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「新たなる3人」2

 「甲斐田君。大丈夫だと、思うかな?」 

 「さあ。彼女たちの気持ち次第だろ。事情を知った今、それでもやるってんなら止めたりはしない。もう好きにやらせるさ。まあ、見た感じそうはならない雰囲気だけど」


 俺は感情の無い目でアレンたちを見つめる。同時にパルケ王国での話し合いのことを思い出す。


 戦いの中で我が妻を殺した鬼…アレンの母が死んだ今、鬼族に憎悪・恨みを抱かなくなって鬼たちへの復讐を否定したディウル。彼と違って鬼族そのものを恨み憎んで鬼全てに復讐しようとした排斥派の筆頭ダンク。

 アレンたちもダンクも復讐心を抱いている。動機内容もよく似ている。互いに家族や仲間を失ったから。

 俺は身内が殺された経験が無いから二人の復讐心があまり分かってやれないが、殺意の気持ちはよく理解している。復讐の殺意はどこまでもどす黒くて昏く燃えているものだ。俺もかつては抱いていたものだったから。

 二人ともお互いの復讐心が理解できているのだろう。お互いの過去を見せ合いそして今、深く悩んでいる。ここからどうするべきか?殺し合うか、何もしないで去るか。

 俺はただ黙って見守るだけだ。この成り行きを。どう始末をつけるのかを。



                *


 あの後、ダンクは黙ったまま俺たちのもとから去った。自分の集落へ帰っていった。何も言わなかったから里にまだいる許しはもらったようだ。

 再会の喜び・旧交を改めて分かち合うべくアレンたちはスーロンたちが使っている家屋へお邪魔した。俺もすることがないのでお邪魔した。藤原はどういうつもりか、ダンクの後を追って行った。


 「その人族の少年が、アレンのパートナーなんだ……ん?人族、なの?」

 「俺は一度死んでいて、そのせいでゾンビっていう存在に……」


 スーロンたちに自分のことを話し、アレンたちと会ったことも話してあげる。この里の外の世界が今どうなっているのかも話してあげた。


 「…………要するに、あなたは鬼族の再興の要となる、アレンの未来の伴侶ってことなのね!」

 「え、まあ…………うん?」

 「うん、そうなる、かな…」

 「「その通りよ!」」


 楽しい話題をチョイスいたお陰でみんなからさっきまでの険悪さはすっかりとれて、笑顔を見せるようになった。キシリトはまたこうして仲間たちと笑い合うことが出来たーって感極まっている。そんな彼をギルスとソーンがからかってまた笑う。

 センとルマンドがスーロンに何やら色々吹き込んでいる。俺とアレンの仲を深めるどうとか…。

 少ししてからアレンたちはこれからのことで話し合い始める。


 「私たちはまだ生き残りの仲間たちを捜している。スーロンたちみたいにどこかで奴隷扱いされてる仲間を助けたりさまよっている仲間を確保したりしてるの」

 「集めた仲間たちで里を復興させようって考えてるの」

 「そして……私たちの里を滅ぼした魔人族への復讐も旅の目的としてる。力もつけないといけない」


 アレンたちの目的を全て聞いた3人は目を輝かせる。


 「その野望、私たちも乗るわ!」

 「ありがとう。一緒に叶えよう…!」


 スーロン・キシリト・ソーンの仲間入りが確定した。これで鬼族の戦闘パーティは8人となった。


 「そうとなればこんなところから早く出て行ってやるわ」

 「もし亜人たちが止めに来たら、力づくで出て行ってやるさ」


 これからの話を聞いて活力を得たスーロンたちは早速旅に出ることを望む。3人の決意を無駄にするまいとアレンたちもここをすぐ出ることを決めた。


 「なら、藤原を回収してついでにダンクの奴にもこのことを伝えるか」


 鬼族8人を率いて里から出るべく家を出る。

 しかしその道中で、


 「―――!?モンストールの咆哮!?」


 常人なら恐怖で震え上がるであろう獣の咆哮が向こうから鳴り響く。それを聞いたスーロンたちはモンストールのものだとすぐに察した。


 「あの時みたいに、また想定外の襲撃か…!」

 「やっぱりこんな地帯に安全なところなんてなかったんだよ」


 キシリトとソーンは忌々し気に愚痴を吐く。今頃亜人たちが慌てて対処しているのだろう。そこに藤原もいるはずだ。

 彼女に合流することを優先するべく奴らの集落に移動する。だがその途中で、


 「「「「「っ……!!」」」」」


 アレンたちが全員戦慄した反応を見せた。冷や汗を流して微かに震えてもいた。


 「アレン?」


 アレンはどうにか震えを抑えて、俺の腕をキュッと掴んでくる。そしてどうにか俺に教えてくれる。


 「ヤバい奴が、来てる…。私たちじゃ勝てない奴が………っ」


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