要塞城の近くで繰り広げていた兵士団と獣人の雑兵戦士どもとの戦いは、既に終わりつつあった。
クィンと元クラスメイトどもが加わったこともあるが、獣人戦士どもの弱体化が大きな要因だった。モンストールの力を取り込んでいたはずの奴らからその力が無くなっていき、自滅する奴、めちゃくちゃ弱くなる奴が次々に出てきて、もはや戦いにならなかった。
「
俺が介入する余地は無く、獣人族は完全に敗北した。生き残った獣人どもは戦意を失い降伏していた。力が無くなったことで本来の性格に戻ったみたいだ。
「っ!コウガさん!!ここに来たということは……!」
「おう。魔人族はもういなくなったぜ。獣人どもが弱くなったのはそのせいかもな」
「はい、糸が切れたかのように弱体化したので、すぐに制圧出来ました。
それよりも、魔人族を討伐してくれてありがとうございます!無事に戻ってきてくれて安心しました…!!」
クィンは目を少し潤ませて俺の無事を大いに喜び、魔人族を討ったことを大いに感謝してきた。周りにいる兵士たちも俺のことを讃えてくる。
「地上に出てきたコウガさんと魔人族を見た時は正直気が気でなかったのですが、あなたを信じてここに来ました」
「そりゃどーも。今回はけっこう苦戦したけど、まあ勝てた」
「はい……!」
クィンと会話していると後ろから藤原と高園が追い付いてくる。兵士たちが勝どきを上げているのを見た二人は安堵の笑みを浮かべる。そこに元クラスメイトの3人も集まってきた。
「美紀ちゃん小夜ちゃん、堂丸君。良かった、無事で!」
「みんな怪我はない?」
「うん、4人でここに来てしばらくしてから敵が一斉に弱くなったから、兵士たちと一緒に一気に攻められたっていうか?」
「おう、あいつら俺のガン攻撃でガンガン倒してやったぜ!兵士たちにも褒められたぜ!」
「でも…何でいきなり弱くなったのかな?」
元クラスのメンバーが無事を喜んだり活躍を自慢したり疑問を言ったりして話す。そして3人が俺の姿を目にすると急に黙りだす。何だこの空気。
「獣人族が弱体化したのは、コウガさんが魔人族を討ってくれたからです。彼のお陰で私たちは犠牲を出さずに勝利することが出来ました」
言われてよく見ると兵士たちの死体は一つも無かった。ドラグニアでザイートに大勢殺されたあの惨劇のようにはならなかったみたいだな。兵士団長やデ…何とかっていう兵士もいる。
「まさかあの甲斐田が、魔人族?っていうヤバい敵を一人で倒すくらいに強くなってるなんて………っ」
「………俺も驚いた。まさかテメーらがこんなところに来てたなんて。一人は欠席みたいだが」
中西晴美を除く3人の元クラスメイトを順に見ながら言い返す。堂丸は複雑な面差しで俺から目をそらす。
「あんたが言ったことじゃない。自分がどうしたいのか考えろって。縁佳を助けたいと思ったから、みんなでここに来たのよ」
「……?何のことだっけ。まあいいや」
曽根にかけた言葉などもう覚えていない。話は終わりかと思ったら、曽根はどこか緊張した様子で俺にまだ何か言おうとしている。
「あ、あのさ………たった一人であの魔人族を倒してくれて――――」
―――ドドドドドドドドド………
後ろから…要塞城の方向から何かが走ってくる音がする。曽根をスルーして振り返ると誰かがこっちに全力で走ってくるのが見える。
「あれは……………アレン?」
次第に彼女の姿が映る。ただ……何か様子が変だ。顔が紅潮していて息も少し荒い。
あっという間に俺たちのところにたどり着き、俺に気付いてこっちを見る。
「……!……!!………!!!」
アレンは血走った目で猛然と俺に接近する。この表現だと完全に襲われる前触れに聞こえるだろうが、俺は迎え撃つことはしなかった。理由はアレンに敵意がなかったし、彼女は俺の味方だから。
「コウ、ガ……!!」
「アレ――」
名前を呼ぼうとしたがタックル気味の抱きつきをされてしまい途切れる。思い切り、しがみつくように俺を抱きしめてくる。密着したことでアレンの心臓がバクバクといってるのが分かる。呼吸もすごく荒い、肩で息をしてる状態だ。
「コウガ………」
アレンは震える声で俺の名を呼ぶ。そして――――
「ん………っ」
熱い口づけを してきた………!!