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「全部あいつらの自己責任だ!!」

 部屋中からどよめきが起こる。その声のほとんどは国の要人たちのだ。兵士の何人かが眉をひそめる仕草を見せる。ゾンビになって五感が冴え渡っている俺からは多種多様の反応を見ることができる。

 国王は厳しい顔つきのまま黙っている。ミーシャは不安げな眼差しをこっちに向けている。クィンと藤原は複雑そうにしている。


 「は………な、ああ?」


 堂丸はショックのあまりか、口を震わせて言葉を上手く発せないでいる。後ろにいる高園たちも目を見開き、ショックを受けた様子で俺を見てくる。


 「見殺し…?」

 「そうだ。Sランクモンストールの群れが王国に攻め込んできて、カドゥラっつったっけか、あいつに駆り出された救世団(笑)もといクラスの連中は抗戦するも、力の差があり過ぎて敵わず次々と殺されていった。

 一方の俺は、敵に対してだけ気配を殺して、安全なところであいつらが殺されていくところを見てたんだ」


 話を聞いている高園は、目に涙を溜めて顔を真っ青にしている。他の3人も同じような顔をしている。


 「俺に気づいた連中の何人かは俺に助けを求めてきたっけ。テメーらが俺に対して今までどんな扱いをしてきたのかを無かったかのように、俺たちはクラスの仲間だろうとか何とか言ってさ。もうね、こいつら馬鹿通り越して愚かだなって思ってさ」


 堂丸と高園たちがいるとこを円を描くように歩きながら話す。


 「当然そんな奴らを助けようなんて思うわけない俺は、“嫌だね”って断った。特にあいつは……ああ大西だっけ?あの時も建前の謝罪しか口にしなかったからな。心の中では全く“ごめんなさい”なんて思ってなかったんだぜ?どいつもこいつも俺をまだ下に見てやがった。ホントムカついたぜ、あれには」


 堂丸の隣に立ち、顔を見ながら話してやる。


 「最期は俺に罵声をとばしながら化け物どもに喰われ、潰されてたな。ったく、テメーらも俺のことを見殺しにしてたくせに、よくもまあ俺に汚い言葉を浴びせられたもんだ。因果応報だってことに気づけってんだ。テメーらが俺にしたことをそのまま返してやっただけだってのに。なあ?」


 煽り口調で堂丸に言葉をかけると離れて元の位置に戻る。


 「あなたという人は……」


 クィンが悲しさと非難が混じった目を向けてくる。続いて貴賓席から俺を非難する声もする。アレンたちはその野次を不快そうに聞いている。


 「………うが」


 目の前にいる堂丸が何か言っている。


 「この、クソ外道があああああああ!!」


 部屋中に堂丸の怒号が響く。俺は不快げに耳を塞いで鬱陶しそうに見返す。


 「よくもみんなを…!みんなが殺されていくのを何もしないでただ見てただと!?この、クズ野郎が!!」

 「よく吠えるな、雑魚が」

 「はっ、雑魚はお前なんじゃねーのか!?ホントはお前はⅩランクでも何でもない、最初の頃と同じ“ハズレ者”なんだろ!?だから敵に立ち向かうこともできず、安全なところでみんなを見殺しにしたんだろ!?お前がSランクモンストールとかより強いなんて、そもそもおかしいんだよ!!」


 耳障りな怒声を吐きながら奴の武器である大きな大筒を構えだす。


 「この場で化けの皮を剥がしてやるよ…!お前が本当は最弱だってことを!!」

 「堂丸君っ!」


  高園が止めようとするが無視して、堂丸は大筒から弾を発射…なんてことはせず、大筒そのものを鈍器として殴りにかかった。キレてるようだが場を弁えてはいるようだ、一応。


 「みんな、ちょっと下がってて」


 アレンたちに数歩下がってもらい、向かいくる堂丸を冷めた目で睨む。向こうは俺の発言に対しブチ切れているようだが……それはこっちも同じなんだよクソが。


 「藤原、俺をこいつらと会わせたのはやっぱり間違いだった」

 「甲斐田君ダメ―――」


 常人から見れば鋭く洗練された動きで大筒を振り下ろしにかかる堂丸の脚を蹴って払う。バランスを思い切り崩された堂丸はここで頭に血が上ったのか、大筒から砲弾を発射しやがった。


 (あ、こいつ俺を殺す気で撃ってやがる)


 かといって全く脅威ではない。魔力も込められている砲弾を、羽虫を払う動作ペチンと上へ吹き飛ばす。天井にぶつかり爆発が起こり、破片が落ちてくる。控えていた兵士たちが慌てて障壁で防いだ。


 「甲斐田あああああ!!」


 完全に切れた様子の堂丸がまた砲撃をしようとしている。俺は呆れ半分苛立ち半分で奴に接近し、今度は完璧に転倒させて床へ倒れさせる。

 大筒を蹴飛ばして部屋の隅へやってから、マウントポジションを取る。そして怒りの形相のまま睨みつけている堂丸の顔面に、死なない程度の加減で拳を振り下ろした。


 ドゴッ 「ぐあ”……!」


 返り血が頬にかかるが、気にすることなく次を放つ。


 ボゴッ 「がっ」

 ゴッ 「おぐ…!」

 ガンッ 「ぎぃ…っ」


 殴る度に血が舞い、俺の顔や服を汚していくが気にしない。後で洗えば良い。マウントを解除して胸倉を掴んで立ち上がらせる。堂丸の顔面は既にパンパンに腫れ上がっていた。


 「……っ!……っっ!」

 「力の差を全く測れない雑魚が、ハネッ返りやがって」


 片腕で楽々と持ち上げて全身を床に思い切り叩きつける。ワンバウンドして少し離れたところへ転がる。


 「テメーだけがキレてると思ってんじゃねーぞ?俺が冷静に見えるか?」


 ドゴッ 「ごぇえ……!」


 隙だらけの腹につま先蹴りを入れると血が混じった胃液を吐いて体をくの字に曲げる。


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