『さあ、間も無く開催されます! マテリアルブーツ<ストーリー・ハイウェイカップ>!! 実況は私(わたくし)、文字通りカラフルな人気者、カラーと! 解説は、ツッコミとしての才能が開花してきている風雅選手でお送り致します!』
『そんな才能いらないんだけど! 誰のせいでツッコミしまくってると思ってるんだ!』
『え? あなた自身の性(さが)』
『そんな性本当にいらねえ!?』
開会式の為に、会場に入ってきたハクト達の耳に入ってきたのは、聞き慣れた二人の声だった。
以前のソロ・トーナメント大会の時にも来ていた実況と解説。
その二人が、今回も来ているのだ。
「あれ? カグヤ、今回の大会の主催者ってカラフル・カンパニーじゃ無いよね?」
「そ、そうよ! ちゃんと主催者違う事確認してからエントリーしたんだから! だから私達の出禁も関係無いはず……」
ハクトとしてはあの二人にまた会えたのは嬉しいが、出禁を喰らってる身としては大会参加の危機となる。
カグヤは多少急ながら今日の大会要項を確認して、確実に主催者が違うことを改めて確認していた。
そんなハクト達を見て、やはり白いラビットパーカーが目立っていたのか、実況のカラーが気づいたようにマイク越しに声を上げる。
『おや、そこにいるのはこの間のrank1ソロ・トーナメント大会で優勝したハクト選手! ハクト選手では無いですか! 最近話題沸騰中の人物が今大会のチーム戦に参戦だー!!』
「えっ!? ちょっ!」
実況のカラーの言葉に、会場中がざわめき始める。
あのハクト選手か、今回来たのか、スッゲー、大した事無い、こっちが勝つ。
言葉は様々。有名人に会えて関心するか、対戦相手として意識するか、いろんな反応があった。
『お前、仮にも実況者がこの状況で選手個人に声掛けてやるなよ。変な注目持たせちゃってるじゃねーか』
『何ですかー。ただ単に大会を盛り上げようとしただけですー。あの白いウサギパーカー目立ちますし、目に入っちゃったんですから。……というか、あなたも確か試合中に彼に注意してませんでしたっけ? 解説としてはどうなのですか?』
『……そういえば彼ら、確か“初心者大会出禁”にしてなかったっけ? この大会もチーム戦とはいえ、一応初心者大会だけどそれはいいのか?』
『露骨に話を逸らしましたね。……まあ別に、今回はいいんじゃ無いんでしょうか? 出禁にしたのは、あくまで私の会社主催の大会ですし。この大会は別の主催者ですしー』
『……え? じゃあ何で俺ら別の主催者の大会で、実況と解説でここにいるんだ? 俺ただ次の解説ここでやれって仕事来たんだけど』
『いやですねー、そっちこそ何言ってるんですか風雅さん。“実況と解説が呼ばれる事なんて当たり前じゃ無いですか”』
『お前確か何たらカンパニーの社長って言ってなかったっけ? 実況出来るの自分が主催者の時だけじゃねーの?』
『社長と実況の仕事は別でしょうが。何言ってるのよアナタは』
『その二つ同時にやってる傾奇者だろーがアンタは』
まるで恒例の如くカラーと風雅の口喧嘩が始まっていた。
要するに、カラーは自分の会社の主催者じゃなくても、実況の仕事として呼ばれたらちゃんとそこでも実況はしてくれるそうだ。
流石に自分の主催者の大会では無いなら、口調とかはっちゃけ具合は少しは抑えるのかもしれないが……やっぱりあの様子だと前回と同じぐらいかもしれない。そうハクトは思った。
『はいはい。そんなことより、今回の大会のルールを説明いたしますよー。ほら、風雅さん説明』
『コイツっ……まあいいや。とりあえず、<ストーリー・ハイウェイカップ>の基本ルールだ。チーム戦という事は全員分かってるだろうから、詳細ルールだ』
<ストーリー・ハイウェイカップ>
概要
・トーナメント形式、参加チーム16チームの最大4試合。
・4人1チーム戦、控え選手無し(体調不良などで欠席の場合は3人以下可能)
・殲滅戦・15分
・使用スロット数、1人4個まで
・二回戦以降、バトルフィールド変更
・休憩時間中のギアの付け替え有り
『と、基本ルールはこんなところだな。実質的に、最高rank2までのメンバーでの大会になる。勝利条件は、相手チームを全員倒した側、もしくはタイムアップ時、チームの生存人数が多い方が勝ちだ。同数なら、合計HP差になるな』
『rank1 ソロトーナメント大会の時の参加者が何人かいるのでついでに言いますと、あの時と違ってギアの付け替え制限無しでーす。ブーツの仕様上試合中は無理ですが、休憩時間にギアの付け替えいくらでもOKです! 後、HPも本来の1000になるので注意して下さいねー!』
「……けど、変わりに“CT完了までの速度が3倍”は今回無いんだ」
「そうね。あれは多分、初心者のソロ同士での試合の決着を早める為の仕様だから、普通の大会だとあんまり無いルールね。あの時限定だと思った方がいいかも」
そっかー、とハクトは呟く。
あのルールは、終盤で空中戦法するのにとても便利なルールだったから、普通は無いという事にとても残念に感じていた。
まあ無いものは仕方ない、としてハクトは受け入れる。
『ところでカラー実況。この“二回戦以降、バトルフィールド変更”って? 俺このルール知らねえぞ』
『ああ、それ? それは二回戦になってから説明するので、今は内緒でーす!』
『ふーん……まあいいや。じゃあルール説明も大体終わった事だし、そろそろ試合準備に移ろうか。確か、1回戦は全チーム同時試合だったな?』
『はい、その通り! 今回は8試合同時進行させていただきます! 今から電光掲示板に組み合わせ表を表示するので、その試合場所に移って下さーい!』
それでは、どうぞ! っとその掛け声とともに、電光掲示板の表示がカラフルになる。
暫くエフェクトが続いた後、トーナメントの組み合わせ表が表示された。
ハクト達の対戦相手は……
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<ストーリー・ハイウェイカップ>
1回戦 第八試合
チーム:ムーン・ラビット
VS
チーム:一人巌流島
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「第八試合! でも同時試合だから、今直ぐか」
「うーん、やっぱり初心者大会だから聞いた事ないチームね。でも一人巌流島? 一人って?」
表示されたチーム名に、カグヤ達は首を傾げる。
チームなのに、わざわざ一人を名称に入れる?
……多少疑問に思ったが、とりあえず指定のバトルフィールドに移動することにした。
第八試合なので、会場の一番端のフィールドが指定場所だった。
ハクト達のチームは4人ともブーツとグローブを装着済み。
あとはギアのセッティングのみだった。
「カグヤ、ギア構成どうする? なんか合わせておいた方がいいのある?」
「うーん。とりあえず初めてのチーム戦だし、各々好きなギア付ける感じでいいと思うの。まずは各自好きなように動いてみて!」
「作戦も無しでいいのかい? 少しは方針位は合わせたほうがいいと思うけど」
「どうせ相手チームの情報一切無いし、こっちも今更詳しく決めても混乱しちゃうわ。強いて言うなら、アナタ達3人の不良兄弟戦の時の動きを意識して動いて見てほしいって感じかしら?」
「お! オレと白兎と、後から有栖が合流してくれたあれだな? ヨッシャ、あの時の連携度合いか!」
「それを見て、私は後ろから臨機応変に対応する予定だから。3人は好きに動いて」
「了解。じゃあそのつもりでやってくる」
軽い打ち合わせを終了し、ハクト達はギアの取り付けも完了して、リチャージパネルに乗ってエネルギーを満タンにする。
対戦相手はまだ見えていないが、時間まで後5分ほどあるので待っていればくるだろう。
「さあ……私達のチームのデビュー戦よ!」
そのカグヤの掛け声とともに、おうっ! と気合を入れて──
☆★☆
〜15分後〜
☆★☆
ハクト達の試合は決着────して、ない。
そもそも、“試合が始まってすらいない”。
「……こないね。対戦相手」
「……ええ」
本来の試合予定時間を、とっくに過ぎているにも関わらず、対戦相手がまだ来ていなかった。
横の方を見ると、他のチームは既に試合をしている様子が見えた。
と言うか、場所によっては既に試合が終わっているチームもいた。
これ、どうすんの? っと、ハクト達が思ったまま、更に5分が過ぎ……
──ハクト達以外の試合が、等々終わってしまっていた。
『……えー。と言うわけで、全試合終了ー!! 一回戦終わって、次は二回戦! その前に、例のフィールド変更について説明をー……』
『いやちょっと待て!? 第八試合は!? あっちの端っこのムーン・ラビットチームの試合どうなってんだ!? 開始すらされてねーぞ!!』
『不戦勝』
『一言!? 軽く言ったなおい!?』
『だって、対戦相手のチーム事前エントリーはともかく、当日受付来てないんですよ。と言うわけで、参加要項的に実質リタイア扱いです』
『はあ!? じゃあ何でトーナメント表に組み込んだ!? 除外するだろ普通!』
『だって、入れないと奇数になっちゃうじゃ無いですかー。どうせ最低1チームシード扱いになっちゃうし、トーナメント表直すのめんどくさいし、結果的に変わらないからいいじゃ無いですかー』
『じゃあせめてムーン・ラビットチームに早めに通達しろや! 不戦勝って! 見ろ、準備万端で彼ら待ってたじゃねーか!』
『忘れてました。テヘペロ♪』
『痴呆か? ならしゃーな……』
直後、マイク越しにドスッと生温い音が響き渡る。
ゴフウッ……と風雅が声をもらしながら椅子から転げ落ちる音がなった後、パンパンっとカラーが手の汚れを落とすように叩く。
『さて。と言うわけで、ムーン・ラビットチームは一回戦突破でーす。おめでとうございまーす』
『せ、せめて謝っておけ……よ……』
『はーい。忘れててすみませんでしたー。次回以降善処します』
「……なんていうか、色々酷いね」
「ええ、そうね……」
そんなこんなで、デビュー戦になるはずだった試合は、不戦勝で終わることになった。
☆★☆
「……ふう。ちょーっと喉乾いちゃった」
実況が落ち着いたカラーは、手元に置いてあったドリンクのストローを口に含む。
声を出す仕事である以上、喉の調子は大切だ。
ゴクゴクと、それなりの量を飲んでいく。
「……で、どういうつもりだ?」
「何が?」
そんな彼女に対し、復帰した風雅がそう問いかけた。
マイクの音は切っており、この会話は会場中には響かない。周りの雑音も多く、ここだけの会話だ。
「とぼけるな。さっきのムーン・ラビットの対戦相手の組み合わせ。“ワザとだろ”」
「えー、何のことー?」
「今大会のトーナメントの組み合わせ、“お前が勝手に決めたんだろ”。ランダムじゃなく、一人の独断で対戦相手を決めて、ワザとムーンラビットが不戦勝になるようにしただろ」
「ふーん、気づいてたんだ」
「なーにが、トーナメント表直すのがめんど臭い、だ。直前でお前が勝手に決めてただけだろうに。本来クジで決めるところを、あたかも事前に決まってました、みたいにして。……何で一つのチームにそこまで肩入れする? 場合によっては大問題だぞ」
風雅はカラーを睨みつけるようにそう指摘する。
あまりにも好き勝手やり過ぎている。
今回の大会の主催者で無いのに、ここまで自由に勝手に決めてるのは目に余る。いや、主催者だったらいいというわけでは無いが。
ムーン・ラビットチームは風雅も気になっているチームではある。
が、だからと言って依怙贔屓するわけでも無いし、不正してまで助けるつもりなど毛頭無い。
カラーのやってる事は場合によっては、責任問題に発展してもおかしく無いから見逃すつもりは無い、という意思だったが……
「あら、肩入れ? アナタにはそう見えたんだ、節穴ねー」
「違うと?」
「トーゼン。逆に考えなさい? ……“あのチーム、そう簡単に負けると思う”? この大会?」
「……思わないな。Rank1 ソロトーナメント大会の時の試合を考えるとチーム戦とはいえ、今回の大会の参加者の中では上から数えた方が早い実力者だろう。全員がRank2になってるチームすら、今回は少ない……監視カメラの映像も確認したけど、あの3人だけでも十分連携出来てるしな」
「あら? アナタもあの映像見てたんだ?」
……実は風雅達は、ハクト達と不良兄弟の騒動を知っている。
大会終了後、色々と施設のスタッフと大会中に起こった問題事を共有するとして、その映像を見せてもらっていたのだ。
主催者のカラーはともかく、解説の風雅にそこまで権限はあるとは普通思えないが、風雅は協会の関係者でもある為、その繋がりで情報を受けていたのだ。
結果、あの施設での不良兄弟の出禁に繋がったのだが、正直もう少しペナルティ付けた方が良かったんじゃ無いかと、風雅は思っている。
閑話休題。
「……とまあ、普通に試合君でも、あのムーンラビットが勝ち上がるのは目に見えてるじゃない? じゃあ、あのチームといきなり初戦で当たる初心者は可哀想じゃない?」
「つまり、強すぎるから実質シードにした以外に意味はないと?」
「ええ。あのチームがリタイア扱いになってたのは本当だし」
「……じゃあ、他のチームも配置をしっかり独断で決めていたのは?」
「──当然。試合を盛り上げる為よ。ムーン・ラビットの試合がより熱くなるようにね」
ニヤリ、とカラーは笑みを浮かべる。
その表情は悪戯好きの子供のようだ。
「簡単に勝敗が予想出来る試合なんて、つまらないじゃない? だったら、それ相応の相手になるように私が配置してあげきゃ、盛り上がらないでしょ?」
「だから勝手にトーナメントの配置を弄ったのか」
「ええ。普通に戦えばそこまででもない試合相手。……でも、二回戦以降のバトルフィールド変更。あれを使えば、条件によっては強敵に早変わりするチームもいくつかあるわ。本来楽に勝てる相手も、一気に格上に早変わり。……楽しそうじゃない?」
つまり、カラーはムーン・ラビットに有利になるようにするのでは無く、寧ろ試練として対戦相手を用意したと言っているのだ。
ある意味贔屓といえば贔屓だ。悪い意味の方で。
「私は強敵同士の戦いが見たいの。単純な弱いもの虐めの試合なんて退屈だわ」
「……ったく、自分の大会じゃないのに、好き勝手しやがって」
「あら? 思ったより怒ってないのね」
「……まあ、ムーンラビットが簡単に勝ち進むだろう事は俺も予想出来ていたからな。今回は既にやっちまったもんは仕方ねえし、このまま試合運営を続けていくよ。事前にお前を止められなかった俺にも責任がある。この盛り上がりで今バラすわけにもいかねえし、もし怒られる時は俺も一緒だ」
「へえ、共犯になってくれるんだ」
「次はもうやるなよ、逆に他のチームにも不公平になるからな」
はーい、とカラーは軽く返事をする。
……カラーのやった事は普通に問題だが、ムーン・ラビットの試合自体は風雅も個人的に興味あった。
あの面白いメンバー達が、どのように格上と化した対戦相手と試合を繰り広げていくか……それに興味ある時点で、自身も同罪か、と風雅は思った。
☆★☆
「……気を取り直して、2回戦よ2回戦! 今度こそ、私達のデビュー戦よ!!」
お、おー。っと、少し気を抜けた掛け声をするハクト達。
盛大な肩透かしを喰らってしまい、まだ調子を取り戻せていない様子。
「ハクト君達、油断しちゃダメよ! どんな予想外な事が起こるか分からないんだから!」
「まあ、まさにその予想外な事を今喰らったようなもんだし」
まさかの初回不戦勝。
ハクトのソロトーナメントの時は曲がりなりにも対戦相手自体はいたとはいえ、今回のは流石に想定していなかった。
それはそれとして、カグヤの言っていることも一理あるので何とか集中しようと気をとりなおす。
『次は2回戦! 今回も4試合同時バトルになっておりまーす! しかし、今回から例の“バトルフィールド変更”!! それを反映させて行きたいと思います! さあ、どうぞ!!』
……そのカラーの言葉と共に、ゴゴゴゴゴ……ッと何か重たいものが動くような音が鳴り響く。
「な、何!」
「ハクト君、見て見て! あそこ!」
カグヤに言われてフィールドの方に視線を向けると……
地面から、“”巨大なブロック”がせり出して来ていた。
一辺2.5m程の直方体のブロックが、複数フィールドのあちこちに配置されている。
配置の仕方自体は均等で、最低5mの道幅は確保する程度に綺麗に行列を為している。
『さあ! これがバトルフィールドの変更! “ブロックエリア”です! 複数のブロックが規則正しく並ぶフィールドで、いかにこの障害物を利用して戦う事が出来るか、平面とは一味変わったステージです!』
「これはっ……!?」
変形したフィールドを見て、ハクトは凄く驚いた。
彼が今まで戦った試合では、全て障害物の無い平面のステージだったと言えよう。
つまり、ここからまた彼の未経験のバトルが繰り広げられるという事だ。
『あ、ちなみに今回のフィールドのブロックは特殊な加工を施しているので、基本的には破壊不可能だと思ってください。だからこそ、間違ってブロックに攻撃を当てちゃっても大丈夫です! 思う存分相手を狙って攻撃してくださーい!!』
「……はい、質問です! ブロックの上って乗っちゃって大丈夫なんでしょうか?」
『いい質問ですね! ブロックの上もバトルフィールドの範囲内なので、登っちゃって大丈夫です! まあ登れればの話ですけど!』
参加者からのその質問に、カラーはイエスと答えた。
高さ2.5mもあるならば、普通の大人でも手を伸ばした上でジャンプして掴めるかくらいだろうか?
そこから出っ張りもない、ツルツルしてそうな側面を上り切るのは少し大変そうだ。
人によっては、筋力の関係で登れない人も出てくるだろう。
『さあ、では簡単なフィールド説明はこれくらいにして、早速2回戦に参りましょう! 組み合わせはこちら!』
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<ストーリー・ハイウェイカップ>
2回戦 第四試合
チーム:ムーン・ラビット
VS
チーム:マジック連合
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「次の対戦相手だ! 今度は不戦勝じゃないよね?」
「あ、多分あそこのフード4人組! 多分あれが相手ね、今度はちゃんといる!」
組み合わせが発表された直後、周りを見渡すといかにも怪しいっと言った雰囲気のフードを深く被った4人組がそこにいた。
「……フンッ」
彼らは特にハクト達に声をかけてくるでも無く、ただ静かにそこにいた。
しかし、微妙にこちらを見下したような視線を感じるのは気のせいだろうか?
「カグヤ、対戦相手の情報って……」
「チーム名初めて聞くし、1回戦は同時進行だから見れてないし、ネットに回ってる動画を探そうにももう時間無いわよ」
「だよね」
つまり、一切の情報の無い初見の相手とのバトルという事だ。
少し不安は残るが、どの道ここでつまづく様では月の大会なんて参加出来ない。
改めて、緩んでいた気持ちを引き締める。
ブーツとギアの準備も万全だ。
対戦相手も、離れた位置の開始位置に配置についていた。
「さあ、準備はいい? ムーン・ラビットの力、見せてあげるわよ!」
「うん!」
「了解!」
「いくぜ!」
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バトル・スタート!
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その開始合図と共に、ムーン・ラビットの本当のデビュー戦が幕を開けた……