五度目かのカウンター返しをし合ったところで………
「魔法や剣、爆弾といった武器兵器がたくさんあるこの世界で!俺たちのいちばんの武器は
サマーソルトキックを頭で受けて、バック宙返りからのヤクザキックを繰り出したザイートは、大声でいきなり俺に話を振ってきた。
「あぁ!?何を今さら!だが奇遇だな、俺もついさっき同じことを思ってたよ!ここはファンタジー世界だってのに、俺の戦い方が完全に原始的だってことにな!俺だって本当はカッコいい魔法や魔術を放ったり派手に兵器を使いたかったんだよぉ!」
ヤクザキックを右方の横腹で受けてすぐ旋回、とてつもない遠心力に負けないよう下半身にも力を入れて体を正確に動かして、隕石を思わせる勢いで左肘鉄を振り下ろす(“玄武”)。その最中、興が乗った俺も大声でザイートの話に応じてやった。
「ファンタジー?幻想的な...つまり夢の世界を期待してたってか?随分メルヘンなところがあったんだなお前に!それにしても、俺たち魔人族がいよいよ世界を滅ぼして俺たちの世界を創造しようって時に、お前のようなイレギュラーが登場したせいで随分予定が狂わされた!どうせならせめてこの世界が俺たちのものになってから来てくれば良かったのになぁ!」
俺が超音速で振り下ろした肘鉄を右掌底で受け止め、そこから衝撃を体内でパスし続けて、最後に左フックでフィニッシュ、カウンター返し。
「はっ、こっちとしても勝手にこんな世界に召喚されて迷惑してたんだよ!しかもテメーらがつくった
カウンターのフックを胴体で受け止める、そしてまた倍返し(“玄武”)。
「とことん傲慢で自分勝手だなお前は!そんな規格外でイレギュラーな力を持つとそうなるのも無理も無いか。大きな力は人を簡単に変えるのだからなァ。
ならば俺も自分勝手に、思うがままにやらせてもらおう!人族と魔族全てを根絶やしてこの世界を魔人族による魔人族の為だけの新しい世界に変えてくれる!その為に!こうして邪魔するお前を完全に消すとしよう!!」
俺の胴体回し蹴りを、相手も腹筋で受け止めて...からのさらなる倍返し。
「そうかよ、させねーけどな!テメーが滅ぼそうとしてるものの中には、俺を元の世界に返してくれると約束した奴がいる!他にもアレン...鬼族たちも俺の仲間たちだ!他にも色々殺されるのは惜しい連中がいる!
そいつらまで滅ぼすってんなら、テメーの仲間にも容赦しねーぞ?全員ぶち殺す!!」
倍返し(“玄武”)。
「知るか!俺たちはただ全部滅ぼす、それだけだ!というか、同胞を殺すだと?俺を殺した後にか?調子に乗るな!邪魔者がああああああ!!」
また倍返し。
「テメーこそ邪魔なんだよぉ!さっさと死んで消えろおおおおおお!!」
さらにまた倍返し(“玄武”)。
「死ねぇ!」
「お前が死ねぇ!」
「テメーが死ねってんだ!!」
「お前こそが死ぬべきだ!!」
「「 テメー(お前)が死ねえええええ!!! 」」
......!
......!!
......!!!
お互い暴言を叫んで死ね死ねと罵り合いながら、カウンター返しによるぶん殴り合いを続けていく。その世界一危険な回転扉のようなやりとりから発生されたエネルギーはどんどん増大していき、その余波もえげつなくなっていった。
俺たちは拳や蹴りを交互に放ち合いながらハリケーンのように海を渡り、いつの間にか他の島、大陸まで巻き込んでいた。通り過ぎた跡には山サイズの抉れた痕がいくつも残っていた。
今や俺たち二人が、世界を滅ぼし得る規模の「天災」そのものと化していた。近づくもの全てが消し炭となり、灰となり、塵となっていく。島がいくつも消滅し、陸と空と海が割れて、空気が震える。人族も魔族も、魔物もモンストールも、そして魔人族さえもそこに入ればタダでは済まないくらいの死の余波が、俺たちの殴り合い・蹴り合いで生み出されていったそうだ。
―――
――――
―――――
もう幾十、いや百にまで達したか?数えきれないレベルのカウンター合戦を続けている。これだけ繰り返したこの膨大な力...くらった方が文字通り消えるだろうな...。
「しぶとい、なっ!素体が人族のくせに、よく壊れないものだ!」
「もうとっくに人間のレベルなんか超えてんだよこっちは...いや、死んでるから壊れるもクソもねーんだよ!テメーこそ見よう見まねでこの技をよく続けられるぜ、この野郎がっ!!」
しかし……どんなことにもやがて終わりは来るもの、そう決まっている。この世界一危険な回転扉…カウンター合戦による殺し合い。世界を滅ぼし得る天災に終わりの時が来たのだ。
「ここだぁ!!!」
「な――!?ぁ―――」
いったい俺とザイート何百人分もの一撃が乗っているのか、お互い威力が膨れ上がっていくカウンター攻撃をいつまでも受けきれるのはやはり無理があったらしく、ついに
「残念だったな.........」
――そいつは打ち負けした......
「 カイダ 」
―――俺、甲斐田皇雅が……。
ゴッ―――――ドオオオオオオォン.........!!!
炸裂音とともに、俺の体とその周囲の陸地・海・島・生物が、全てぶっ壊れた。
(く......そ.........負け、た!)
最後は数百人分の拳や蹴りのエネルギーが乗ったザイートの頭突きをくらったことで、このカウンター合戦は終了した。
そして、俺の意識が…遠のいて……いく―――
…………。
………………。
……………………。