ダメですミーシャ王女!あの男に近づいてはあなたが殺されてしまいます!」
そのミーシャをクィンが青い顔をしながらも引き止めている。クィンもミーシャと同じように俺を痛ましく見ている。
「ドラグニア王国の王女か。増援のつもりか?戦闘は不向きのようだが」
ザイートはミーシャを一目見て、彼女が戦闘に劣るとすぐ見抜いて、興味無さげに視線を俺に戻す。クィンにも興味無しだ。
「何でここに戻ってきた?殺されるかもしれないのに」
「決まっています!カイダさんがそんな状態にされているからです!!」
俺の疑問にミーシャは迷いなくそう答える。意外だったから言葉に詰まってしまう。ザイートはミーシャを面白そうに見ていた。
「ドラグニアの王女。俺は何もしないから、カイダの拘束を解きたいのなら好きにしろ。それくらいのサービスくれてやる」
ザイートはいきなりそんなことを言い出す。ミーシャたちは呆気にとられていたが、ミーシャだけが恐る恐る俺のところに近づいてくる。クィンも後から追ってくる。
「ああ……こんな、酷い……!ううう……!コウガさん……」
俺の上半身に触れようとするも、俺を縛っている縄に感電しかけて手を引っ込める。
「クィンさん、あなたの剣でこれを斬れませんか?」
ミーシャにそう言われたクィンは、ミーシャを下がらせて雷の縄目がけて剣を振り下ろす。
「っ!!斬れない…!なんて高い魔力……。ごめんなさいコウガさん、私の腕ではこれをどうすることも……」
「いいよ別に。あいつの魔力、俺の倍以上あるし」
クィンは悔しそうに俯いて俺から少し離れてミーシャを守るように立つ。
「…?二人とも逃げないのか?」
「私もミーシャ王女と同じです。今のコウガさんをそのままになんて出来ません…!」
「お前らにここで出来ることはもう無い。それを承知の上でまだここにいるようだが。俺を助けるつもりか?かつてのクラスメイトどもを大勢見殺しにするような奴を?
それに目の前にいるこいつは、俺を簡単にこんな風にした、超がいくつもつく化け物だ。分かってるよな?」
「それでも、放っておけません…!カイダさんがこんな……こんな目に遭わされて、黙って見てはいられません!カイダさんがこんな惨い姿にさせられているのは、堪えられません…!」
そう言って涙をこぼすミーシャは俺の頭に手を乗せる。どうして彼女は俺にそんな感情を抱いているんだよ……訳が分からない。クィンもミーシャと似た表情をしている。さっきのいがみ合いがあったにもかかわらず、俺の窮地をどうにかしようとしているのか。
「大した度胸を持った二人だ。この俺を前にしてそいつを助けようとするのだからな。面白い」
そう言ってザイートは胡坐をかいて座り込む。ザイートを怯えた目で見ながら後ずさるミーシャを苦笑しながら、彼はあくび交じりに言葉を発する。
「少し、話をしようか、俺のことについてと……カイダコウガ、お前のことも。そしてお前らが言うモンストールの発生の真実を」
ザイートの言葉にミーシャたちは息を吞む。俺も若干動揺する。こいつが何者で、俺も一体何なのか。謎がここで全て分かるかもしれない。
「まずは俺の質問に答えてもらおう。カイダ、さっきの自己紹介で自分のことを異世界人だと言ってたな?あれはどういう意味だ?」
まずはザイートの知らないことを答えることから始めるらしい。これに答えなければ話が進まないだろうから、俺は素直に答える。
「俺は、この世界とは異なる全く別の世界から召喚されてきた人間だ。俺の他に30数名の人間と一緒にな。そこにいるお姫さんの提案によってだ。テメーらモンストールどもに対抗するために、俺はこの世界に呼び出されたんだ」
ミーシャにちらと目を向けると、彼女は気まずそうに目をそらしながら俺の言葉を肯定する。
「なるほどな。別の世界から……変わった名前もその世界から来た証拠か。納得した。お前が見殺しにしたガキどもも同じ異世界人だったのか?」
「……そうだ」
「そうかそうか……あの時と同じだったかぁ。ククク…!こんなことが起こるとは。全く、人族はやはり俺たちをいちばん楽しませ、かつて追い詰めてくれたものだ!」
突如、ザイートは一人で勝手に納得して、可笑しそうに笑いだす。
「何一人で勝手に納得してやがる?あの時って何だ?テメーは一体何を知ってる?俺たちが知らないこと、話してもらおうか」
「ふっ、この状況でよく強気になれるな。いいだろう、話そうか。では少し長くなるが、お前らにとって面白い真相がいっぱい出てくるだろうよ?」
ザイートは愉快そうに笑って、再び話始める。
「まずは、俺が何者かについて話そうか。
俺は、100年以上前に絶滅したとされている、“