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「答えは馬鹿め……だ!!」2

 「ソーン、敵を取りこぼしたとしても安心しろ。俺たちが余裕で処理してやるからな」


 「ちょっとー!私がヘマをするようなこと言わないでよー!二人に敵なんか来ないわよ、私が全部討伐してるんだから。何せ私はみんなの中でいちばん成長したんだから!」


 「まあそう言うな。キシリトは兄として心配してるんだ。ソーンが成長したのは俺もキシリトもよく分かってるからな。頼りにしてるからな」


 ギルスのフォローにキシリトが気まずそうに照れて、ソーンは頬を少し赤くさせて嬉しそうに笑う。


 「分かってるじゃないギルス!でもあなたには出番があまり回らないかもね!」


 二人仲良くしているところにガーデルが割って入る。


 「何あんたまでお兄ちゃんやってんのよギルス。そうよあんたの出番は無いわ。私があんたの分まで敵を討つからね」

 「何だと?俺の方が絶対に戦果をあげてやるからな」


 つっかかれたギルスはガーデルと向き合って闘志を燃やす。二人は良くも悪くもライバル関係だ。修行中はこの二人がよく模擬戦やってたしな。


 「そして後衛……この里に残るのがルマンドとセン、そしてコウガです」

 「分かった」

 「任せて!」


 カミラの指示に俺とセンは了解を示す。あえて里に戦える者を多く残した理由はちゃんとある。カミラが指示した戦闘配置には隙が無い。


 「あともう少ししたら、来るか……敵が」


 里の外の方を眺めて、少し回想に耽ってみる。


 (半年間……俺にとってはあっという間だった。修行しながらこの世界をめぐり回った。全ての大陸を踏破もした。

 鬼族と竜人族から武術を全て教わった後は、毎日休まずにずっと自主トレしていたなー)


 修行期の最初の1~2ヵ月間は、アレンやエルザレスたちにそれぞれの武術を習って技を習得することに専念した。そのお陰で俺の格闘術の質…技のキレが大幅に増した。

 どんな敵だろうと熟練された技で確定急所を突いて即殺。身体のあらゆる筋肉・関節・骨、さらには細胞の一つ一つまで自意識で思いのままコントロールして操れることも可能になった。動きに無駄というものを全て排除することにも成功している。

 そのお陰があってか、6000%くらいが身体の限界だった「脳のリミッター解除」が、10000%、20000%……それ以上の段階へいくことができるようになった。身体のコントロールを完成させたらここまで進化できるとは思わなかった。そのきっかけを掴ませてくれた竜人族には大いに感謝している。


 「カミラ、竜人族がもしヤバくなったら、俺はあいつらを助けようと思う。もちろんここがヤバくなったらここを優先するけど。あの情報屋とは連絡取れるんだったよな?あいつに俺を呼んでくれればそこに行くって伝えてほしい」

 「分かりました。竜人族とは同盟を結んでいる関係。窮地に陥ったのなら助けるのは当然です」


 カミラは微笑んで了承してくれた。それからそろそろ各自の配置に移動しようとしたその時、俺たち全員が異質な気配を感じ取った。


 「……どうやら早速、招かざる客が来たみたいだ」


 俺たちは一斉に空を見る。そこには巨大な獣が飛んでいて、この地に降りようとしている。攻撃する気が無いことに気付いたカミラが俺たちを制止させる。とりあえずは攻撃しないで敵らしき訪問者の様子を見る。

 着地した獣……鷹と猛獣が合成されたモンストールの背から一人の人間が現れる。その見た目からして、すぐに魔人族であると判断する。


 「本当に鬼族がこんなにも……ククク、里まで興してやがる」


 鬼たちに侮蔑的な視線を飛ばしながら里を見回す魔人族に、みんなが殺気立つ。


 「魔人族がここに何しに来やがった?」


 みんなを代表して俺が尋ねると魔人族は俺にも侮蔑を込めた視線を向けてくる。


 「はあ?誰だお前は?それに何しに来た、だと?先日のヴェルド様の宣言を聞いてなかったのか?

 選べ、魔人族に服従するか、ここで今すぐ滅ぶかを」


 魔人族の全身からドス黒い魔力が噴き出る。脅しているつもりなのだろうか。鬼たちの何人かは奴の魔力と戦気(俺とカミラは感知できない)に怯んではいるが、アレンをはじめとする主戦力の鬼たちは全く動じていない。

 俺にいたってはつまらなそうに耳をほじっている。その態度に苛ついたのか、魔人族が声を荒げる。


 「何だその態度は!服従するか否か、答えろ!!」


 俺は耳をほじるのを止めて魔人族に近づく。そして淡々と答えてやった―――




 「答えは馬鹿め……だ!!」




 ズパン!! 「げぉあ……!?」


 一瞬で魔人族の懐に入り、「身体武装硬化」で刃と化した手刀で胴体を一太刀に斬った!!


 「よくも…………この里を、こいつら全員滅ぼしてやる!!」


 ぶち切れた魔人族が叫ぶ。直後いくつもの気配が近くからも遠くからも生じた。


 魔人族との大戦……開戦だ!!

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