目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

「彼らは出会っていた」2

 バラバラ...邪馬台国時代、戦国時代、俺たちの時代の平成、さらにその先の時代など…色んな時系列から召喚したってことか。んで、俺たちの召喚については、時代は統一できたものの特典とかは特には...ってこともないか。俺には「逆境強化」なんてものがついてたし。

 今にして考えると「逆境強化」は特殊過ぎる固有技能だよな。


 「おそらくお前にだけ偶然特典がついていたのだろう。お前以外の異世界召喚組にも会っていたが、特典らしきものはもらっていなかったそうだ」


 なるほど、「逆境強化」は特典だったのか。で、それと引き換えに初期能力値は元クラスメイトどもと違ってゴミ数値になってしまったと……。


 「そして俺が今もこうして生きながらえているのは、特殊技能“細胞分裂遅延化”が理由だ。こいつも最初からついていた固有技能らしくてな。

 名前の通り俺は老いるのが常人よりもはるかに遅い体質になった。100年以上経って共に戦ってきた仲間が寿命で死んでいく中、俺だけは元気に生きていた。言っておくが俺にもちゃんと寿命はあるし、致命傷くらえばちゃんと死ぬぞ。あと何年生きられるかは俺にも分からないが。

 最初は何の使い物にもならない技能だったが、今はそうでもない。復活した魔人族から世界を守る戦いにまた身を投じることになったしな。まさか滅んだはずの敵とまた戦うことになるとは思わなかったが」

 「………そうだったのか」

 「ところでお前の名前をまだ聞いていなかったな。異世界から来た少年だってのは分かったが…」

 「俺の名は甲斐田皇雅だ」

 「………!そうか、お前があの時討伐した魔人族が言っていた……。ウィンダムとかいう少し狂った奴だったか」

 「何だって!?奴を討伐したのか……!?」


 ここで初めて魔人族ウィンダムが死んでいたということに気付いた。まさか八俣が討伐していたとは。


 そこからも八俣から当時の戦争のこと、魔人族を退けた後のことを色々聞いた。

 若返りや寿命延長など即興の戦には使えない技能しか授けられなかった為、他の異世界召喚組よりかなり劣っていて戦争ではあまり活躍できなかったこと。しかし年月が経つにつれて体力が衰えていく仲間たちとは反対に、自分だけが衰えるどころか技術・筋力・体力・魔力全てがますます強化されていったこと。仲間たちとのジェネレーションギャップに驚かされまくったこと。そして...次々いなくなってしまった仲間たちの最期を看取ってきたことなど。

 懐かしんで、どこか偲ぶ気持ちが窺えた。俺もエルザレスやザイートの話を振ると通じたので、話に興が乗った。しばらく話し込んだところで、俺も八俣も真剣な話に入った。


 「何で、自分が異世界召喚されたことを、偽名を使ってまで隠してたんだ?」

 「俺は...別に名声の為に戦ってるわけじゃなかったからな。世界全体が魔人族のことを伏せると決めたと同時に、俺たち異世界召喚組のことも伏せることにした......俺たち全員の意思の下で、だ。あんな忌まわしい凄惨な歴史は子どもたちには伝えたくなかったと、当時の大人たちはそう考えていたそうだ。俺はそいつらの意思を汲んで、今日まで自分の素性を隠してきた。例外としてラインハルツの代々の国王様には俺の素性は明かしているが」


 そんな事情があったとは...。そんなに大昔の魔人族は過激だったのかよ。まぁザイートやウィンダムみたいな奴がいるくらいだから納得できる。


 「仲間を看取ったと言ったが、当時の魔人族をいったん討ち滅ぼしたあんたらは、元の世界に帰ろうとはしなかったのか?」

 「元の世界...日本に帰る転移魔術は当時はまだ完成されていなかった。それ以前にバラバラの時代から来た俺たちがそれぞれの場所へ帰るとなると、そこから数十年以上の時間を要しなければ、帰る為の魔術は完成しないと言われた。まぁ俺を含む異世界召喚組全員は、この世界に残る意思があったから特に気にならなかったが」


 俺からもいいかと、今度は八俣が話を振ってきた。


 「お前は元の世界に、日本に帰りたいのか?」

 「ああ。あっちにはやり残していることが腐る程ある。あっちでの未来で生きていたいんだ。サント王国に転移魔術の完成をやっと約束させたところなんだ。あとはその完成を待つだけ。それを邪魔しようとする魔人族は、俺の敵だ。奴らがこの先世界を滅ぼそうってんなら、俺が皆殺しにする」


 八俣にそう決意表明をする。


 「言葉は物騒だがお前の意思・言いたいことは伝わった。お前も魔人族を討とうと思っている仲、そう思って良さそうだな」


 八俣は小さく笑うとまた真剣な顔をする。


 「魔人族は俺の想像をはるかに上回る強化を遂げている。お前が弱らせたウィンダムとやらにすら苦戦した俺だ。しかも奴より強い個体はまだ多くいる。この先の魔人族との戦いは……俺たちが召喚された時代の頃以上の難易度になりそうだ」

 「難易度か…。負ける気は毛頭無いみたいだな」

 「ああ。連合国軍が勝つさ。もっとも、俺が生き残っているかどうかはまた別の話だがな」

 「あんた、まさか………」


 八俣は短く笑ってその続きを話す。

 それが終わると八俣は刀を抜いて見せる。


 「ここに来たのは修行目的なのだろう?せっかく来たんだ、ここでみっちり鍛えていくといい、

 「もちろんそのつもりだ。今日は少し修行の相手をしてもらうぜ、


 俺たちは笑い合った後、修行を始めた。それにしても八俣倭………彼も俺と同じ、とんでもないチート主人公キャラだ。いずれは「序列」持ちクラスの魔人族をも討ちとることもあり得る。



ヤマタワタル 170才 人族 レベル529

職業 侍

体力 103000

攻撃 310500

防御 50600

魔力 36000

魔防 53000

速さ 99900

固有技能 全言語翻訳可能 瞬神速 斬術皆伝 二刀流斬術皆伝 怪力 見切り 気配感知(+索敵) 雷電魔法レベルⅩ 光魔法レベルⅩ 嵐魔法レベルⅩ 

限定超強化 

*強化発動時、能力値100倍以上上昇

*特殊技能 細胞分裂遅延化



 彼も俺と同じ、魔人族を滅ぼし得る切り札となるだろう―――


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?