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「皇雅とカミラ」2

 翌日、兵士団団長(名はトッポとかいったっけ)が直々に迎えにきて俺たちを王宮の謁見部屋に連れて行く。王宮内は昨日の襲撃があったにもかかわらず無事でいる。外見はさすがに傷がいくつも入っていたが。主に俺のお陰で王宮は守られたようなものだ。

 謁見部屋にはニッズ国王と名前も知らない王妃と王子と王女とその他位が高い貴族ども、そしてカミラがいた。あとついでに昨日の襲撃戦に参加して生き残った冒険者どもが数名いた。どうやらこいつらしか昨日の戦いで生き残れなかったそうだ。あとは逃げ出した冒険者がどこかへ行ったってところか。


 「始めに、この場ではお主はカイダコウガとして扱わせてもらう。

 ではカイダコウガ、フジワラ殿、冒険者赤鬼、鬼族4名、そしてその他勇敢な冒険者たちよ!

 今回のモンストールによる大規模な侵略からこのハーベスタン王国を守ってくれたこと、誠に大儀………………いや、本当に、ありがとう……!本当に助かった!!」


 途中で言い直した内容に兵士団と冒険者数名が意外そうに目を見開いた。国のトップである国王が、位が下である俺たちに頭を下げてありがとうと言ったからだろうか。別におかしくはないと思うけど。


 「お主たちがいなければこの国はとうに滅び、我らはこの世にいなかったであろう。勇敢なお主たちは我らにとって命の恩人だ!無論、兵士団の諸君も同じであるぞ」


 国王の言葉に兵士どもは頭を垂れて跪く。敬意を示しているのだ。


 「さて本題に入ろう。まずは冒険者諸君には多大な褒賞を授ける。別室にて用意してあるので移動してもらおう。ただし、フジワラ殿と赤鬼と鬼族たち、そしてカイダコウガはここに残ってもらおう」


 そう言って他の冒険者どもを移動させて俺たちだけになったところで話を再開する。


 「………お主たちには特に助けられた。あのSランクモンストールの群れをお主たちだけで殲滅してくれたことを知った時は夢のようで――」

 「前置きはいいから本題に入らね?それで、あんたは俺たちに何を用意してくれてるんだ?」


 俺がぴしゃりと遮ったことにトッポや貴族どもが不快そうに眉を顰め、国王は苦笑いした。


 「そうだな……。フジワラ殿、お主は我に頼みたいことがあったと言っていたな。改めて申してみよ」

 「はい。それは――」


 藤原は国王に自分たちをパルケ王国の国王に話の場を設けるよう手を回してほしいことを述べる。その理由が、亜人族が鬼族を捕らえたことについて詳しく知りたいこと、アレンたちが鬼族の生き残りであり彼女たちが同じ生き残りを捜しているからということも述べてもらった。


 「よし、分かった。我の権限でパルケ王国の国王にそうしてもらうよう図るとしよう。他に、望みは何かないか?申し訳ないのだが国は今かなり衰退してしまっていて莫大な褒美を今すぐ用意するのは無理ではあるのだが……」

 「褒美は常識の範囲内でもらうくらいで構わない。それと、今回のことはどうせ世界中に知らせるんだろ?なら俺のことは冒険者オウガってことにしてくれ。実名をバラされるのはあまり望んでいないんで」


 情報社会で生きてきた俺にとってそれは大事なことだからな。


 「それくらいのことなら容易い、そのように図ろう。他に、望むものは――」


 あとは鬼族のみんなが装備を新しくしたいとか可愛い戦闘服が欲しいとかタダで食事がしたいとか俗物的なものばかり要求するだけで終わった。しかしそれらは後ですることになり、俺たちはすぐに出発することにした。アレンたちはすぐにでも生き残りたちと再会したいと思っているからだ。

 一晩の休みと藤原の「回復」で万全状態となった皆は、早速ここからパルケ王国へ行くことを望んでいたので、ハーベスタン王国によるもてなしはその後でということになった。


 「ここに戻るのはいつかは分からない。まあ五日以内には戻る予定だ」

 「分かった。存分にもてなせるよう準備をして待っていよう。それと、ダグド・フールの件は悪かったな。良い貴族もいれば悪い貴族もいるということは分かってくれ」


 国王たちから見送られていざ行こうとした時――


 「待って下さい!私も連れて行ってくれませんか!?」


 カミラが俺にそう言ってきた。


 「あんたもこのパーティに入りたいのか?」

 「私はパルケ王国に何度も行ったことがあるので、そこの案内人としてついて行かせて欲しいのです。役立てると思いますし、何よりも、私はあなたに仕えたいんです!」


 カミラの言葉には強い意志を感じられた。引かないって気概も感じられる。


 「甲斐田君の意思に任せるわ。あなたが決めてちょうだい」

 「ん。コウガの好きなようにして良い」


 藤原とアレンは俺に委ねる姿勢でいる。少し考える。案内人か……確かに欲しいかも。亜人族の国へ行くのは当然初めてだしな。国に詳しい奴が一人でもいればやりやすい。あとはまあ……カミラとは人間的に相性が良いってのもある気がする。昨日でそれが分かったしな。


 「分かった。カミラ、お前をパーティに加えよう。案内頼んだぞ」

 「はい!よろしくお願いします、コウガ!」 



 こうして軍略家カミラ・グレッドを仲間に加えた俺たちは、ハーベスタン王国を出て、亜人族の国、パルケ王国を目指して旅を再開した。


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