舞台は戻り、名も無き島跡地―――
瘴気が充満した暗い地底から抜け出して、場所は青空と太陽があって海もある地上。俺もザイートもいつでも出られる状態だ。先に俺が動く。
「“身体武装硬化”」
両腕両足に推進機を装着、それらを稼働させてパンチや蹴りの速度・威力を倍加させる。あまりの速さに体がブレて攻撃を外すリスクがあったけど、半年間の修行のお陰で今では急な加速に引っ張られることなく急所を常に正確に当てられる。
「フッ―――」 ドス……ッ
当たった……しかしそれでもザイートには少ないダメージだ。体をゴム性質化させてるせいでダメージを減少させられているのだ。
一人分の力だけじゃダメだ、二人分の火力を常にくらわさないと奴を倒せない...!
覚悟を決める...ここからは一ミリ単位のミスも許されない、技の戦いになる...!
俺が脱力した様子を見たザイートは、同じように力を抜いて次の攻撃に備え出した。
「やっぱり俺一人の力じゃ無理だ...テメーの攻撃を吸収した一撃を次々に決めて、回復も間に合わないくらいに潰してやる...!」
「フッ、丁寧に俺を倒す方法を喋ってくれたが、そう簡単にはやらせんぞ...。まぁここはあえて、俺から攻めるとしよう」
お互い啖呵を切ると互いに片腕を当てて交差するようにする。ここから本気の殺し合いをするその引き金として自然とそうなった。
腕と腕が触れた直後、俺たちは同時にニヤッと笑い合うと開戦の合図とばかりにその場から数歩退いて……駆け出した!
“全属性武装鉤爪”《マルチ・ガロン》
宣言通り、まずザイートが両手に多種類の属性魔力を纏った鉤爪を武装し、先制の爪撃を繰り出してくる。炎、雷、風、水、闇...10本の指に5種類の属性を付与して切り刻んでくる。うーん、やっぱりそういう攻撃仕掛けてくるよなぁ。
俺のカウンター技は主に打撃系専門。斬撃や魔法攻撃に対しては効果が薄いのだ。しかし…やりにくいのであって別にできないわけじゃない。ただ攻撃の衝撃を上手く体内で受け流せないという欠点があって難し過ぎるのだ、特に魔法攻撃は無理に等しい。
だからまずは「魔力防障壁」を全身にぴったり服のように張り付ける。体に鉤爪が触れる。炎や雷が纏った多数の爪撃が襲いかかるが、障壁によって威力を弱める。俺にくるダメージはそれらから生じる衝撃...これをもらう!
全身を旋回し、右足を軸足にしたローリングバット蹴りをかまして倍返しする!
「成功だ、“玄武”―――“廻烈”!」
ザイートの攻撃をも乗せたカウンター蹴りを、奴に叩き込む…!
「(ニヤリ……)」
が……ザイートは待っていたかのようにほくそ笑むと、腕を大きく広げて大の字のポーズをとったまま、腹で蹴りを受けた。そして触れた瞬間、全身をベリーロールの要領で猛回転させて、その勢いとダメージを全て乗せた右拳を振り下ろしてきた――!
“スザク”
(やっぱりカウンター返しも真似てきたか!倍返しのさらに倍返し...!これをくらえば全身破裂、俺は無力化してジ・エンドだ。躱せる速度じゃない。防御なんてもってのほか。
だったら方法はただ一つ―――上乗せして返してやれば良いだけ!!)
即死級の振り下ろし拳を額で受けてその勢いを活かして、さっきと同じ跳び宙返りからの踵落としをおみまいしてやった!
カウンターの一撃を倍返しにした一撃を更にまた倍にして返す一撃…これはもう誰にも止められない!
と思っていたのだが、俺は迫りくるカウンター技になお余裕の表情で笑っているザイートの顔を目にした。
「さぁ……どちらが最後にくらうか、とことんやり合おうか!!」
奴がそう吼えた直後、俺の踵を両腕で受け止めた。腕→体幹→股関節へと衝撃を流していって...全ての威力を脚にパスして、計5人分の火力が込められた蹴りを放ってきた!!
(そうか……野郎、このカウンター返しがどこまで続けられるか勝負仕掛けてきやがった...!!ミスった方がこの恐ろしいエネルギーの塊をモロにくらってジ・エンドって言いたいようだな......やってくれるじゃねーか!!いいぜ、この技をつくった本人として、この
「やってやろうじゃねーかあああああ!ザイートおおおお!!」
俺も大きく吼えてカウンター蹴りを受けてさらにまた倍返しした!
そこからは、お互い熾烈な倍返し合戦が始まった...!