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「全部あいつらの自己責任だ!!」2

 「テメーの顔を見た俺はさっきからずっと、不愉快な思いをしてるんだよ。そのキモい面をぐしゃぐしゃにしてやりたいと思ってたんだよ。何せテメーも、大西どもと同じように俺をリンチしやがったゴミムシだったもんな?」


 頭を踏みつける。堂丸からくぐもった声が漏れる。脳裏には召喚された最初の頃、訓練でやられた時のことが浮かぶ。忘れられない屈辱だ。


 「あの時よくも一緒になって俺を痛めつけてくれたなァ?これはあの時のお返しだ。なあ、堂丸勇也」

 「ぐ……ああ!」

 「誰が雑魚だ?誰が“ハズレ者”だ?誰に対してそのクソな口利いてやがんだ?テメーが相手してる男はなぁ、Sランクモンストールを余裕で何体もぶち殺せる、魔人族も既に二人殺している実績もあるんだぞ?」


 濃密な魔力を込めた殺気を部屋中に放ってやる。このカスのせいで周りが俺の力を疑う空気になってるっぽいから、思い知らせてやる。俺が、Ⅹランクに足る力を有しているということを。

 怒りの感情しかなかった堂丸の顔に若干の恐怖が混じりだす。他の連中も魔力にあてられて騒ぎ始める。

 少し愉悦に浸った俺は堂丸の腹に蹴りをさらに入れようとする。


 「止めなさい!!」

 「止めて!!」


 その直前、二人同時から止めろと声がかかる。藤原と……高園だ。


 「君のクラスメイトに……私の生徒にそんな酷いことしないで」


 藤原が俺を堂丸から引き剝がして静かにそう言ってくる。クラスメイトなもんかこんな奴。


 「…………………」


 高園は無言で、悲しそうな目を俺に向けたまま堂丸の介抱をする。遅れて曽根も奴を一緒に介抱する。


 「コウガさん。ここは謁見の間であり、国王様の御前です。これ以上あのような乱暴をされるというなら、ここから出て行ってもらうことになります。そして、あなたの要望も一切受け付けられなくもなります」


 クィンが厳しい目つきで、しかしどこか悲しそうな感情を含ませて(そんな気がした)そう告げる。


 「はぁ……また俺が“悪い奴”になるのかよ。先に手を出してきたのはそこのカスだってのに。それも武器の発射までしでかした奴だし。国王の御前とやらで」


 藤原の手を払ってアレンたちのところへ戻る。兵士や国の要人、そして米田と中西。誰もが俺を怪物を見るような目で見ていた。同時に野蛮な輩を見る目もしていた。何か完全に俺が悪者になってる空気だな。負の感情を向けていない傍観者はミーシャくらいか。どうでもいいが。


 いつもそうだ。結局俺が悪い奴扱いにされる。


 「元の世界向こう異世界ここも同じだな。もう分かってることだけど」


 愚痴るようにそう言って国王と向き合うが、その国王は相変わらず厳しい目をしている。


 「話が逸れまくってしまったけど、今から再開しようか?」

 「………場が荒れてしまったな。ここは皆頭を冷やす時間を要した方が良いだろう。君にも少し落ち着く時間をやった方が良さそうだ」

 「…………お気遣いどうも。そうさせてもらうよ」


 俺との話を中止にするのではなく時間を改めるところ、この国王は人が良いな。ドラグニアのクズ国王とはえらい違いだ。


 「1時間程空けるとしよう。皆、気を休めてから出直してもらいたい」


 国王がそう言うと空気が少し弛緩する。俺はアレンたちを連れて部屋を出ようとする。その途中高園が俺をずっと見ていたから、彼女と曽根に肩を貸してもらっている堂丸に、ずっと言いたかったことを言ってやる。


 「テメーらに教えてやるよ。

 ドラグニアにいたクラスの連中が全員死んだのは、全部あいつらの責任だ」

 「っ!?」


 高園が動揺する。堂丸が顔をこちらに向けて睨みつける。


 「だってそうだろ?平凡レベルの訓練すらちゃんとやらなかったような連中だったんだろどうせ。異世界召喚の恩恵に浮かれて、それに縋ってばかりで。才能に溺れるとはまさにあいつらのことだ。

 恩恵にかまけて努力することを怠った結果が、惨たらしい死という最悪の結末にさせたんだ、あいつら自身がそうさせた!」


 誰も何も言い返さない。


 「あいつらが化け物に殺されたのは、あいつらが怠惰だったからだ!あいつら自身で切り抜けるべきだった修羅場を、俺が助けるべきだった?馬鹿馬鹿しい!俺みたいに日々鍛錬をしていたら死なずに済んだはずだった。

 全てはあいつらの自己責任だ!それを俺のせいだとか、寝ぼけたこと言ってんじゃねーぞ雑魚が!!」


 ビリビリビリ……ッ 「「「「「っ!?」」」」」


 無意識に力んでしまっていたせいか、発した言葉に微弱な魔力を込めてしまい部屋全体を震わせてしまった。部屋にいる誰もが俺に注視していた。アレンたちですら俺に畏怖してるように見えた。

 これ以上喋っても本当に不毛だろうから、さっさと出て行くことにする。


 「………一応あんたにも向けた言葉だ。間違ってるとは思ってない。言わせない」


 去り際に藤原に小声でそう言う。彼女は悔しそうに俯いていた。


 「甲斐田、君……」


 高園の声がしたが無視して扉に手をかける。


 「あの時の俺の行動は正しかった。絶対にな。誰があんな奴らを助けるかよ」


 誰に向けたわけでもない言葉を呟いてから、最悪な空気になってしまった大部屋から出て行った。

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