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第4章 中等部のみぎり

第93話 麗子様は波乱のスタートに戦々恐々す


 春休みが終わって、私もついに中等部へと進学よ。


 初等部の卒業式ではちょっと落ち込んだけど、良いこともあった。お兄様が花束を贈って渡くれたの。


 楓ちゃんと椿ちゃんも「麗子様のお兄様って素敵!!!」って大はしゃぎ。せやろうせやろう、我の自慢のお兄様ぞ。


 さらに微笑みながら「卒業おめでとう」とお祝いしてくれて、もうサイコー!


 ああ、お兄様の笑顔プライスレスです。

 麗子の魂はそれだけで癒されましたわ。


 来年、お兄様の高等部の卒業式には、きっと私の持てる全てを注いで素敵なプレゼントを贈ります。待っていてねお兄様。麗子はお兄様になら全財産を貢いでも悔いはありません。何を贈ろうかしら。今からしっかり考えとかなきゃ。


 というわけで、麗子はお兄様のお陰で気分上上、晴れやかな入学式を迎えましたとさ。


 これから中等部のお姉さんになるんですもの。いつまでも落ち込んでいられないしね。さあ、私の新しき学舎まなびやへ出発よ。


 まあ、同じ敷地内にあるんだけどね。通学路変わんないし。


 それでも制服が変わるとやっぱり身が引き締まる思いがするものよね。なんか大人になったって感じで。まあ、ホントに中身アラサー女子なんだけど。


 中等部の制服も初等部と同じく白を基調としてる。だけど、初等部の制服がボックスプリーツのワンピースにブレザーの上品なお嬢様って感じなのに対し、中等部のはアコーディオンプリーツのボトムススカートにブラウスの紐リボン(紐タイ)が超可愛いの。


 だけど、白のジャケットで優雅さも失っていない。まさに洗練されたデザイン。うーん、エレガント。


 だから、大鳳学園の制服に袖を通すのは女子の憧れ。うんうん、その気持ちわかるよー。可愛い制服ってテンション上がっちゃうもんねぇ。


 まっ、この制服が一番似合うのはこの私、清涼院麗子様だけどね。螺旋力MAXの私にこそ相応しいわ。これって私の為にあつらえたような制服よね。


 まさに私は大鳳学園の女王。

 皆の者、頭が高い控えおろ。


 って、みんなでホントに平伏しないでよ。楓ちゃん、椿ちゃん、私達ってお友達でしょ。コラッ、粗忽君と迂闊君もマネして土下座はやめなさい。えっ、なんとなく癖で?


 ちょっと、それじゃまるで私がいつも君達を土下座させているみたいじゃない。風評被害はやめてよね。


「ふふふ、教室が知った顔ばかりで皆さんはしゃいでおられるのですわ」

「また麗子様と同じクラスになれて私達ラッキーです」

「ええ、椿さんも楓さんもまた一年よろしくお願いしますわ」


 とまあ、中等部に上がっても変わり映えのないメンツなわけでして。同じ釜の飯を食ったみんな仲良し小好し。人見知りな私のボルテージはマックスよ。まあ、見知らぬ生徒も数人いるけど。


 アンノウンの彼らは初等部から進学してきた私達のような内部生ではない。


 大鳳学園小中高一貫だけど、実は中等部や高等部から入学する子も少なくないのだ。


 大鳳学園は設備ががめちゃめちゃ良いし、教師陣も優秀。それに企業のみならず色んな伝手コネがあるから、一流企業などへの就職率も抜群ときてる。


 さらに超有名ブランドの制服も可愛いから男女共に人気があるのだ。その為、入試は倍率が死ぬほど高い。つまり、彼らは超難関な入試を突破して中等部から入ってきた外部生ってわけ。なので超優秀。


 何で名士名家を集めた伝統と格式ある大鳳学園に家柄よりも能力重視で外部生を取り入れるのか。その理由は一つ。青田買いだ。


 優秀な人材は何人いてもいい。我が清涼院グループみたいな巨大企業ならばなおさらだ。だから早いうちに囲い込むのが狙いってわけ。


 初等部から上がってきた内進生の中には滝川、早見のような御曹司もいるしね。きちんと未来を見据えている者は、目を皿にして優秀な同級生を探し始めてるらしい。


 きっとお兄様もそんな同級生にツバをつけて回ってたんじゃないかしら。私と違ってコミュ力激高だから、きっと優秀な人材を集めて黄金期を築いてくれるに違いない。清涼院グループの未来は明るいわ。そしたら一生お兄様に左うちわで養ってもらえるから、私の未来も安泰ね。


 やっぱり私の運命のお相手はお兄様しかいないわ!


 ん? 待てよ。


 もしかしてもしかすると、お兄様の周りには将来を約束されたイケメンスパダリが集まっているんじゃない?


 これは将来の旦那様候補を囲うチャンス。ビバ青田買い。さっそく帰宅したらお兄様にそれとなく聞いてみよっと。うふふ、楽しみー。


 でもその前に、我がクラスにいるスパダリ候補を物色……もとい数人の外部生に挨拶しなきゃ。


 なんせこれはチャンスだもの。


 初等部での私の恋愛事情は最低最悪だった。清涼院ブランドに恐れをなして、男の子達がみんな私を避けていたからだ。


 そして、みんなが避けるもんだから、私がとんでもなく恐ろしきお嬢様とデマが広がっていたのよ。なんてこったい!


 だけど、中等部から入ってきた外部生はまだ私のことを知らない。彼らとの関係はまっさら。変なフィルターもないはず。まずは綺麗で親しみやすいお嬢様って第一印象を与えないと。


 ファーストコンタクト、これ大事。


 ようこそ大鳳学園へ外部生のみなさん。初めまして、私は美人で優しいお嬢様、清涼院麗子と申し……


「おらおら、頭が高い。こちらのお方をどなたと心得る」


 ちょっ、ちょっと楓ちゃん!?


「かの清涼院グループ総帥のご令嬢、清涼院麗子様ですわ」


 椿ちゃんまで!?


 ほらほら、外部生の子達が怯えちゃったじゃない。違うからねぇ。私、恐くないですよぉ。みんな仲良くしましょうね。


「気安く麗子様に声をかけるんじゃないわよ」

「下賎な外部生あなた達とは住む世界の違うお方なんですのよ」


 や〜め〜て〜!


「うむ、粗相して怒らせると伝家の宝刀を抜いて成敗されるぞ」

「くれぐれも失礼のないように」


 迂闊! 粗忽! それはテメェらだけだ!


「言われてみれば、教室に入ってきた時、みんなに土下座させていたよな」

「清涼院さ……まって恐ろしい人なんだ」

「思い出した。初等部を牛耳っていた縦巻きロールがいるって噂を聞いたことあったっけ」

「やべぇ人のいるクラスに入っちまった」


 あゝ、外部生の子達が私からスススって距離を取っていくぅ(泣)


 入学早々、どうして前途多難になるのよ!

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